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NHK内定で話題のたかまつなな氏の覚悟。18歳選挙権をブームで終わらせないために(後編)



寺崎 倫代
寺崎 倫代

日本で主権者教育(政治や選挙への関心や知識を高めるための授業)を行う唯一の株式会社・笑下村塾を立ち上げたお笑い芸人、たかまつななさん(以下、たかまつ氏)へのインタビュー後編。NHK入社を控えた、2018年の抱負を伺いました。

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【関連】NHK内定で話題のたかまつなな氏の覚悟。18歳選挙権をブームで終わらせないために(前編)  >>





NHK内定の真相は?…テレビ番組のひな壇から学校現場まで、様々な場所から政治と社会問題を訴え続けてわかったこと


-選挙ドットコム ライター 寺崎(以下、選挙ドットコム 寺崎)
前編では2017年の活動を中心にお話を伺いましたが、後編では来年の活動についてお伺いします。2018年のたかまつさんにとって最も大きな変化の1つがNHKへの入社かと思いますが、まずは入社を決めた理由をお聞かせください。

-たかまつなな氏(以下、たかまつ氏)
お笑い芸人として、また笑下村塾の社長として活動してみて、大きな手ごたえを感じると同時に難しさも感じていました。笑下村塾の活動にはもっと波及力が必要だと思いましたし、お笑い芸人としてテレビを通じて政治や社会問題を訴えて行くことにも挑戦してきましたが、色々と難しいなと感じることもありました。

-選挙ドットコム 寺崎
それは例えばどのような点でそう思われたのでしょうか?  2017年を振り返ると、大きな選挙があったことや政局が激しく動いたことから、比較的ワイドショーやニュース報道等で政治や選挙について取り上げる機会が多く、視聴者の関心も高まったようにも思います。

-たかまつ氏
注目度は高まったかもしれませんが、そこから本質的な議論まで持っていくのは難しいように感じました。
まずは政局の動きに関心をもってもらい、「自分にどんな影響があるのか」などを考えてもらうきっかけを作る、といったことも大切だとは思います。その上で、私は「演者」としてテレビに出ている立場でしたが、番組の制作側の意図を超えていくのは難しいとも感じていました。

例えば、番組冒頭で話題を振る段階から、既にある程度どんなコメンテーターからどんなコメントが出るかが想定されています。若者はどうしても、一般的に政治には詳しくない無知なキャラクター像が求められることが多いので、私のような政治オタクはニーズがないんです。あ、別にオファーが来ないことのいい訳じゃないですよ。

-選挙ドットコム 寺崎
最近の若者はあまり家にいないしテレビも観ない、とよく言われているので、番組制作側からすれば、政治情報を届けるターゲットにあまりされていないのかもしれませんね。

-たかまつ氏
それでも私が仲良くさせていただいている宇野常寛さんは、「そもそも問題の設定が違う!」などと発言されて、テレビ番組の予定調和な流れを崩す試みにも果敢にチャレンジされています。でも、私は「番組の制作スタッフさんが(おそらく)朝まで寝ずに作ったフリップを“こんなもの意味がないです!!”と言って生放送で否定してしまうのってどうなんだろう?」「まずは政治に関心を持ってもらうために、面白おかしく見えるための演出も大切なんじゃないだろうか?」などと、ついつい考えてしまうんです。こんなこと言うと宇野さんに「お前はメディアの犬か!」って怒られてます。

演者という立場を続ける中で、それであれば「番組を企画する側の立場」になってしまった方が早いのではないかと思い、テレビ局を受けることにしました。まさか内定をもらえると思っていなくて、本当にびっくりしました。

-選挙ドットコム 寺崎
そういった考え方からも、たかまつさんが「演者」として自分が活躍することよりも「政治や社会問題がちゃんと伝わるかどうか」を重視しているのが伝わってきます。数あるテレビ局の中でも、NHKを選ばれたのはどういった理由だったのでしょうか?

