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自民党党大会。一強のいま、安倍首相は演説で「民主党批判」をしたのはなぜか。谷垣元総裁の再出馬はあるのか(安積明子)

2019/2/11

安積明子

安積明子

谷垣元総裁が語ったこと

例年なら3月に開催される自民党党大会だが、今年は4月に統一地方選などがあるため、1か月ほど早く2月10日に開かれた。会場はいつもの通り新高輪プリンスホテルのパミールで、もっとも広いこのバンケットルームに閣僚や党幹部の他、地方議員や支持者などが詰めかけた。

大会の“目玉”はなんといっても2016年7月に自転車事故にあい、政界を引退した谷垣禎一元総裁の登場だろう。

「3年前の夏、私の不注意から頸椎を損傷するという大怪我を負いまして、当時は幹事長の仕事を仰せつかっておりましたのに、突然仕事ができなくなるということで、党に大変ご迷惑をおかけしたことを何よりもまずお詫び申し上げます」

車椅子で登壇した谷垣氏は顔色も良く、よどみない口調でこう述べた。

谷垣元総裁

「私が今楽しみにしておりますのは、来年のパラリンピックでございます。私が怪我をするまでは、私自身も障碍者について漠然とした意識しか持っていませんでした。しかし自分が障碍を負いますと、障碍というのはひとりひとりによって抱えている課題が全部違うんだなと感じております。来年のパラリンピックの時に、パラアスリートの方々がどう課題を乗り越えられて、どう勇気を振り絞って、そしてあの大会に挑戦されるのか。ぜひ拝見したいという思いでいっぱいでございます。きっとそれは私にも勇気を与えて下さる、こんなふうに思いまして、来年を機会にバリアフリーがさらに大きく前進することを心から祈っております」

朗々たる声で述べられたそのスピーチは、2012年の総裁選での演説を彷彿とさせた。野党だった自民党の最有力候補は石破茂氏だったが、決戦投票を経て勝利したのは安倍晋三氏だった。なお谷垣氏も出馬の意向を持っていた。谷垣氏は野党だった自民党を建て直し、政権復帰に導いた最大の功労者でもある。しかし谷垣総裁の下で幹事長を務めた石原伸晃氏が党内の重鎮の支持をバックに手を挙げたため、谷垣氏は出馬を諦めた。

谷垣元総裁の想い

「3年前、皆様のご推挙により自民党総裁に就かせていただきました。当時の自民党は閉塞感、挫折感がみなぎっていました。なんとかもう一回国民のみなさんの信任を得る自民党にしたいと思って、この3年間歩んでまいりました。大変至らないところが多い私でございましたが、政権を取り戻すことが単に自民党のためだけではない、日本国のためだ、国家国民のためだという思いを党員のみなさんに共有していただきまして、至る所で精進を遂げ、一生懸命に戦っていただいた結果、各選挙にも段々勝利を占めるようになってまいりました。そして2つの内閣を退陣にも追い込みました。みなさんとともに3年間歩んでまいりまして、なんとかもう1回自民党の信頼を取り戻そう、あと1歩のところに来ているわけです。しかし100里の道も99里をもって半ばとす、この1歩こそ、私たちが一致団結して乗り越えなければならない1歩であります。安倍新総裁がこの最後の1歩を乗り切れる、その先頭に立っていただいて、私はこれから一兵卒としてこの1歩を乗り越えていく。ご一緒に努力をいたしたいと思っております」

この時の谷垣氏のスピーチは政治家がその思いを込めたものとして、歴史に残るひとつといえるだろう。その3か月後に自民党は政権を奪還するが、以来6年以上も「1強」として君臨し続けている安倍首相は、今回の党大会では野党批判をいっそう強めることになったのだが……。

安倍首相のスピーチで出てきた「あの政権」

安倍首相のスピーチ

「12年前の亥年の参議院選挙、わが党は惨敗しました。当時総裁であった私の責任であります。この時のことを片時たりとも忘れたことはありません。わが党の敗北によって、政治は安定を失い、そしてあの“悪夢のような民主党政権”が誕生しました」

安倍首相のスピーチのこの下りに、会場が騒めいた。会場の様子を写すモニターが設置されたプレスルームでも笑いが起こった。なぜ今更ながら、「民主党政権」を持ち出すのか。民主党自体はもう解体されており、政党支持率から考えても立憲民主党をはじめとするどの野党も、自民党を脅かす存在ではない。

しかしながら危機感は否めない。内憂外患というが、国内では森友・加計問題がいまだすっきりと決着していず、さらに厚生労働省のデタラメデータ事件も起こっている。

「1強」は続くのか

国外においては日韓関係悪化の原因が韓国側にあるとして、当初期待された北方領土問題はどん詰まりのまま。また昨年6月と今年2月末の米朝首脳会談では日本は蚊帳の外に置かれたままで、1月28日からの通常国会での施政方針演説で安倍首相は初めて北朝鮮との「国交正常化交渉」を口にしたが、拉致問題についても何の進展もなく、政権を支持してきた保守層が徐々に離れても仕方ない状態だ。

それを誰よりも安倍首相が知るからこそ、谷垣氏を登壇させたのではなかったか。さらに2012年9月の初心に戻るべく、民主党政権を引き合いに出したのではなかったか。

心なしか今回の自民党大会は、いつもよりも冷静な雰囲気が漂っていたように思えた。

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安積明子

安積明子

政治ジャーナリスト。兵庫県出身。慶應義塾大学経済学部卒。 国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。 その後に執筆活動に入り、政局情報や選挙情報についてさまざまな媒体に寄稿している。趣味は宝塚観劇やミュージカル鑑賞。月に1度はコンサートに足を運ぶ。

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