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海外でも進む地方選挙離れ。統一地方選挙の前に考えたい「地方選挙の意義」

2019/2/14

原口和徳

原口和徳

先日、総務省から統一地方選挙として10の知事選挙を含む973件の選挙が実施される予定であることが発表されました。統一率は27.21%と、地方自治体に関する選挙の1/4以上が同時期に実施されることになります。統一地方選挙は自分たちが暮らすまちの未来を考える機会となりますが、近年課題となっているのが低投票率です。

2018年に行われた知事選挙の半分以上は過去最低の投票率

2018年には14の府県で知事選挙が行われましたが、そのうち8つの知事選挙で過去最低の投票率となりました。中には、香川県知事選挙の29.34%のように30%を下回った選挙もあります

また、若者の投票率に目を転じると、二十歳の有権者の10人に1人しか投票に行っていない選挙もあります
関連記事:18歳選挙権ブームは終わったのか。投票に行ったのは「10人に1人」、地方で際立つ若者の政治離れ

ニューヨーク市長選挙の投票率は13.79%。アメリカの地方選挙での投票率

地方選挙における投票離れは日本だけの問題ではありません。

ポートランド州立大学が全米50都市を対象に行った調査では、人口上位30都市の内、ワシントンD.C.ロサンゼルスニューヨークなど15都市の市長選挙で投票率が20%以下であったことが報告されています。

図表1_アメリカの大都市における市長選挙投票率

また、世代別の投票率にも大きな差があります。
例えばニューヨークでは、65歳以上の投票率が30.7%であるのに対して、34歳以下の投票率は7.6%でした。極端な事例では、ラスベガスの65歳以上投票率32.7%に対して34歳以下の投票率1.7%といったものもありました。

国政選挙の半分の投票率になることも。イギリスの地方選挙での投票率

図表2は、2017年にイギリスで行われた総選挙(UKPGE)の投票率と、同年に行われた地方選挙の投票率を図示したものです。

図表2_イギリスにおける各種選挙(2017年)の投票率

いずれの選挙も総選挙の投票率よりも低くなっていることがわかります。なお、図表には記載されていませんが2017年にイングランド内で行われたグレーター・マンチェスター等6つの行政区画における長を決める選挙での投票率は27.8%と、イングランド内での投票率はほかの地域よりも低くなっています。

また、年齢別の投票率を見てみると、総選挙よりも地方選挙の方が55歳以上の投票率と34歳以下の投票率の差が広がっています。

ヨーロッパでも地方選挙の投票率は国政選挙よりも低下

ヨーロッパ全体の傾向も確認しておきましょう。少し古くなってしまいますが、EUが2004年から2008年にかけて収集したデータを基にノルウェーで作成されたものが図表3です。

図表3_ヨーロッパにおける地方選挙の投票率

政治教育の取り組みが日本でよく紹介されるスウェーデンは、国政選挙の投票率は87.18%(2018年)ですが、地方選挙の投票率は78.8%(2006年)となっています。同じくドイツは国政選挙76.15%(2017年)、地方選挙(2008年)はニーダーザクセン州58.0%、バイエルン州58.1%、ハンブルグ62.2%となっています。

なお、他の地域では、オーストラリアは国政選挙91.01%(2016年)、地方選挙(2017年)西オーストラリア州内の選挙34.5%などがあります。

私たちの暮らしと地方選挙

各国の調査では、地方選挙では候補者や地域の課題、その解決策(政策)の情報が不足していることが指摘されています。また、投票する人が少なくなることで地域の課題解決(学校や公共交通、治安維持など)がごく限られた人たちの意向に沿うものになることへの懸念も示されています。
もちろん海外の都市と私たちが暮らすまちでは置かれている環境が異なりますが、これらの指摘には共感できる部分もあるのではないでしょうか。

地方自治体の選挙で選ばれる政治家の活動は私たちの暮らしに様々な影響を与えています
例えば、公立学校における冷房設備を考えてみましょう。有名なところでは埼玉県所沢市で市内の小中学校へのエアコン設置に関する住民投票が行われた事例がありますが、学校へのエアコン設備の導入は県や市などの学校設置者による決定・予算措置が必要です。昨年、猛烈に暑い日が続く中で、小中学校に冷房設備が設置されていないことが話題となったまちにお住いの方も多いのではないでしょうか。そのことも私たちが地方選挙で選んだ政治家の活動の結果によるものです。
同様に、小中学校での給食の有無や子どもの医療費が無料になる対象年齢、住宅の取得や補修に対する補助なども、自治体ごとに提供する内容が異なっています。

今春の統一地方選挙では、地方議会議員の選挙でも選挙期間中に政策ビラ(チラシ)を配布することが可能になります。また、地方政治に携わる政治家がインターネット上での情報発信に力を入れる事例も増えています

地方選挙において投票率が低くなる現象は各国に共通しているように解決が難しい課題ですが、これらの変化も追い風に状況は変わっていくのでしょうか。統一地方選挙の結果が注目されます。

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原口和徳

原口和徳

けんみん会議/埼玉ローカル・マニフェスト推進ネットワーク 1982年埼玉県熊谷市出身。中央大学大学院公共政策研究科修了。早稲田大学マニフェスト研究所 議会改革調査部会スタッフとして、全国の議会改革の動向調査などを経験したのち、現所属にて市民の立場からのマニフェストの活用、主権者教育などの活動を行っている。

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