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近ければ投票する? 駅やコンビニに投票所を作れば未来の投票率は変わる!

2018/9/6

原口和徳

原口和徳

来年4月に予定される統一地方選挙。国政選挙に比べて低い投票率となりがちな地方選挙の関係者にとって投票率の向上が大きな課題となっています。

明るい選挙推進協会が実施した衆院選の意識調査では、投票所までの移動時間が長くなるほど、投票を棄権する人の割合や期日前投票所を使用する人の割合が高まる状況にあることが報告されています。スマホからの投票など、投票率向上のためには「投票をしやすい環境づくり」の重要性が指摘されることもありますが、実際はどうなっているのでしょうか。2016年に行われた参院選のデータを基に確認してみましょう。

投票所と投票率の関係は? 参院選の事例から

図表1では、投票率の高かった上位10都道府県を対象に、投票率や、投票所数の全国順位等をまとめています。
投票所の設置数トップ5はいずれも投票率のトップ10には入っていないことが分かります。また、投票所への物理的な距離を考慮し、何キロ平方メートル当たりに1つの投票所があるのかについても比べてみましたが、投票率への影響は生じていなさそうです。

それよりも、投票率の高かった都道府県はいずれも1人区であることや、野党系の候補者が当選している選挙区が多いといった選挙区事情の方が目に付きます。
これらの結果だけを見ると投票率に対して投票所の数は関係ないとの見解も引き出せそうですが、未来の投票率を左右する「若者」に焦点をあててみると違った結果も見えてきます。

大学やショッピングセンターなどへの投票所の設置と若者の投票状況

投票環境向上のための代表的な取組に「期日前投票所」を大学やショッピングセンター、駅構内等の利便性の高い場所へ設置する活動があります。

期日前投票所を対象として、10代及び全年代の投票率と有権者にとって利便性が高いと考えられる場所(大学やショッピングセンター、駅構内等)への期日前投票所の設置数を比較してみました。

投票率の順位を10位ごとにグループ化し、有権者の利便性が高い場所への期日前投票所の平均設置数を計算すると、10代では投票率が上位のグループ程、利便性が高い場所への期日前投票所の設置数が多いことが見て取れます。一方、全年代の投票率からは同じ傾向は見て取れません。
なお、10代の投票率が高かった都道府県(1位~10位のグループ)では、全年代投票率における順位に比べて投票率の順位が上昇している都道府県が8団体に上っています。

この結果だけをもって有権者にとって利便性の高い場所に投票所を設置すると、若者の投票率が上昇するなどの因果性のある結論を導くことはできませんが、両者の間には何らかの関係がありそうです。

利便性の高い場所へ期日前投票所を設置したことで、10代の投票率が高くなった理由は?

まず考えられるのが「投票所に足を運ぶためのコストが下がった」ことですが、このことはほかの年代に対しても同様の影響を及ぼしている可能性があります。

そこで考えられる1つ目の理由が、利便性の高い場所に投票所が設置されたことで選挙の存在を認識した10代の有権者が増えたことです。
投票参加における研究では加齢に伴う社会的経験を通して政治への興味・関心が育まれていくことが明らかにされています。今回、目に付く場所に期日前投票所が設けられたことが社会的経験を積むことと同じ役割を果たし、若者が政治を意識することができた可能性が考えられます。

2つ目の理由は、期日前投票所の設置を進めた団体の存在です。利便性の高い場所への期日前投票所設置を進めた大学生やその関係者、選挙管理委員会、地方議会議員などの団体が、他にも様々な活動を行った結果として、若者の投票参加に結びついた可能性も考えられます。

これらに共通しているのは、若者と政治の接点を増加させていることです。
このことをポイントとして考えると、他にも学校内で模擬選挙や公開討論会を開くことなども若者の投票率向上に向けた効果的な手段として考えられそうです。

インターネット投票の解禁を待たなくても、未来の投票率を上げるためにできること

学校や商業施設などに投票所を設置することで、二重投票防止のための仕組みづくりや選挙事務に従事する人の手配など、新たなコストが発生することを懸念する声もあります。例えば、横浜市が参院選の時に「共通投票所」の設置を検討した際、数億円の費用などが必要になると試算したことはよく知られています。

一方、総務省「投票環境向上に向けた取り組み事例」では、市内に100箇所以上の投票所のある函館市において150万円程度の費用で共通投票所を設置できたことや、商業施設側から施設内に期日前投票所や共通投票所を設置することへの協力を申し出ている事例があることを確認できます。

やり方次第では、インターネット投票を解禁する法改正や、多額の費用を要しなくても投票環境や未来の投票率の向上を実現していくことができるかもしれません。

明るい選挙推進協会による衆院選の意識調査において、投票を棄権した人に「どういう状況だったら投票に行こうと思うか」を尋ねた設問で、4割弱の人が「駅やショッピングセンター・コンビニなどでも投票出来たら」と回答していることも、利便性の高い場所への投票所の設置を後押しする材料となりそうです。

今回取り上げた投票所の設置場所の工夫は、追加の費用を要する一方で、若者の政治参加に貢献する可能性があることも示されました。選挙のたびに、若年層の低投票率についての問題提起がなされていますが、もし、若者のような特定の世代だけが政治に参加しにくくなってしまう制度的な要因が存在するのならば、その不公平は取り除かれていくことが望まれます。

統一地方選挙に向けて、利便性の高い場所への投票所の設置などの新たな取組みが行われていくことが期待されます。

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原口和徳

原口和徳

1982年埼玉県熊谷市出身。中央大学大学院公共政策研究科修了。早稲田大学マニフェスト研究所 議会改革調査部会スタッフとして、全国の議会改革の動向調査などを経験したのち、現所属にて市民の立場からのマニフェストの活用、主権者教育などの活動を行っている。

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