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「女性議員が増えることで、本当に、暮らしやまちは良くなるのか?」(高橋美奈・五所川原市議会議員へのインタビュー/聞き手:池田麻里)

2019/2/7

池田麻里

池田麻里

2018年5月に成立した「候補者男女均等法」では、女性候補の割合を50%にするよう政党に努力義務を求めている。女性議員の増加は、政治や社会にどんな変化をもたらすのだろうか。

今回は2019年1月に執行された五所川原市議会議員選挙に初挑戦された高橋美奈さん。五所川原出身の38才。ふたりのお子さんを持つシングルマザーでもあります。地元でコンビニエンスストアを経営。選挙支援や青年会議所活動などを通じ、出馬を決意。選挙告示3週間前の慌ただしい時期にお話を伺いました。

(追記 高橋美奈さんは2019年1月20日執行の五所川原市議会議員選挙で1240票を獲得。当選されました。)

今回お話を伺った五所川原市議会議員の高橋美奈さん

「津軽選挙」と「女性らしさ」の先に

-初めての政治活動、選挙へ向けた活動は順調ですか?

はい・・・。順調といえば順調なんですけど、やっぱり、これまで人の選挙を応援してきたのと、自分が出るというのでは心境が全然違いますし、何をしたらいいのか・・・と。応援してくださる方からのアドバイスをいただくと、とにかく歩く(ご挨拶回り)ことだと。だから、一生懸命歩いています。その分では着実とも言えるとは思いますが。

-今回、初挑戦を決めたのは、この夏の五所川原市長選がきっかけなのかしら?

いえ、もともと青年会議所で地域と関わる活動をしている中で「いつかは自分も」という気持ちがありました。青年会議所は40歳で卒業です。地元で商売もしていますが、40歳以降も、商売とは別に地域に貢献したいとは思っていました。
ただ、来年は地元の青年会議所で理事長をやりたいとも考えていて・・・。でも、同じく来年には市議会議員選挙があって、次の選挙は4年後になってしまう。
加えて、この夏に私が応援していた市長候補が600票差で負けてしまい、とても悔しい思いをしました。新人候補同士の選挙戦で、私が応援していた候補者は44歳でした。周辺自治体でも若手の首長が出てくる状況なのに、五所川原はこのままでいいのだろうかと。まだまだしがらみや業者選挙と揶揄される状況で、そのことも投票率低下を招いているのではないかと思います。若い人たちが政治なんて誰がやっても変わらないよ、と思う気持ちも分かる。私自身も青年会議所に入会するまでは同じように思っていたし。
誰かが変えていかなきゃ変わらないと。そう思って、市議会議員選挙の立候補予定者の顔ぶれを見直してみると、これまでと代わり映えしない。若い人が本当にいない。60代、70代が中心。50代の新人が「若い力を市政に!」みたいなキャッチコピーを使ってらっしゃいます(笑)

-ひえー。

最年少が40代半ば。20代、30代の議員が全国的には大勢誕生しているのに、ここではそういう雰囲気が全く無かったんです。

よし、今が機会なんじゃないだろうか、って思いました。
それで、最初に父親に相談しました。青年会議所で理事長を目指すか、市議会議員選挙に挑戦するか、悩んでいるんだけど、って。そしたら父から、どちらかに集中しなさいと、どちらかを選ぶのであれば応援すると言ってくれました。

青年会議所メンバーにとって、理事長になれるかもしれないというのは、本当に大きなチャンスで誰もが目指すこと。でも、1年でできることには限りがある。この先ずっと五所川原に関わっていけるのは市議会議員だって考えて決意しました。

-ご家族のご協力は心強いですね。

はい。でも、父には「まだ早い」って言われました。

-えっ?

だから、何歳だったら早くないの?って話をして。自分の思いを伝えたら「今だな」って理解してくれました。母も当初は心配していましたが、今は全面的に協力してくれています。
でも、やっぱり最初は反対しますよね、家族は(笑)

-都市部の選挙だと、両親や兄弟姉妹が近くに住んでいなかったりして、選挙に関わらない、ということもあると思います。
でも、やっぱり、家族が一丸となって頑張っている、という姿が、美奈さんを応援してくださっている方々にも熱として伝わりますからね。

本当にそうですね。常に、家族の誰かが選挙事務所にいて来客対応をしてくれていたり。
それが応援してくださる方の安心にもつながっていて。

ただ、女性、特に私と同年代の女性の多くは結婚して、子供がいて、働いていて、って状況で全く自分の時間が無いですよね。選挙だから事務所に来て、手伝って欲しいとも言いだせない。両親世代の支援者からは、お友達にも来てもらったら?って言われるんですけど、現実的に無理なんです。

-平日日中、一週間、無給でって、本当に無理ですからね。

そういう女性が動けない現実っていうのも、男性ばかりの環境では理解してもらえない難しさがあります。

-先日、五所川原で「内助功労章」*1が廃止されたという報道がありましたが、「女性は女性らしく。男性は男性らしく」っていう雰囲気が強いですか?

