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「ヒゲ」でも有効票。葛飾区で当選・落選が入れ替わった「1票差の逆転劇」はなぜ起きた?

2018/3/9

Actin

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先日掲載された記事、『「1票差の劇的勝利がまさかの「大逆転1票差負け」に?葛飾区議選の当落入れ替わりはなぜ? 』で紹介されていたように、2017年葛飾区議会選は最下位当選者の大森有希子(おおもり ゆきこ)氏と次点で落選した会田浩貞(あいだ ひろさだ)氏との差が1票しかありませんでした。

この選挙結果を巡り、異議申し立てが行われ、票の再点検が行われました。その結果、大森氏の票となっていた2票が無効票と判定され、会田氏が逆転当選という裁決が東京都の選挙管理委員会から下されました。なお、大森氏は不服として裁判所に提訴する方針を示しています。
【関連】1票差の劇的勝利がまさかの「大逆転1票差負け」に?葛飾区議選の当落入れ替わりはなぜ? >>

今回は票の数え直しが起こる理由と、これによって起きた珍しい事例を紹介します。

無効票の条件とは

公職選挙法第68条には以下のような無効票となる条件が規定されています。

・所定の紙を用いないもの
・候補者でない者や立候補していても実は被選挙権がなかった者の氏名を書いたもの
・二人以上の名前を書いたもの
・氏名の他に何か書いたもの(ただし、職業、身分、住所、敬称は有効)
・自筆で書いていないもの(代理投票は除く)
・何を書いているか分からないもの

葛飾区議選のように僅差で当落が決まった場合、この無効票の規定の解釈を巡って、争いがしばしば生じます。

例えば、何を書いているか分からないとして無効と判定された票を「よく読めば自分の氏名が記載された票である」としたり、候補者のものでないとして無効と判定された票を自分の氏名を書こうとして誤記したとして有効であるとしたり、逆に他候補の票がこれらの条件に当てはまるので無効であると訴えたりするのです。

なお、これは日本の選挙が原則として、有権者が候補者の氏名等を自書する自書式投票であることから起きます。海外では主流の方式である、あらかじめ投票用紙に候補者の氏名が印刷され、記号を付けるなどによって投票する記号式投票ではこのような事態を防ぐことができます(日本の選挙でも地方選挙であれば、条例を制定することで記号式投票をすることができます)。

開票後に「有効票が無効である」などといった訴えによって逆転が起きた最近の事例としては、2015年の相模原市議会選が挙げられます。この選挙では開票終了時に最下位当選者と次点候補の差が0.661票と僅差であったため、次点候補が再点検を要求しました。この結果、判読不能の文字があり、無効票となっていた1票が次点候補への有効票と裁決され、逆転当選となりました。この裁決については、逆転で落選した候補が不服を訴え、最終的に最高裁まで争われましたが、逆転当選が確定しています。

国政でも起きた逆転当選

こうした逆転当選はごくまれに起きますが、国政選挙でも一例のみ、確認されています。

1950年6月4日に投票が行われた参議院選の島根県選挙区では、桜内義雄氏と小滝彬氏の激しい戦いとなり、389票差で桜内氏が当選しました。しかし、当選直後の8日に思わぬ事態が発生し、桜内氏の当選が保留になります。それは桜内義雄氏の有効票の中に、父親である「桜内幸雄」や兄である「桜内幹雄」、あるいは親戚の名前が記載されている票が約2千票あり、これらの票が疑問票として扱われたのです。

そして、県選挙管理委員会は12日にこれらの疑問票は桜内氏の有効票であるとして桜内氏の当選を確定しました。しかし、小滝氏がこれを不服として争う姿勢を見せ、この疑問票の解釈は最高裁まで争われました。最終的に選挙から約1年半後の1951年10月に桜内氏の約500票が無効票と判定され、小滝氏が劇的な逆転当選を収めたのです。

ヒゲは有効票か?

無効票の解釈を巡った珍しい事件としては、2005年の鳴門市議会選で起きたものがあります。この選挙では最下位当選者の坂東成光氏と次点の明野尚文氏が1票差という結果となりました。

この結果を受けて、明野氏が坂東氏の有効票の一部に無効票があるとして不服の訴えをしました。明野氏が無効票であると主張した票の中には「バンド ヒゲ」と記載された票がありました。この「バンド ヒゲ」は無効票であるという訴えに対し、坂東氏はひげをトレードマークとして市議会や本業の理容業で活動していたこと、選挙運動でも「ひげの男、坂東」と連呼し、ひげを強調していたこと、市議会議員や市職員、住民にも「ひげさん」と呼ばれているため、この票は自分の票であることを主張しました。

この争いは最高裁までもつれたものの、最終的に「ひげさん」と広く呼ばれている事実が認められ、「バンド ヒゲ」は坂東氏への投票であるとされました。また、「ヒゲ」以外の票も無効票とならなかったことから、逆転は起きませんでした。

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参議院選挙には立候補できる年齢。個性あふれる候補者が多数出た1999年の東京都知事選に衝撃を受けてインディーズ候補(いわゆる泡沫候補)にはまる。インディーズ候補以外にもちょっと 変わった選挙・政治ネタに興味あり。

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