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「地方公務員アワード」で話題。日の当たらない「地方自治体を応援するメディア」を作った理由とは?|加藤年紀さんインタビュー

2018/10/8

選挙ドットコム編集部

選挙ドットコム編集部

「地方公務員」の一般的なイメージと言えば「地味」「堅実」「安定」。もっとストレートに言えば「事なかれ主義で淡々とルーティンワークをこなす」「変に出すぎることなく、無事定年を迎えることが最優先」といった印象でしょうか。しかしながらよく考えてみれば、一般企業の中にも様々なタイプの人がいるように、地方公務員も実は千差万別なはずです。

これまで「個」で見られることがほとんどなかった地方公務員ですが、個性を活かし、地方を支え、盛り上げる立役者となっている地方公務員を取り上げ、地方自治体を応援するメディア「Heroes of Local Government」(HOLG.jp)を運営しているのが、加藤年紀さんです。

なぜ「地方公務員」「地方自治体」を応援するメディアを立ち上げようと思ったのか、HOLGを通してどのような社会づくりを目指しているのか、その活動への反響はどのようなものかなど、株式会社ホルグ代表取締役社長の加藤年紀さんに聞いてみました。

高水準の日本の行政サービスが国内であまり評価されていない現状を変えたいと思った

-選挙ドットコム 編集部
なぜ、地方自治体を応援するメディア「Heroes of Local Government」(HOLG.jp)を始めようと思ったのでしょうか?

-株式会社ホルグ代表取締役社長 加藤年紀さん(以下、加藤さん)
そもそもは「誰もやらないような儲からないこと」かつ「世の中のためになる仕事」がしたいと考えていました。

民間のビジネスは、利益と売り上げを追及するという大前提がありますから、おのずとサービスは安く、高品質になっていくシステムができていると思います。また、以前よりも利益の追求だけではなく、社会貢献を本気で進める民間企業が増えていますし、その流れは今後も続くと予想しています。そうすると、世の中を良くするため、私という人間をどこかに配置するとした場合、民間企業のビジネス領域には必要がないと感じました。

そこで注目したのが「地方自治体」「地方公務員」でした。
世の中全体に最も好影響を与えられる可能性を秘めているのは地方自治体、地方公務員だと思っています。行政が果たすべき、セーフティーネットとしての役割はとても重要です。だからこそ、HOLG.jpや地方公務員アワードを通じて、地方公務員が成果を出しやすい環境を作っていき、少しずつ世の中を良くしたいと思っています。

-選挙ドットコム 編集部
地方自治の中でも政治の分野ではなく、自治体そのものや公務員に絞った理由はなぜでしょうか?

-加藤さん
政治についても興味はありますが、政治はテレビや新聞で取り上げられることも多く、知事や市長のインタビューもよく目にします。一方で、公務員、特に地方公務員の話はほとんど聞きません。

地方自治体は、人の幸せや暮らしに直結する仕事を独占してやっている面があります。つまり自治体の仕事の成果は、そのまま世の中の幸福度に影響します。「重要なのに情報がない」という現状を変えていくべく、HOLGを立ち上げました。特に日本の地方自治体は「本来であればもっと評価されていい」と思っているんです。

私は、新卒で「LIFULL HOME’S」という不動産のウェブサイトを運営する「LIFULL」という会社に入社して約10年勤務し、2012年から4年半、ジャカルタにひとりで出向してインドネシア子会社の立ち上げを行いました。ジャカルタでの生活は、行政のサービス品質が非常に悪くて苦労しました。すぐに停電するし、水道からは黒く濁った水がでてくることもしょっちゅう。道路もぼこぼこです。もっとひどいのは、賄賂がないと行政の許認可がおりなかったり時間がかかるのが、常識となってしまっているところでした。

こうした海外の行政サービスを身を持って体験してみると、日本の行政サービスの品質は世界的に決して悪くない、むしろ良いのではないかと感じました。しかしながら、国内では日本の公務員はほとんど評価されず、よく叩かれていますよね。汚職などはもちろん許されませんし、時間がかかったり杓子定規な行政サービス・対応への不満で叩かれるのはまだわかります。でも「自分たちの税金で食ってるくせに」とか「一般企業と違って、犯罪でも起こさない限り定年まで安泰」といった嫉妬というか無意識の上から目線で、地方公務員は「大っぴらに叩いてもいい存在だ」といった意識を持っている人が少なくないような気がしています。

