鳩山邦夫元法相の死去に伴う衆院福岡6区の補欠選挙を巡り、自民党が候補者の一本化を断念しました。党内重鎮の勢力争いが影響し、ともに立候補を表明している鳩山氏の長男二郎氏と、党福岡県連会長の長男蔵内謙氏との間で調整が難航。いずれの候補にも公認を出さないこととしました。分裂選挙により蓮舫民進党が漁夫の利を得るのでしょうか。

福岡6区補選は、小池百合子氏の辞職に伴う東京10区補選とともに、10月11日告示、23日投開票の日程で行われます。
自民党内では大川市長だった鳩山氏と蔵内氏が立候補に意欲を示し、鳩山氏は福岡選出の武田良太衆院議員や、邦夫氏が率いた党内グループ「きさらぎ会」のメンバーらが支援。蔵内氏は福岡選出の麻生太郎財務相や古賀誠元幹事長らが推し、互いに一歩も譲らず対立が続いてきました。
一見、副首相である麻生氏の意見が通りそうに思えますが、鳩山氏にはきさらぎ会顧問で「影の首相」とも称される菅義偉官房長官や、武田氏が所属する派閥の会長で、自民党ナンバーツーの二階俊博幹事長がついているから複雑。結局調整がつかず、公認は見送って、当選した方を追加公認することとなりました。

対立構図の背景には地元政界での勢力争いがあります。福岡の有力議員といえば麻生氏と古賀氏が有名ですが、2005年の郵政選挙で知名度が高く、資金力のある邦夫氏が東京から「引っ越し」。福岡6区で当選し、勢力図が変わりはじめました。
2008年には麻生内閣で邦夫氏が総務相に就任しましたが、日本郵政の人事を巡り2人が激しく対立。邦夫氏は辞任し、自民党も飛び出しました。この時から邦夫氏と麻生氏の関係が悪化、邦夫氏と国替えを取り持った古賀氏との仲も険悪になったとされています。
邦夫氏は2012年の衆院選後、自民党に復党しましたが、対立は続きました。今年6月の参院選では、福岡選挙区の定員が増えたこともあり、邦夫氏らが中心となって自民党2人目の候補者を擁立しようと画策。2人目が出れば現職である麻生派議員にとって不利に働くとあって、邦夫氏と麻生氏は激しく対立しました。
そうした背景から、今回の補選ではこれまた仲の悪い麻生氏と古賀氏がタッグを組み「鳩山家潰し」を計画。そこに二階氏や菅氏が介入し、余計にややこしい展開となっているのです。
麻生氏には弱みもありました。自民党がひそかに世論調査を行ったところ、鳩山氏が蔵内氏を引き離したのです。9月3~4日の調査では鳩山氏が48.1%で、蔵内氏が17.5%。知名度に勝る鳩山氏が蔵内氏を大きく引き離しました。
自民分裂は野党にとってチャンスですが、初陣となる民進党の蓮舫代表にとっては苦しい戦いです。民進党は元在インド日本総領事館職員の新井富美子氏を公認しましたが、自民の2候補の争いに埋没。先に紹介した世論調査では14.6%にとどまっています。
すでに候補者の擁立を発表している共産党は「野党共闘」に配慮して候補の取り下げを検討していますが、仮に共産候補への票がすべて民進党候補に集まったとしても蔵内氏と競る程度。トップを独走する鳩山氏には到底及びません。
鳩山氏が父親譲りの知名度と資金力を生かして逃げ切るか。政権ナンバーツーの麻生氏が意地を見せるか。蓮舫氏が初陣を飾るか。全国から注目が集まりそうです。
この記事をシェアする
選挙ドットコムの最新記事をお届けします