こちらも比較的有意な差が出ているといえるかもしれません。高校あるいはCollege(2年制大学)中退までの有権者と、College卒業・大学(院)卒までの有権者ではぱっくりと支持が分かれました。
上の図は、白人のなかで学位を持っていない層(上)と持っている層(下)の2004年〜2016年までの支持の変動を示したものです。上の矢印が2016年の選挙で格段に共和党支持(右)に伸びているのに対し、下の矢印は蛇のように動いて最終的には中間よりになっています。
こちらは収入別の割合です。年収5万ドル未満の低所得者層がクリントン氏を支持しているのに対し、年収5万ドル以上の所得車層はトランプ氏を支持しています。(といっても、かなりの僅差であり、有意差ではない可能性がありますが、他のメディアを見ても中所得者層以上はトランプ氏支持が多かったと見受けられます。)
よく言われる「トランプの支持層は、白人ブルーカラー層」というのは、文脈によって誤解を招きます。トランプ氏を熱狂的に支持するコアファンに、白人のブルーカラー、低所得者層が多いのは事実です。しかし、低所得者層向けの社会保障政策を積極的に進めているのは民主党であり、(人種をわけない)低所得者層の多数はクリントン氏を支持しました(黒人やラティーノには低所得者が多いのも事実です)。
逆に、クリントン氏が主張する「富裕層への課税」は、中所得者・高所得者層の票を逃しました。
民主党支持、共和党支持層がそれぞれの候補者に入れることは当然として、注目すべきは、無党派層をトランプ氏が多く惹きつけた点です。これは以下の「党派×性別」ごとの支持を見ても明らかです。
無党派層に限れば、女性はクリントン氏に投票しましたが、それを上回る割合で男性がトランプ氏に投票しています。
宗教別にみると、プロテスタント、カトリック、モルモン教の人々はトランプ氏を支持し、ユダヤ教その他の宗教を信じる人はクリントン氏を支持しました。
キリスト教右派とされる新生キリスト教あるいは福音派の人々は、圧倒的多数がトランプ氏に投票しました。
トランプ大統領による保守系判事の指名によって、人工妊娠中絶容認の判例が覆る可能性があり、特にキリスト教徒の方々にとっては重要な問題になっていました。
これは非常に興味深いデータです。9月以降に投票先を決めた多くの有権者がトランプ氏を支持したとのこと。つまり、大統領選ディベートやトランプ氏の女性蔑視発言問題、ヒラリー氏へのFBI再調査などを踏まえ、有権者は直近2ヶ月ではトランプ氏支持へと傾いたということです。
もう一つ、興味深いデータが出ました。移民問題あるいはテロへの対応こそが最重要課題だと考える有権者の多くがトランプ氏を支持し、外交ないし経済政策を最も重要だと考える有権者の多くがクリントン氏を支持しました。
つまり、経済政策はむしろクリントン氏がリードしていましたが、それ以上に移民問題やテロとの戦いに関心を抱く有権者が多かったのではないかと予想されます。
「候補者に必要な資質は?」
この質問に対して、「自分のことを考えてくれる」、「正しい経験」、「よき判断者」の3つでクリントン氏はトランプ氏よりも多くの支持を獲得していました。しかし、「変化を起こすことができる」で圧倒的にトランプ氏が支持を得、彼が大統領に選出されました。
最後に、やはりオバマ大統領への評価が大統領選の結果にも反映されたというデータです。アメリカの大統領制は、前任者の4年間についてその是非を判断する選挙でもあります。オバマ大統領の仕事を評価しないという方々の圧倒的多数がトランプ氏に投票しました。
以上が、検証記事第一弾になります。
引き続き、今度はもう少し定性的な所感も含めて、検証記事第二弾を書いてみます。
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※本記事は「徐東輝(とんふぃ) note」の転載となります。オリジナル記事をご覧になりたい方はこちらからご確認ください。
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