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テレビに映らない「れいわ新選組」は、リアルを動かせるか?(畠山理仁)| #参院選2019

2019/7/19

畠山理仁

畠山理仁

7月21日(日)に迫る第25回参議院議員通常選挙(以下、今回の参院選)の投開票日。今回の参院選で山本太郎氏が率いる「れいわ新選組」がネット上の注目を集めています。れいわ新選組が巻き起こすムーブメントに、フリーランスライターの畠山理仁氏(主著:『黙殺 報じられない”無頼系独立候補”たちの戦い』集英社)が選挙の現場から迫りました。

テレビが黙殺する「れいわ新選組」

4月からの寄付総額は3か月で3億円以上。街頭演説会場には最低でも100人。多いときには千人以上が駆けつけ、演説終了後にはボランティア登録者や寄付者が列をなす──。

そんな一大ムーブメントを巻き起こしているのが、山本太郎が4月に一人で立ち上げた「れいわ新選組」だ。しかし、この盛り上がりが「選挙期間中」のテレビではほとんど報じられない。そんな“異常事態”が現在も進行中だ。

誤解のないように言っておく。テレビ局の記者たちは、れいわ新選組の取材をしていないわけではない。れいわ新選組が参院選の公認候補予定者を続々と発表した6月末〜7月3日。記者会見場や街頭演説会場には、たくさんのテレビカメラがやってきた。そこでは記者との活発な質疑応答も行なわれていた。

新情報による驚きもあった。当意即妙な返答で起きる笑いもあった。しかし、テレビカメラが撮影した映像が「選挙期間中」にテレビで流れることは、ほとんどなかった。

参院選公示前日の7月3日、山本太郎は「有為な人材を優先的に当選人とする」比例特定枠の1位に難病ALS患者・ふなごやすひこ、2位に重度障害者・木村英子を指定すると発表した。山本自身は前回4位で当選した東京選挙区(今回から定数6)からは出ず、比例で立候補するとも発表した。

現職議員が地盤を変える。しかも、山本が当選するためには、れいわ新選組は比例で3議席以上獲得しなければならない。東京選挙区で山本が出れば1議席を維持することは固いと見られていただけに、大きな賭けだ。

一方で、れいわ新選組が1議席でも獲得すれば、介助が必要な重度障害者の国会議員が誕生することになる。これは大きなニュースになると考えた筆者は、記者会見で山本に次のような質問を投げかけた。

畠山「重度障害者のお二人を特定枠に入れたことで、テレビの報道姿勢は変わると思いますか。有権者に情報が届くようになると思いますか」

山本はマイクを持つと、きっぱり言った。

山本『全く期待していません。れいわ新選組が立ち上がってから、テレビはほとんど取り上げてくれていません。それぐらいハードルの高さを感じています。特定枠を使ったことで何かがリセットされて、広げてくれるという期待は、一切持っていません』

テレビに映らない理由は政党要件

テレビがれいわ新選組を扱わない理由は簡単だ。れいわが公職選挙法上の「政党要件」を満たしていないからである。

ここで簡単に「政党要件」についておさらいをしよう。
公職選挙法では、「(1)国会議員5人以上」「(2)直近の衆院選または参院選で、選挙区か比例代表の得票率が2%以上」のいずれかの条件を満たさなければ、政党として扱われない。これがいわゆる「政党要件」だ。選挙には、既存の政党だけでなく、新しい団体も参入する。今回の参院選比例区における名簿届出政党は全部で13。そのうち、政党要件を満たしているのは、自民党、公明党、立憲民主党、国民民主党、日本維新の会、日本共産党、社民党の7つだ。

それに対して、れいわ新選組、幸福実現党、NHKから国民を守る党、安楽死制度を考える会、労働の解放をめざす労働者党、オリーブの木の6つは、政党ではなく「政治団体」として扱われる。両者の間には、大きな壁がある。公職選挙法は、虚偽の事項や事実の歪曲を除き、報道および評論の自由を全面的に認めている。つまり、選挙期間中であっても自由に表現することが可能だ。しかし、日本のテレビは選挙期間中の選挙報道に関して、とても慎重な姿勢を取ってきた。

とくに、許認可事業であるテレビは「公平性」を重視する。れいわ新選組を扱えば、他の政治団体も公平に扱う必要が生じる。すべての団体を扱えば放送時間の「枠」に収まらなくなるため、「政党要件」が「放送するかしないか」の事実上の基準になっている。党首クラスが呼ばれるテレビの討論番組に、れいわ新選組の山本が呼ばれないのも政党要件がフィルターとして作用しているからだ。