*1 内助功労章とは、名誉市民、市褒賞、文化褒賞の受賞者の配偶者に対する表彰でこれまでの受賞者は全員が女性。2018年12月の市議会で制度が廃止された。

まだまだそれが強いです。
定数が26名の議会にも70代の女性議員がひとりいるだけです。この状況も女性が挑戦しにくい要因なのかなと。

-あー、思いがあってもなかなか出づらいような。

「女のくせに」っていうのがまだ残っています。少しずつは変わってきてはいると思いますが、まだ3歩くらい遅れているかな(苦笑)
今回の全候補者の中でも、女性候補は現職の方と私の二人だと思うので、そういう意味では、当選後の会派所属のこととか、どうしたらいいのかな、と迷いはあります。
会派に所属しないと、十分な議員活動ができないのでは、という不安もありますし。

でも、議員に当選すると、特にベテランは周囲から「先生様」的な扱いを受けがちで、議会活動以上に調整役として動いている。時には人としての振る舞いに疑問を感じることさえあって・・・。
私は当選しても、そういう市議会議員にはなりたくないんです。

選挙に関心が無いっていう方々を引っ張りたいと思っていて。私に何か伝えることで、政治が変わるかもしれないと感じてもらいたいし、自分たちはこういうまちになって欲しいと考える、そういうことを考えてもいいんだって、そういうコミュニケーションを取り続けて行きたいと思っています。

-今回の美奈さんの挑戦に勇気づけられて、若い年代の女性の方々が政治に関心を持ってくれるきっかけになったらいいですね。

本当にそう思います。そうなったらいいなって。

-美奈さんと同年代のママさんたちが投票に行ってくれることも地域にとっては大きなインパクトになると思いますよ!

初めての辻立ち。

-選挙へ向けた活動のノウハウは、これまでの選挙応援などで分かっていたから戸惑うこともなく?

んー、そうですね。ある程度は分かっていました。
あと、車通りの多い通りなどで、辻立ちをするようにしています。これは、五所川原だと、こういう辻立ちをするのはこれまで特定の政党の方ばかりだったんですね。
だから、まず、顔と名前を知ってもらいたいと思って、立候補を決意した当初から立ち始めたんです。そしたら、ご挨拶回りへ伺った先で「通りに立ってたの見かけたわよー。頑張っているわね!」というお声をいただきました。

-女性がひとりで立っているのは目立ちますから(笑)しかも、この寒さの中!
-でも、最初、緊張しませんでした?

ものすごおーく緊張しました!もう、自分で何をしゃべっているのか分からないくらい。短い話を繰り返すしかないと思って。交通量の多い通りだと立ち止まって聞いてくださる方はいらっしゃらないので、まずは慣れようと。そこから少しずつエピソードを追加して、こういうことを言おうと思うのですが、つまって、間が空いてしまったり、本当に難しいですね。

-分かります(笑)私も12年前に始めてタスキをかけて駅前に立ったときは、もういたたまれなくて。10分で逃げ帰ってきました(笑)

ですよね!私も、1回30分を目標に立っているのですが、時間が長く感じます。
何事も慣れですよね!

-青年会議所活動でも人前でお話しすることはあったと思うので、慣れていらっしゃったのかなと思いますが。

確かに人前で話した経験はあると思いますが、それとこれとはまた違います
自分一人で道に立って、マイクを持ってって。寂しくて孤独な気持ちになることもありますが、時々、クラクションを鳴らしてくださる方がいたり、知り合いが手を振ってくれると本当に勇気づけられます

高校卒業後にも学べる場を。大学を誘致したい。

-美奈さんが考えている五所川原の課題は?

私にも子供がいるので、教育の課題への関心が強いです。長女も青森市内の高校へ通っていますが、五所川原市には大学が無いので、高校を卒業後はみんな市外へ出てしまいます。高校生でも市外の学校へ進学する子も多いので、五所川原に学生、学ぶ姿がないんです。そうなると、中学生が高校生の学ぶ姿を見て育つという機会が少なくなります。
もうひとつはグローバル教育の乏しさです。これだけグローバル社会と言って、実際にインバウンドは伸びているのに、市内での英語教育は足りていない。
大きな夢ではありますが、大学のキャンパスを誘致して、ここにアカデミックな環境を作りたいと思っています。

もっと若い人たちがこのまちで活き活きと暮らせる環境を作っていきたいです。

五所川原には閉鎖的な空気が残っています。
子供たちは何か小さなきっかけがあることで「すごい!」って夢や希望を持つことができる。そういう機会がここにはすごく少ないんです。

-高校卒業後のロールモデルが見えないと辛いですね。しかも、優秀な人材が流失してしまうと地域の活力も失われてしまいますし・・・。

そうなんです。
本当は地元に残りたいのだけれども、残って地元で夢を叶えられないのはかわいそう。今すぐには難しいかもしれませんが、10年後、20年後に戻って来ることのできる場所も作りたいです。
この辺りは農家が多いのですが、農家の後継者不足も深刻ですし。どうやって育成していくのか、どうやったら農業をやりたいと意欲を持ってもらえるのかも考えていかなければなりません。

-生まれ育ったまちだからこそ、将来を見据えたまちづくりに取組んでくれると期待しています!

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池田麻里

池田麻里

池田麻里。 1975年生まれ。早稲田大学在学中に代議士事務所でインターンを経験。民間企業勤務を経て枝野幸男秘書へ。2007年さいたま市議会議員に初当選。3期12年にて引退。女性を政治の場へ送り出すために活動中。

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