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自身の投票経験がゼロだった若者が、投票率を上げたい!と開発した「議会マイニング」とは?

2018/3/8

選挙ドットコム編集部

選挙ドットコム編集部

早稲田大学マニフェスト研究所の学生有志が、地方議会の議事録を利用して、議員の活動を「見える化」する試みである「議会マイニング」を企画・制作して公開し、話題を集めています。

町田市議会の会議録から自動で特徴的なワードを抽出し、議会での議員の発言をグラフィカルに示した「議会マイニングin町田」が2月6日にネット上に公開されると、さっそくSNSなどで取り上げられ「これ、おもしろい」と注目を集めました。

選挙ドットコムでは、開発に携わった早稲田大学マニフェスト研究所の早川聖奈さん(首都大学東京大学院)、山内健輔さん(早稲田大学公共経営大学院)のおふたりにインタビューを行いました。

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(早川さんと山内さん)

議会マイニングとは?

国会はもちろん、地方議会においても、ほとんどの自治体の議会の議事録は有権者に公開されています。情報公開の重要性が叫ばれる昨今、インターネットで手軽に閲覧できるサービスを行う自治体も増えてきました。

しかし、政治に関心があっても、実際に議事録を読んだ経験のある人は、あまり多くないのが実情です。ネックはやはり、その膨大な文字量。議事録を読めば、議会でどのようなことが話し合われ、誰がどのような発言を行ったのかなどがわかる、いわば「情報の宝庫」。とは言え、そのすべてに目を通すにはとてつもなく時間がかかります。

そんな議事録を利用して、これまでにないユニークな切り口で、議員の活動を視覚的に表現したのが「議会マイニング」です。

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(議事録を可視化できる)

サイトでは、町田市議33人の4年間の議会活動を、何を言ったかを表示する「ワードクラウド」と、どう言ったかを表す「関連ワード」の2種類でビジュアル化しています。年度ごとや議員ごとに比較することもできます。

母校の廃校の経験から政治に関心を抱いた山内さん、政治への関心ゼロだった早川さんがタッグを組んだ

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まずは、簡単におふたりそれぞれの自己紹介をお願いします。

-山内健輔さん(以下、山内さん)
僕は都内出身なのですが、自分が通っていた小学校が統廃合で廃校になるという経験に衝撃を受けて、地域の政治に関心を持つようになりました。その後、僕自身は私立の中学にあがったのですが、地元の中学もやはり廃校になりまして、そのとき地元の友人たちが立ち上がって、廃校に反対して署名活動を行ったというのも大きかったです。

僕はこの経験がきっかけとなって、大学でも地方自治について学んだり、マニフェスト研究所に入ったりしたわけですが、政治に関心のない同世代の若者にも、政治について考えてもらうきっかけ作りができないかとずっと考えていました。

-早川聖奈さん(以下、早川さん)
私は、大学院(首都大学東京大学院/渡邊英徳研究室)で、情報デザインやネットワークデザイン、webアートについて研究しています。「議会マイニングin町田」では、webでのビジュアル・システム面を担当しました。
でも実は私自身、大学院生になるまで「セルフ投票率(自身の投票経験)0%」と、政治にはほとんど関心のない層でした。

統一選挙のあと、早稲田大学マニフェスト研究所との共同研究で、地域の政策活動をマッピングするというプロジェクトの「政策マッピング」(例:「海老名市政策マッピング」)というwebコンテンツを制作しました。政策マッピングは、これまでに、5つの選挙で作成しています。

(海老名市政策マッピング)

(海老名市政策マッピング)

それがきっかけで、昨年10月ごろに山内さんと出会い「新しい試みをはじめよう」ということで、今回の「議会マイニング」の企画や制作にも関わることになりました。

政治に関心のない人も、思わず『触ってみたい』と感じるような「見たことのないもの」を作りたかった

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なぜ今回の「議会マイニング in 町田」を作られたのでしょうか?

-山内さん
最初は早川さんと「なにか新しいことをやりたいね」と話していました。政治に関する、見たことのないようなwebサイトを作ろうと。

-早川さん
私のように政治に関心のなかった人も「ちょっと触ってみたいな」と思うようなものができたら、政治について考えるきっかけができるかもしれないですし、アイディアやサイトの見やすさ、操作性や画面の動きなどで、まずは面白がってもらおうとアイディアを出し合いました。

実現可能かどうかはひとまず置いて、話し合っている最中には、各議員の議事録の発言内容をAIに学習させて「仮想の議員同士がネット上で勝手に議論するのが見られるサイトがあったらおもしろいね」とか「仮想議員に質問すると、返事が返ってくるのはどうかな」などというアイディアも出ました。

-山内さん
ちょうど直近で町田市の選挙があったので、ここに狙いを定めたんです。
いろいろな面白いアイディアも出ましたが、町田市の選挙前に公開するとなると、制作期間も限られていたこともあり「この形で」と落ち着いたのが、マイニング(※注1)という手法でした。

*注1 マイニング 本来の意味は、採掘。IT分野では「データマイニング」のことで、情報システムに蓄積された巨大なデータの集合を、コンピュータを使って解析し、これまで気が付かなかった規則性や傾向、有益な知見を得る作業のこと。

-選挙ドットコム
発案から制作、発表まで3か月くらいですか?

