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「トイレは毎回、流しません!」政治家の居住実態、その判定根拠ってなに?

2018/5/5

選挙ドットコム編集部

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ニュースでも度々取り上げられますが、地方議員が立候補する地域に住民票を移して当選した後、「居住実態がない」と判断され「当選取り消し」になった例が複数あることをご存知でしょうか?

参考:
羽曳野市議に辞職勧告決議 居住実態なしと判断(共同通信 2017年12月12日)
居住実態なく当選無効と異議 京都・精華町議選で次点陣営(京都新聞 2017年5月19日)

市区町村議会に立候補する場合、選挙をする際のルールを定めた「公職選挙法」には「日本国民で満25歳以上で、その市区町村議会議員の選挙権を持っていること。引き続き3カ月以上、その市区町村に住所のある者」とあります。(参照:総務省|選挙権と被選挙権

これをそのまま読むと、3ヶ月前にひとまず住民票を移すだけでも、手続き上は問題はなさそうです。しかし実際には、当選者が「無効」と判断される事態が相次いでいます。なぜでしょうか?

実際に「当選無効」となった例も

具体的に見ていきましょう。選挙が行われ、投票・開票された後に「当選無効」と判断されて過去に話題となった事例は、新座市議会議員と狭山市議会議員などがいます。

新座市議会議員の事例は、2012年2月19日の埼玉県新座市議選で初当選し「美人すぎる市議」としても注目された議員でした。しかし当選の2ヶ月後、「転入届した住所の水光熱費がほとんどない」ことで「居住実態がない」と判断され当選無効になりました。議員はこれを不服とし、県選挙管理委員会に申し立てをするものの棄却され、東京高裁に提訴。しかし、12月になってこれを取り下げ、失職しました

記者会見では届出ていた住所の水道がほとんど使われていた形跡が無かったことを問われ、「トイレは毎回、流しません」と釈明したことも話題となりました。

 

狭山市議会議員選挙で当選無効となった議員は、2015年4月26日に実施された狭山市議選で初当選。しかし、その後の調査で、物件の鍵を受け取って住み始めたのが同年1月31日だということが判明しました。

1月31日から居住していたということは、投票日までの居住期間が3ヶ月を切っています。また、水道使用量は全くなく、ガス・電気の契約が同年2月下旬であったことも明らかになり、市選挙管理委員会は「生活拠点を移したとはいえない」「居住実態がない」と判断し、当選無効としました。

議員はこれを不服として、県選挙管理委員会に対して申し立ての意向を示した際、「同市に転入届を出した1月20日以降、旅行中を除いて狭山市内で寝泊まりしていた」と説明しました。しかし、この申し立ては棄却され、約2ヶ月後に失職しました。このとき、県の選挙管理委員会は「申立人の生活の本拠であったことを客観的に示す事実は認められない」との文書を、埼玉県のHPに公開しました。

住民票を移動しても、水道・電気が動いていないと、実際は住んでいない?

この他にも、全国各地で複数名の議員が「当選無効」とされ失職したり、現在も係争中だったりしています。なぜそうなってしまったのか、過去に選挙管理委員会が指摘したポイントを調べてみました。

・住民票を移動しただけで暮らしていない
・居住地とされた場所の水光熱費がまったくないか、ほとんどない
・住民票の場所に家や部屋があっても住んでおらず、別の場所から通っている
・転入届を出した日に居住地が決まっておらず、知人、友人宅に居候していた
・家族は別の場所に住んでいるのに、立候補者本人の住民票だけを移動している
・銀行口座の出金場所が選挙区以外に集中している

また、過去に最高裁が「その者の住所とする意思だけでは足りず、客観的に生活の本拠たる実体を必要とするものと解すべき」との判断を出していました。要約すると「ただ単に住所を移すだけではダメで、実際に生活していること。『住所』というのは、生活の本拠地のこと」ということです。

こうした判例もあり、「水光熱費」は「実際に生活しているかどうか」の根拠とされているようです。では、そうなると、例えば地方議員が長期旅行に出かけている場合、水光熱費を生活実態の根拠にできるのでしょうか? 過去の事例を調べてみましたが、具体例を見つけることはできませんでした。

候補者の「居住実態」は、なぜ問題になるの?

居住実態に関しては、「3ヶ月しか住んでいないのに?」や「期間は関係ないのでは?」「当選を取り消すのは民意の抹殺になる」「どこに住んでいてもいいじゃない」など、さまざまな意見があります。なぜここまで「候補者の居住実態」が問題視されるのでしょうか。

そもそも、「3ヶ月以上、市町村の区域内に住所を有する者」という規定があるのは、市区町村議員選挙だけです。それは「地域密着型」で、「地域の一員として活動する」ことを前提にしているため、地域の実情をきちんと知っている必要があるためです。地域の一員となるための最低条件として「3ヶ月以上の居住」という要件が設定されているのです。

一連の問題で「当選無効」とされた議員側にも主張はあるでしょうが、公職選挙法で定められたルールがあり、争点となっている「居住実態」の解釈については裁判所の判断も示されています。法律を守り、地域のための政治をして欲しいですね。

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