もちろん、山本太郎自身も「テレビに映らない」ことは重々承知している。山本は筆者の度重なる質問に、何度もこう答えた。

山本『おそらく、今日来ているカメラは開票特番の時に流す映像を撮りに来ているんでしょう。テレビに映ることは、全く期待していません。地道にどぶ板で広めるしかないですね』

テレビは現場に取材に来ても報じない。しかし、街頭演説会場は盛り上がる。演説終了後に行なわれる候補者たちと支援者との「記念撮影会」も毎回長蛇の列だ。

山本『どんどん撮って、広めて下さい。みなさんの力、貸してください』

山本をはじめ、れいわ新選組のスタッフたちは、必死に呼びかけを続けている。

ネット選挙は現実を動かせるか

テレビには映らないが、れいわ新選組のネット上での人気、演説会場での盛り上がりは尋常ではない。7月7日、新橋駅で行なわれたれいわ新選組の演説会終了後、寄付をしたばかりの男性に話を聞くと、こんな答えが返ってきた。

「ネットで見た動画に共感して演説会に来てみました。実際に現場で聞いてみて、『僕らが支えなきゃ、政治は僕らのものなんだ』って初めて思えました。政治関係の寄付をするのは初めてです。ボランティアの登録もしました。僕らが広げなきゃ」

公示直後の演説会場では、常連メンバーによる声掛けが目立った。しかし、日を重ねるごとに人数は増え、新しいメンバーが続々と熱狂の渦に加わっている。こうした現場にいると、「大躍進をするのではないか」と錯覚してもおかしくない。実際に、支援者たちの間ではそんな空気も見え隠れする。

しかし、山本は危機感を隠さない。

山本『本当に多くの方に足を運んでいただいた実感はあります。ただ、この熱が直接票につながるかというと、過信はしていません。今後、このエネルギーを、お一人お一人がどれくらい広げてくださるかというところでしか、答えは導き出せないと思っています』

7月12日、れいわ新選組は品川駅港南口に候補者10人が勢揃いする街頭演説会「れいわ祭り」を行なった。司会は女優の木内みどり。ゲストとして、ロックバンド「LUNA SEA」のギタリスト・SUGIZOや、作家の島田雅彦、脳科学者の茂木健一郎も登壇した。

スタート時間の17時には500人程度だった聴衆は、クライマックスを迎える20時には約3倍に増えていた。

畠山「これまでの取材に比べて、カメラの数も相当増えたようですが」

演説会終了後、囲み取材に答える山本に、そう声をかけてみた。

山本『そうなんですよ!「ずいぶん乗り遅れた人たちがいたんだな」っていう話だと思うんですね(笑)』

テレビカメラを目の前にしての強烈な皮肉。れいわの動きを当初から報じてきたネットメディアやスポーツ紙の記者からは笑いが漏れた。笑いを取りに来るのはいつものことだが、その後には真面目なメッセージも入れてくるのが山本のやり方だ。

山本『すみません、ありがとうございます(笑)。この映像に関しては、おそらく、開票速報まで流さないんだろうな。その時の素材取りなのかなーと思いながらやっています。でも、これがもうちょっと数字が前に出てくれば、(選挙期間中に)流すチャンスが出てくる。流さざるをえないだろうと思っています』

改めてテレビカメラを見据えると、山本はこうも言った。

山本『なので、(会社の)中で戦って下さい。みんな戦ってます。(テレビ局の)局内でも戦ってほしい。もう十分戦ってらっしゃるから、たぶん(この場に)来てるのかもしれませんけれど、一緒にやっていきましょうということです』

選挙期間中、日本のテレビは「開票速報特番」の宣伝は頻繁にする。しかし、投票の判断材料となる選挙期間中の報道は、それほど多くない。各候補の主張を「投票が終わった後」の特番でしか報じない「タイムマシン報道」で本当にいいのだろうか?

テレビ抜きのネット選挙が、どれほど現実に影響を与えられるのか──。山本太郎とれいわ新選組の戦いは、その試金石になるだろう。

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畠山理仁

畠山理仁

フリーランスライター。第15回開高健ノンフィクション賞受賞作『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』(集英社)著者。他に『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)など。興味テーマは選挙と政治家。

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