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圧倒的なスピード感で決断を繰り返すトランプ大統領の「大統領令」ってなにか説明できる?



齋藤 貴
齋藤 貴

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選挙期間中からずっと物議を醸してきたトランプ大統領ですが、大統領になってからも、さらに物議を醸しています。その中心にあるのが、「外国のテロリストのアメリカ入国から、この国を守る」と題した大統領令です。この大統領令は今世界的に問題になっており、各国の首脳がこの大統領令を批判するコメントを発表しています。

他にも「TPPからの永久離脱」「メキシコとの国境に壁を建設する」など、トランプ大統領は昨年10月下旬に発表した就任100日で実現するとしていた公約のほとんどを、大統領就任からわずか2週間で着手したことになります。

歴代の大統領の中でも類を見ないスピード感を持つトランプ大統領。トランプ大統領は自身の権限だけで発効できる「大統領令」を活用していますが、この「大統領令」とは何なのでしょうか?




大統領は法律を作れない


大統領令とは何かを考える前に、通常の立法との違いを考えておきましょう。
まず、大統領は法律を作る権限を持っていません立法するのは連邦議会であり、大統領は立法するように呼び掛けるか、議会が可決したものに拒否権を発動するか、という形でしか関われません。さらに、アメリカの大統領は政党のリーダーではないため、党全体をコントロールできません。例えば日本であれば、総理大臣である安倍晋三氏は自民党の総裁でもあるため、自身の考えを党内に伝えることができます。

また日本では、「党議拘束」と呼ばれるように、法案に対しては党全体で意見を固め、所属している議員全員が党の考えに従うのが一般的です。一方でアメリカではこうした党議拘束が弱く、各議員が自分の考えに従って自由に法案への支持・不支持を打ち出せるため、大統領が望んだ法案を議会に可決させるのはより一層難しいと考えられています。





立法よりも迅速な大統領令と制限


そこで、大統領令が活用さることになります。
大統領令の効力は法律と変わりませんが、議会の可決が必要な法律と異なり大統領のサイン1つで発効するため、必要な政策を迅速に行えるという利点があります。特に、大統領が重視する政策のうち、議会での可決が難しい、または時間がかかってしまう党派的なものについては、大統領令を用いて議会審議を迂回するという手段が用いられます。オバマ前大統領は社会福祉や環境保護という共和党に嫌われる分野で実績を残すことを目指したために、大統領令を用いてそうした政策の実現を図りました。

しかし、大統領令には限界があり、財政出動が必要なもの、つまり予算がかかるものは議会の許可が必要になります。また議会の立法に反するものは大統領令として効力を持たず、他の立法と同様に連邦裁判所の審査を受けます。オバマ政権の時にも、環境保護規制のための大統領令について最高裁判所は効力を一時的に停止させています。






トランプ大統領の大統領令


トランプ大統領のみが活用しているイメージがある大統領令ですが、オバマ前大統領も含め他の大統領たちも活用してきました。1862年のリンカーン大統領による「奴隷解放宣言」から通し番号が振られており、現在までに1万3,000件を超えています。

一方、これまでの大統領と大きく異なるのはその中身です。これまでの大統領が就任早々に出した大統領令は儀礼的なものか、あるいは公約の中で改革姿勢を示す目的のもので、議会との関わりが薄いものでした。例えば、クリントン大統領は選挙において経済成長を強調したこともあり、就任早々に経済政策の意志決定を行う国家経済会議を設立しています。

しかし、トランプ大統領が出した「外国のテロリストのアメリカ入国からこの国を守る」というものはこれまでの大統領令から大きくかけ離れたものです。

第一に、イラクやシリアなどの国々の国籍を有する者の入国を一律に禁じるといった内容は野党民主党を中心に大きな反発を生んでしまいました。大統領就任当初から、大統領令という手段を用いて野党を困惑させるというのは、これまでの就任当初の大統領からすれば極めて異例です。

第二に、今回の大統領令は議会はおろかホワイト・ハウスの中ですら十分な根回しが行われず、バノン上級顧問を中心とした少数のみによって決定されたことです。今回の大統領令では入国管理を主管する国土安全保障省が本来重要な役割を果たすはずですが、大統領令の中身についてほとんど関われなかったことが、CNNのスクープで明らかになりました。

第三に、上記の少数による政策決定と関連することですが、法的な分析が事前になされませんでした。つまり、これまでの法律や憲法に反しないかという分析や、大統領令の運用に関する確認がなされなかったのです。そのため、大統領令が発行したあとになって、実際に運用する空港で騒ぎが起きたり、また、ニューヨーク州の連邦裁判所が大統領の発効を一時停止したりするなど、混乱が広がっているのです。

以上のように、今回の大統領令は大きな問題になっています。野党民主党の反発を当初から生んでしまうことで、今後大統領が民主党と協力しにくくなるのではないかという懸念も生まれました。就任後もトランプ大統領への不安は途絶えることがなさそうです。
齋藤 貴

齋藤 貴

ペンネーム。23歳大学生。大学では政治学を専攻。テレビドラマ『相棒』が大好きです。

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