-たかまつ氏
今のメディアの風潮で一番気になっていたのが「視聴者の気を引くには、こういうネタさえ放送しておけばいい」と言わんばかりの不倫や汚職と言った、人目を表面的にしか引かない番組の作り方があまりに多い点でした。政治を語る番組もいくつかはありますが大体討論番組で、じゃあそこにどんな人を出したいか?となると「イデオロギー(政治主義・主張)が強い人」になります。

-選挙ドットコム 寺崎
語弊を恐れずに言ってしまえば、視聴率が取れる「議論(=喧嘩)が盛り上がる人」というわけですね。

-たかまつ氏
私はイデオロギーという点では中立な立場をかなり意識してきましたが、「伝え方」という点では正直、「話題になるためにあえて演出する」ということもしてきていました。

喧嘩口調で話せばスポットライトが当たりやすいと分かっていたので、「●●さん、それは違うと思いますよ!?」と荒々しく声を挙げておきながら、意外と中立的にまっとうな事を言う、といったことをひな壇の上からひたすらやっていた時期もありました。でもそれでオンエアに乗ったとしても、もっと本質的なことを伝えたいと思うようになりました。それで、少しでもスポンサーありき・視聴率ありきではない番組作りができるNHKを選びました。それに加えて、もっとジャーナリズムを本格的に学びたいという思いもありました。





芸人、社長、Wスクール学生の3足のわらじ。モチベーションの源泉にあるものは「ヘルパーズ・ハイ」



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-選挙ドットコム 寺崎
お笑い芸人と代表取締役社長、そしてWスクールの学生とご自身の夢と目標に向かって常にストイックに努力されている姿が印象的なたかまつさんですが、そのモチベーションはどこから来るのでしょうか?

-たかまつ氏
最近気づいたんですが誰かに「感謝されている」というヘルパーズハイ(人に親切にしたり、いいことをすると、良い気分になること)はモチベーションとしてありますね。

私はプロボノ(社会人が専門知識や技能を生かして参加する、社会貢献活動)が非常に良いなと思っています。例えばエンジニアの人が毎日働いていて、上司に怒られる平日があったとしても土日にNPOのサイトをちょっと修正してあげる、といったことですごい感謝される。そうすると、自分の仕事に誇りを取り戻して「また月曜から頑張ろう」と思えますよね。私の場合で言えば、たまにテレビで滑ったり悲しいことがあったとしても、学校で出張授業をお届けして生徒さんたちの笑顔に触れるとまためげずに「頑張ろう!」と思えたりするんです。ボランティアは人のためでもあるけれども、自分のためにもなるんだなって思います。

-選挙ドットコム 寺崎
その“ハイ“が出てきて強いモチベーションが湧いた時はいいのですが、それを継続してやり続けることはまた別の意味で大変かと思います。その辺りはいかがでしょうか?

-たかまつ氏
笑下村塾を「株式会社」としていることは、「18歳選挙権の流れをブームで終わらせてはいけない」という危機感から来る、私なりの覚悟です。「株式会社」としてやっている以上、事業を継続することの責任が伴います。笑下村塾は主権者教育を行う唯一の株式会社であり、今後も主権者教育を継続していき、全国規模に展開させていきたいと思っています。たまに、「お金儲けのために株式会社にして、主権者教育をやっている」と誤解されることもありますが、ぜんぜんお金になる領域ではありません。

主権者教育は選挙の投票率くらいしか指標がなく成果が見えづらい分野ですし、例えば「こどもの貧困」をテーマに活動すると「ぜひ救いましょう!」と理解されるのに主権者教育は「まぁ大切だとは思うけど…」という薄い反応をされてしまうこともあります。
ですが私は例えば生活保護の人のために給付費用の絶対額を増やしていくことよりも、そういった人たちへの教育と自立をサポートできるような、社会問題に対する関心を持った人材を増やす方がもっと社会は良くなっていくと思うんです。