そこで、個人の地方公務員に注目して、その活躍や考え方を取り上げるメディアがあれば、日本の地方公務員はもっと正当に評価されますし、一般の人との溝も埋まり、社会全体が幸福度を高めていくよい連鎖が生まれていくのではないかと考えました。

また、地方公務員の方の活動や考えを掘り下げて記事にすることで、他の自治体の公務員の方など、自治体に関わる全ての人にとって役に立つと考えたという点も、HOLGをはじめた理由の1つです。

あえて「将来」より「今」。「地方創生」ではなく「地方自治体」

-選挙ドットコム 編集部
地方自治体が話題になることは少ないですが、「地方創生」については近年、いろいろな場面で取り上げられています。HOLGが焦点を当てるのは「地方自治体」という切り口ですか?

-加藤さん
HOLGの話を友人や知人にすると「地方創生に関わる仕事をしているんだね」と受け取られることが多いのですが、私はあえて「地方創生」よりも「地方自治体」というキーワードにこだわっています。

「地方創生」が、将来への方向性を示しているのに対し、「地方自治体」は今現在、存在する組織そのものです。一般の人がなかなか知るチャンスがない地方自治体には、90万人の自治体職員がいます。そこで汗を流しているすごい人や、その人の活躍が広く知られることによって、組織としての地方自治体はさらに成果を出しやすい、やる気のある人が働きやすい環境になっていき、市民生活もよりよくなっていくと思うのです。

「ローマ法王に米を食べさせた男」からインタビュー先が広がった

-選挙ドットコム 編集部
当初は、当時お住まいだったジャカルタから片道20時間かけて取材に行かれたこともあったと伺いました。なぜそこまで、熱い気持ちで行動を起こしたのでしょうか?

-加藤さん
HOLGとしての活動をはじめたころ、佐賀県武雄市の前市長である樋渡啓祐さんにインタビューに伺ったときのことですね。そのときは「自分の知らない世界を知る機会を得たこと」にワクワクしてたんですよ。だって単なる30歳過ぎのサラリーマンだった自分が、元市長に会う機会なんて普通はないじゃないですか。「片道20時間、飛行機を乗り継いででも、喜んで伺いますっ!」という心境でしたね。

-選挙ドットコム 編集部
ちなみに人生初のインタビューはどなただったんですか?

-加藤さん
スーパー公務員のはしりとして有名な、高野誠鮮さんです。高野さんのことは「ローマ法王に米を食べさせた男」という本で知りました。本に書かれていた行動力に圧倒されて、面識もないのにインタビューをさせていただきたいとSNSにメッセージを送ったんです。そうしたら会ってくださると返事が来て、逆にビックリしたことを覚えています。
実は、高野さんご自身が面識のない相手にメッセージを送って、そこから大きな成果を上げたというエピソードを著書にたくさん書かれていたので『もしかしたら』と思い、私も真似をしてメッセージを送ってみたのです。

その後は高野さんから樋渡前市長を紹介していただき、樋渡さんからは山形市のスーパー公務員の方、さらにその方からも、と次々に紹介していただき、芋づる式に素晴らしい方々にインタビューする機会をいただきました。やはり地方自治体で活躍されている方は、同じように活躍されている方との個人的なつながりがあるものだなと実感しています。

メディアとイベントで地方公務員の熱烈なサポーターになりたい

-選挙ドットコム 編集部
HOLG.jpでは、市長のインタビューなども掲載されていますが、それ以上に活躍している地方公務員の方のインタビューが多いですね。

-加藤さん
インタビューは首長が3割、地方公務員が7割ぐらいの比率です。首長の記事は既にマスメディアが発信していることも多いので、自分の役割は活躍している地方公務員を探して発信することだと思っています。行政組織に対する取材はあっても、公務員個人に光を当てるのは最近やっと増えて来たかなという程度です。

