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投票者の数より投票総数が多い?投票数の過不足から分かった選挙不正事件簿

2018/10/18

Actin

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9月23日に投開票が行われた群馬県の館林市議会選である事件が発生しました。それは投票者数より投票総数が1多かったというものです。この原因が一体どのようなものであるか、市は調査を行いましたが、原因は特定できず、究明は困難な状況であると9月28日に発表しました。今回は投票者数より投票総数が多いと何が問題であるのか、そして、このようなことから判明した選挙の不正事件を紹介します。

投票者数より投票総数が不足することは多い

投票者数と投票総数の数が合わなくなることは実はしばしば起きています。例えば、2017年に行われた東京都議会選挙では全62区市町村のうち、半分の31もの区市町村で投票者数と投票総数が合いませんでした。ただ、これらはいずれも投票者数より投票総数の方が少なく、投票総数が上回ったという事例はゼロです。このように投票者数より投票総数が少なく、理由が分からない場合、有権者が票を投票箱に入れずに持ち帰ってしまった可能性が高いということで、「持ち帰りと思われる票」として、ほとんどの場合、処理されます。これは後述するような投票者数より投票総数が多いときと比較して、票の不足は大規模な不正の可能性が薄いからです。このため、投票者数より投票総数が少ない場合、その数が余りにも多くない限り、基本的には問題化されません。ただ、公職選挙法では、持ち帰り票を販売したり、これを利用して票の偽造を行ったりというような不正を防ぐため、投票用紙を持ち帰ってはいけないことになっています。

票の不足が大規模な不正であるという可能性は薄いとは述べました。しかし、このような票の不足が大規模な不正に結びつかないかというと、必ずしもそうとは言えません例えば、本来計上されるべき票が廃棄されていたため、票が不足していたという可能性があります。また、票を持ち帰ることで行われる不正もあります。これは前述した票の偽造や販売に使われる可能性が挙げられます。このほか、買収などでも用いられる手法として、票の持ち帰りが利用されることがあります。まず、投票所に行き、投票をしたふりをして票を持ち帰ります。この持ち帰った票に特定の候補者の名前を書き、その票をまだ投票していない人に渡して、その名前の書かれた票を投票させるよう命じ、その人が投票所で受け取った投票用紙を白紙のまま持ち帰らせます。そして、この人から投票しなかった白紙の票を回収し、この白紙の票に候補者の名前を……ということを繰り返すという手法で特定の候補者に票を入れさせるという不正があるのです。

投票者数より投票総数が多いと何が問題なのか

このように投票者数より投票総数が少ないケースはしばしば起きており、前述したようにさほど問題にされません。しかし、これが逆、つまり投票者数より投票総数の方が多い場合は今回のようにその数が1票でも問題にされます。それは正規の投票ではないものが混入されていることが明らかであるからです。本来、1人1票しか投票することはできませんが、正規でない方法で投票用紙を入手したり、投票用紙を偽造したりして、1人が複数の票を投票した場合、このように投票者数より投票総数が上回るという事態が発生します。つまり、投票者数より投票総数が上回った場合は不正が行われている可能性が極めて高いことを意味するからです。

このような投票者数より投票総数が上回った事例として、今回の館林市議会選以前では、2015年に福島県の金山町議会選で起きた事例があります。このときは投票所で投票用紙を1人に2枚渡してしまった可能性が高いとしています。また、次に述べるように偽造投票用紙が大量に混入していたという事件もあります。

1995年の勝北町議会選で起きた事件

日本国内において偽造投票用紙が大規模に用いられた事件として、1995年に岡山県の勝北町(現在は津山市に編入)で行われた町議会選の事例があります。この町は決して大きくない町で、この時の町議選では投票者数は約5,500人と記録されています。そして、投票終了後に開票が行われましたが、開票終了間際で信じられないことが判明します。それは投票者数より投票総数が多いというものでした。そして、この数は1や2ではなく、何と100を超えるという明らかに異常なものだったのです。

このような事態を受け、選挙管理委員会は票の再点検を実施しました。そして、そこで驚くべきものを発見します。票の中から正規の投票用紙と比べて印刷が薄く、紙質も異なっていた不審な投票用紙が122枚も見つかったのです。最終的にこの不審な投票用紙を偽造されていたものとして、有効票から除外して集計をしました(なお、選挙後に有効票とされた票を再調査したところ、偽造投票用紙が3枚あったことが発覚しています)。

そして、選挙後に警察は捜査を行いました。その結果、不在者投票を利用して正規の投票用紙を持ち帰り、これをコピーして、様々な候補者や運動員にこの偽造投票用紙を販売していたグループがいたことを突き止めました。

偽造投票用紙を購入した候補者たちは偽造投票用紙に名前を記入し、様々な手段を用いて、正規の投票用紙とともに投票箱に入れてしまいました。このため、最初の集計で投票者数より投票総数が大きく上回るということになってしまったのです。最終的にこの事件は候補者17人中10人(当選者は9人)が起訴されるという事態になりました。そして、当選した町議の半分以上が起訴されてしまったという事態を受け、選挙で選ばれたばかりの町議会は責任を取って自主解散し、再選挙を行うことになっています。

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参議院選挙には立候補できる年齢。個性あふれる候補者が多数出た1999年の東京都知事選に衝撃を受けてインディーズ候補(いわゆる泡沫候補)にはまる。インディーズ候補以外にもちょっと 変わった選挙・政治ネタに興味あり。

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