-選挙ドットコム 寺崎
主権者教育は、もっと長期的な視点に立ったいわゆる「水を与えず、井戸の掘り方を教える」ということに当たる、ということですね。

-たかまつ氏
他には「お笑いという芸の力で政治を変える」というのは今のところは自分にしかできないことだ、という自負もあります。だから、早く自分の実力をもっとあげて世の中に対して影響力を出せるように「自分自身をメディア化」したいと思っています。例えば、ビートたけしさんなら何をやってもニュースになる、みたいなことですね。結局それが、社会問題に対して興味持ってもらうためには一番効果的な方法だと思います。





たかまつななの野望。すべては「お笑いの力で社会問題にもっと注目してもらうために」



(イベントの様子)

(イベントの様子)



-選挙ドットコム 寺崎
最後に、これからのたかまつさんの野望と活動予定について伺いたいのですが、まずはNHKに入ってやりたいことは何でしょうか?

-たかまつ氏
NHKでは、できれば今やっている出張授業のような政治を身近に感じさせるコンテンツを番組化するところから始めたいですね。政治の知識を付けるためというよりも、メディアから流れる政治ニュースの一体「何が問題の本質なのか?」を考えられるようになるのが最も重要だと思っているので、そういう番組を作ってみたいですね。それも、演者さん頼みではなく、誰がやっても分かりやすい番組+演者さんでさらに際立つ、という図式が理想です。

今は業界全般的に「演者さん頼み」な番組が多すぎると思います。だから、属人的ではなくてフォーマットとして魅力的な番組コンテンツを作り上げて「それでも視聴率が取れる」ということを証明してNHK以外のテレビ局にも真似されるようにしていきたいです。簡単ではないということは分かっていますが、サイエンスショーにだって負けない、笑える政治教育ショーをたくさん作って広めたいです。

-選挙ドットコム 寺崎
笑下村塾の方はいかがでしょうか?…といってもそもそもNHK入社後も、笑下村塾は続けられるのでしょうか?

-たかまつ氏
笑下村塾の方については、報酬なしのプロボノという形で続ける予定ですよ!

もっと広い方々へこのショーを知っていただくために、芸人さん100人を講師として育成して、全国のどこでも政治教育ショーの出張授業が同時に数校行われている、というような仕組みを作って学校を回りたいな、と思っています。10年後には100人で回って1年間で200万人くらいに伝えられるようになりたいですね。

あとは修学旅行を対象にして、お笑い芸人による国会議事堂ツアーをやりたいなと思ってます。国会議事堂や最高裁って見学に来てもなかなか面白いと思ってもらえなくて、記憶にも残らないようで、「もったいないな」と思っています。ですので、例えば国会議事堂の見学とあわせて政治教育ショーを芸人がやってみたら生徒さんたちも喜ぶと思うんです。

-選挙ドットコム 寺崎
まさに、芸の力を教育に活かす、といった方向ですね。目標に向かって決してブレることのないたかまつさんの今後が引き続き楽しみです!

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※学生無料!※【1/10 (水)たかまつななの笑える!政治教育ショーin 国会議事堂開催!】
1/10(水)に政治家の皆さま、お笑い芸人100人、小中高・大学生の方に「笑える!政治教育ショー」を開催。
過去の参議院選挙では投票率87%まで上がった学校もある、伝説の授業を公開。
授業では政治家の皆さま、学生さん、お笑い芸人さんの5人一組でグループワークを行い、楽しく政治について考える機会です。詳細はこちら
寺崎 倫代

寺崎 倫代

早稲田大学商学部卒。その後、広告代理店等を経て外資系放送局で勤務。2017年会社を辞め、デンマークの成人向け教育機関・Folkehøjskole(フォルケホイスコーレ)に留学。特に民主主義など同国について学んだことを日本で活かすべく活動中。

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