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つまらなかった?そんなことはない参院選2019 そしてこれから起きる面白そうなこと

2019/7/24

高橋 茂

高橋 茂

参院選が終わった。投票率は48.80%。3年前が54.70%だったので、大雨の影響もあったとはいえ、かなりの低投票率となった。これは、この参院選の関心の低さが報道され始めてから予想されていたことだ。(以下、人名は敬称略)

投票率が上がると自民党が有利になる?

投票率が上がるとどうなるのか。よく言われていることは、「組織票を持つ自民党に不利になる」。本当にそうだろうか。
時事通信が行った調査によると、「支持する政党はない」と答えた無党派層の比例代表での投票先は、個人名投票含む自民党票が25.5%でトップだ。さらに、18,19歳有権者の投票先は、自民党が41%でトップだった。
つまり、無党派層や若年層の投票率が上がったとしても、自民党への票が増え、結果として与党圧勝につながることが予想される。

しかし、もう少し広く考えてみると、そうとも言えない。それは、自民党の集票システムが公明党支持層を頼っていることによる。
特に首長選挙や国政選挙では、自民党と公明党のスクラムが欠かせない。数ポイント程度の接戦の選挙において、最後に公明党の支持母体である創価学会員の票が大量に乗ってきて、逆転されてしまった選挙は多々ある。

投票率が上がると、自民党の得票数は上がる。しかし、公明党票は限界があり、あるところで止まるだろう。影響力が限定されるということになる。つまり、投票率向上は必ずしも与党全体で見ると有利に働かないのではないか。
無党派層の動向次第で結果が変わることになるため、2017年の衆院選では立憲民主党、そして今回の参院選では上述したように自民党に有利となり、その時の「風」によって結果が影響されるということになる。最近良く言われているように「投票率が上がると自民党に有利になる」ということは、必ずしも当てはまらない。

自民党が無理に改憲論議を進めるのは無理

参院選の結果は、与党で過半数を超えたので、マスコミでは「勝利だ」と報じられた。それは確かだろう。そして、改憲派政党で3分の2を割ったため、今後の改憲論議に影響が出ると言われている。具体的にはどのような動きになるのだろう。

「改憲勢力」と言われているのは、自民党、公明党、日本維新の会の3党だ。そこに国民民主党を加えると、議論に前向きな国会議員は3分の2を超える。しかし、実は公明党は積極的改憲勢力ではない。連立を組んでいる以上、「しかたなく」改憲論議に乗っている側面が強い。さらに日本維新の会も自民党案をまるごと受け入れるようなことは無いだろう。国民民主党に至っては、議論の土台作りから要求してくる。
自民党内にも慎重派はいるため、今後議論を進めるのは困難になったと言える。安倍総裁の4選でもなければ、安倍政権下での憲法改正は難しくなる。ANNと朝日新聞が行った出口調査によると、安倍政権での憲法改正に対する賛否はほぼ半々になっているので、この状況で強引に推し進めることはできない。そして日本が抱える問題として、憲法改正はプライオリティが低くなるために、実質的には憲法改正論議は止まったと言っても過言ではないだろう。

自民党総裁選で岸田脱落か

広島で自民党が2議席独占できなかったことは、今後の総裁選に影響を与えることになる。
岸田派の現職、溝手顕正が落選したことに加えて、秋田、山形、滋賀の超激戦だった選挙区で岸田派の現職が相次いで敗れたことで、岸田文雄政調会長が総裁選レースから脱落するおそれが出てきた。
秋田、山形、滋賀での敗戦は、岸田文雄にとって「運が悪かった」とも言えなくはない。どこも僅差であり、わずかな動きで逆転するかもしれなかった。しかし、自民党が最重点選挙区に指定して、安倍総理、菅官房長官、小泉進次郎や現職閣僚などが複数回応援に行っても勝てなかったということで、責任論が出てもおかしくない状態となっている。

比例での候補者選びが変わる

今までの参院選全国比例区では、業界団体や労組などの組織を持つ候補に加えて、知名度のあるタレント候補などを擁立し、政党票の底上げを図るのが常套手段だった。
自民党では中田宏(元横浜市長、元衆議院議員)、木村義雄(元厚労副大臣)、井上義行(元首相秘書官)、山本左近(元F1レーサー)などが落選。立憲民主党は12議席程度が見込まれていたが、蓋を開けてみれば元「モーニング娘。」の市井紗耶香、コーラスグループ「RAG FAIR」の「おっくん」こと奥村政佳、おしどりマコ、筆談ホステスの斉藤里恵、フリーアナウンサーの白沢みきらが、期待した票を獲得できず落選となり、比例議席は8で終わった。

今までと同じ比例候補の選び方で失敗した自民と立民に対し、「れいわ新選組」の山本太郎が100万票近くを得て2人の当選に貢献したことや、「NHKから国民を守る党」の立花孝志が、選挙区で30人以上の候補者を立て比例票の掘り起こしを行ったのは、比例区での新しい戦い方だと言える。
今後は、単に著名な候補を立てるのではなく、より戦略に重点を置いた候補者擁立が求められることになる。

れいわ新選組は与党ではなく、まずは野党に再編を仕掛けていく

旋風を巻き起こしたれいわ新選組は、山本太郎が最初から次期衆院選を狙っていることは予想されていた。政党要件を満たし、重度障害者を送り込むことで国会改革を話題にしながら、次の衆院選に出る。
寄付金は4億円を超え、政党交付金も入るので、次期衆院選は複数人の当選も見込める。
しかし、れいわ新選組として衆議院の選挙区に候補を擁立する場合は、既存政党との候補者調整が必要になる。野党間での調整が行われない場合は、結果として与党候補に利があるため、れいわ新選組として野党に調整を求めていくだろう。特に立憲民主党は、れいわ新選組に対してアレルギーを持っていそうであり、自民党ほど政権を獲ろうという意欲がないので、物別れに終わるおそれもある。

国民の興味を引き付けられなかった2019参院選。自民党は、改憲議論だけでなく、総裁選にまで影響が及び、野党はれいわ新選組によって再編まで仕掛けられる可能性が出てきた。さらに、憲政史上初めてとなる重度障害者の国会議員の登場など、今後注目すべき点はいくつも出てきた。

選挙はドラマとして見ると面白い。このドラマが次の衆院選にどう繋がっていくのか。それを伝えるメディアの力量や姿勢も試されるのだ。

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高橋 茂

高橋 茂

2000年、電子楽器のエンジニアから政治とインターネットの世界へ。政治家のネット活用をサポートするVoiceJapan社を経営する傍ら、講演、執筆も行う。武蔵大学非常勤講師。選挙ドットコム顧問

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