-山内さん
そうですね。10月の末くらいにマイニングで行くと決めて、11月は議事録の収集・加工作業。町田市議会の議事録は、改革が進んでいてデータ化するのに使い勝手が非常に良かったんです。検索システムが充実していて、議員の名前や会議名で発言内容が検索できますから。

ただ、データ化する段階で、助詞や議員番号・名前などを消す作業は、アナログに手作業でやりましたから、かなり大変でした。そのなかでも、できるだけ発言した言葉どおりに表現したいというか、僕らの意思を入れたくなかったので名詞は極力消さない方針で作業しました。

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議事録を使おうと思われたのはなぜですか?

-山内さん
HPやSNSなどのネット上の発言は、議員の方によってその量にすごく差がありますし、それぞれの活動報告会や街頭演説、チラシなどの内容は、すべてを正確に拾うのが難しい。でも、議事録は公になっていて誰でも見ることができ、確実に議員本人が議会で発言した内容そのものの記録です。これは議会で何を話し合われているのか、また議員の活動を知ることができる「宝の山」ですよね。これを利用しない手はないのではないかと考えました。

もちろん、発言量はどうしても野党のほうが多くなりますし、議員によって発言量の多い・少ないの差はありましたが、事実は事実です。

発言時間や回数をチェックするよりも発言の内容に注目したいということで、発言内容に数多く出てきた単語をピックアップするのが良いのでは、と話し合い、現職議員が活動した4年間の議事録をデータとしてマイニングすることにしました。
その後、12月の終わりごろからシステム作りを始め、町田市議選にあわせて公開しました。

まずは「きっかけ」づくり。最終的には投票率アップにつながれば

-選挙ドットコム
「議会マイニング in 町田」の公開には、どのような狙いや目標があったのでしょうか?

-山内さん
はっきりとした目標設定はしていないんですよね。
でも、口でいくら「政治に関心を持とう」と言っても、なかなか伝わりません。それが「おもしろいサイトがあるらしい」となって、まずは議会マイニングを見て・触ってもらうことで、それが政治に関心を抱くきっかけになってくれたらと思いました。
もちろん最終的には、サイトを見た人の投票行動につながって、投票率がアップすると嬉しいですね。

-早川さん
私自身「政治は難しい・面倒くさい」みたいな、ちょっと敬遠してしまうイメージがあったんです。でも操作すると、言葉が入った丸や矢印が動いたりするおもしろさで、とっつきにくいイメージを少しでもなくすことができたら成功かな、と思いました。

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反響は想定以上。「自分の自治体でもやってほしい」という声も

-選挙ドットコム
「議会マイニング」を公開されてみた手応えはいかがですか?

-山内さん
政治関連で多くのフォロワーを持っている方がTwitterなどで紹介してくださったこともあり、思った以上の反響がありました。新聞などメディアの取材もたくさん受けました。

-早川さん
Twitterで「(町田市だけではなく)自分の自治体でもやってほしい」というコメントもいただきましたね。あと、政治とは関係のないwebデザイン系の方もかなり見てくださったようで、実際に操作したりしてコンテンツのデザインをおもしろがってもらえたのは嬉しかったです。

-山内さん
デザインが気になって見に来た人も、これがきっかけで政治にも少し関心をもってもらえたら、ぼくらの目論見的には成功です(笑)。

文字文化である議会の「わかりにくさ」を、文字文化を味方につけて可視化

-選挙ドットコム
「議会マイニング」が、実際に投票率を上げる効果があると実証できれば、導入を検討する自治体がたくさんでてきそうですね。

-早川さん
コンテンツのシステム自体は、もう少しブラッシュアップして使い勝手をよくすることができれば、オープンソース化することもできると考えています。

-山内さん
問題になるのは議事録で、これを集める作業がかなり大変なんです。すべての自治体の議事録データが同じフォーマットになってくれるとやりやすいんですが、今はそれぞれバラバラですし、議員ごとの発言を検索するシステム自体ない場合も多いんです。

-選挙ドットコム
単に議事録をネット上にアップして「情報公開しました」ではなく、データのフォーマットの統一といった全国的な情報公開改革・議会改革が必要、ということですね。

-山内さん
そうですね。あとは僕らが手作業で行った単語の精査を自動化できたら、誰でも地元の議会マイニングが作れると思います。

-選挙ドットコム
今後、さらにこんなことをやってみたいなど、展望があれば教えてください。

-早川さん
まだ検討中ではありますが、来年の統一地方選に向けて、議会マイニングが全国展開できるといいですね。

-山内さん
「議会マイニング」は、議事録を使って現職議員の発言内容・議会での4年間の活動を追うものですが、公平性を考えると、現職ではない立候補者の発言内容についてもなにか紹介できるものがあるといいのではないかと思います。

ただ、演説やSNSなどの発言をデータとして使用すると、現職議員のマイニングとは違うものになってしまうので、議会マイニングとは別の形になっていくと思います。今回の町田市の選挙では「マニフェストスイッチ」(市長選 / 市議選 )で紹介することで、ある程度公平性は保たれたのではと考えていますが、現職以外の立候補者についても新たなしかけができないか、考えているところです。

※本記事で紹介した議会マイニングを使い、テキストデータを可視化するイベントが予定されています。
詳細は以下より、ご確認ください。
3/17【データ持ち込み可】議会マイニングを囲みながらピザを食べよう!
https://www.facebook.com/events/301830553675940/

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