そもそも、人は人に対して興味を持つと思うんですね。将棋の面白さを高名な人が熱弁してもなかなか伝わらない。でも、藤井聡太さんという個の存在が登場すると、将棋教室がいっぱいになりますよね。今まで公務員全体では、そういうスタープレイヤーは決して多くなかった。全国にはそういう人が実はたくさん眠っていて、彼らが知られることが官民の溝を埋めていくのだと思います。

-選挙ドットコム 編集部
HOLGは年に1度、「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード」(地方公務員アワード)も開催していますね。受賞者はどのようにして選ばれるのですか?

-加藤さん
本アワードは、地方自治体職員の他薦をもとに、活躍する現役の自治体職員が審査を行って、その成果や活動の「地味」「派手」を問わず「本当にすごい!」と思われる地方自治体職員を表彰するという取り組みです。

-選挙ドットコム 編集部
まさに地方自治体職員の、職員による職員のためのアワードですね。

-加藤さん
昨年から毎年開催し、今年の8月に2回目となる「地方公務員アワード2018」を発表したところです。「地域に飛び出す公務員を応援する首長連合」様の後援をいただいたほか、たくさんの企業に協賛・協力をいただき「すごい!地方公務員」都道府県・組織別受賞者は12名、「特別協賛社賞」は5社各1名で、受賞者の方には楯やトロフィー、47CLUBの特典などを贈呈しました。

HOLG.jpだけでは発信力にも限界がありますが、NHK、テレビ朝日、朝日新聞、毎日新聞などのマスメディアをはじめ、大手経済誌やウェブメディアなど、20以上のメディアで全国の受賞者が取材されています。アワードによって、活躍した地方公務員により大きな注目が集まることが嬉しいです。

-選挙ドットコム 編集部
受賞した方の感想はいかがでしたか?

-加藤さん
「受賞が決まったと聞いても、正直どのような賞かもわからずにいたけれど、職場の仲間や家族に『おめでとう』と言ってもらえたり、楯やトロフィーが届いたら、自分のこれまでの仕事ぶりをみんなに認めて褒めていただいた気がして嬉しかった」などという感想が届いています。普段、がんばっているのに日の目を浴びない地方公務員の方がじんわりとでも喜んで下さったら、それだけでもイベントを開催して良かったな、と思っています。今後もいろいろな形で、地方公務員の方の活躍を発信し、彼らの働きやすい環境に寄与していきたいと思います。

地味だと思われていた「行政」に100万人単位の読者が付く

-選挙ドットコム 編集部
「すごい!地方公務員アワード」やメディアの運営など、HOLGの活動への手応え、反響はいかがですか?

-加藤さん
HOLG.jpの活動をもとに、昨年からFORBES JAPAN.comやダイヤモンドオンラインなど、情報発信力のある大手経済誌へ活躍する公務員や自治体にまつわる記事を執筆させてもらっています。記事が出るとその反響も大きく、そういった場をいただいて広く情報を発信できていることがありがたいです。これは出版社側に驚かれたのですが、「地方行政」という地味な題材にも関わらず、執筆を通じて累計100万人単位の方が記事を読んでくださっています。

-選挙ドットコム 編集部
今後はHOLGをもっと大きく、躍進させていくのでしょうか?

-加藤さん
HOLG.jpを大きくすることは目的ではなく手段ですので、そこには固執していません。
ただ一方で、HOLG.jpの活動から、大手経済誌への執筆、大手テレビ局とのタイアップ、自治体の有識者会議の委員、民間企業へのコンサルティングやアドバイザリーの依頼など、活動に広がりがありました。これはメディアとしてのHOLG自体で儲けが出なくても、HOLGの活動を維持していく上では重要なポイントになると思います。
これからもHOLG.jpを安定的に成長させながら、官民問わず、より多くの方々のお力をお借りして、地方公務員が成果を出しやすい環境の構築に貢献したいと考えていますので、何か連携したいというかたがいらっしゃれば、気軽にお声がけいただけたら嬉しいです。

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