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投票所を駅やコンビニに作れば未来の投票率は変わる!



原口和徳
原口和徳

Boy voting on democratic election.


今夏の参議院議員選挙では、全国各地で若者の政治参画に向けた取組みが行われました。
はたして、各地の取り組みが実を結び、若者たちは投票に行ったのでしょうか。投票所に着目して考えてみたいと思います。
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なぜ、投票所に注目するのか?


有権者が投票をするためには時間・労力がかかります。それをここでは「投票のコスト」と考えます。投票のコストは大きく2つのものが挙げられます。

1つ目は、投票所に足を運ぶためのコストです。
具体的には、実際に投票所に足を運ぶための時間・労力や、投票に行くかわりにその時間を使って得られたはずのもの(例えばアルバイト代)を断念しなければならないことなどが考えられます。

2つ目は、投票に向けた情報収集のコストです。投票をするためには、誰が自分にとって最も好ましい候補者なのかを知る必要があります。そのため、各候補者や政党の政策や実績、重要な争点や選挙制度に関する情報を集める必要がありますが、丁寧に取り組むほど、その負担は大きくなります。

この投票のコストに影響を与える要因が「投票所の数」「配置場所が投票しやすいか」と考えられる為、投票所に着目しました。
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地方議会議員も取組む! 投票所の増設活動


投票所を増やすことで若者の投票率向上を目指す活動は、地方議会でも取り組まれています。ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟は、参議院議員選挙における投票率向上に向けて、「期日前投票所、当日投票所の設置数を増やすこと」を本会議、委員会審議で取り上げるキャンペーン活動を行っています。
ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟 投票率向上に向けた「一斉質問」をご一緒に!


この活動では、駅や商業施設、大学などに投票所を増やすことについての質問、提言をし、投票者の利便性、最終的には投票率の向上を図ることが目指されています。





ちなみに、投票所の増設って大変なの?


従来、投票日に有権者が投票できる場所は、小学校や公民館などの選挙管理委員会から指定された1か所に限られていました。(期日前投票の場合は、同一市区町村内に期日前投票所が複数設けられた場合はそのどこからでも投票できます)


6月19日に施行された改正公職選挙法により、自治体の判断で投票日に駅や商業施設など利便性の高い場所で投票できる「共通投票所」を設置できるようになりました。しかし、市内に635カ所の投票所がある横浜市において二重投票を防止するための仕組みづくりの設置に半年間、費用が数億円に上る見通しとなったために共通投票所の設置を見送ったことが報道されたことに代表されるように、共通投票所が設置された自治体数は限られており、参議院選挙では4団体にとどまっています。


ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟の取組みでも、統一地方選挙における調査結果から、期日前投票所を増設するために各地の自治体で特別な費用を要したことが報告されています。


費用以外にも、対応する「人員」の確保や設置をする「場所」の確保なども負担として考えられます。このように、投票所を設置することはなかなか大変そうですが、実際のところ投票所の数や配置は投票結果に影響を及ぼしたのでしょうか。





最も投票所が多かったのは北海道。投票率との関係は?


図表①では、投票率の高かった上位10都道府県を対象に、投票率や、投票所数の全国順位等をまとめています。投票所の設置数は、多い方から北海道(2,693)、東京都(1,868)、兵庫県(1,865)、大阪府(1,779)、埼玉県(1,766)となりますが、いずれも投票率のトップ10には入っていないことが分かります。また、投票所への物理的な距離を考慮し、何キロ平方メートル当たりに1つの投票所があるのかについても比べてみましたが、投票率への影響は生じていなさそうです。


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それよりも、投票率の高かった都道府県はいずれも1人区であることや、野党系の候補者が当選している選挙区が多いといった選挙区事情の方が目に付きます。


これらの結果だけを見ると投票率に対して投票所の数は関係ないとの見解も引き出せそうですが、「若者の政治参加」の観点も加えて、もう少し掘り下げてみたいと思います。





10代の投票率が高いところの特徴は?


参議院議員選挙における共通投票所の設置に取り組んだ自治体は4市町村にとどまっていますが、期日前投票所については各地で大学やショッピングセンター、駅構内等への設置が進められています。そこで、期日前投票所を対象として、10代及び全年代の投票率と有権者にとって利便性が高いと考えられる場所(大学やショッピングセンター、駅構内等)への期日前投票所の設置数を比較してみましょう。


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投票率の順位を10位ごとにグループ化し、有権者の利便性が高い場所への期日前投票所の平均設置数を計算すると、10代では投票率が上位のグループ程、利便性が高い場所への期日前投票所の設置数が多いことが見て取れます。一方、全年代の投票率からは同じ傾向は見て取れません。なお、10代の投票率が高かった都道府県(1位~10位のグループ)では、全年代投票率における順位に比べて投票率の順位が改善した都道府県が8団体に上っています。


この結果だけをもって有権者にとって利便性の高い場所に投票所を設置すると、若者の投票率が上昇するなどの因果性のある結論を導くことはできませんが、両者の間には何らかの関係がありそうです。今後、より詳しい検討を行うためにも、利便性の高い場所に期日前投票所を設けた地域での過去の年代別投票結果との比較など、より詳細な情報公開が待たれます。





10代の投票率が高くなった理由は?


利便性の高い場所への投票所の設置が10代の若者の投票参加のために効果的だと仮定した場合、その理由にはどのようなものが考えられるでしょうか。もちろん、投票所に足を運ぶためのコストが下がったというものもありますが、このことはほかの世代に対しても同様の影響を及ぼしている可能性があります。


そこで考えられる1つ目の理由が、利便性の高い場所に投票所が設置されたことで選挙の存在を認識した10代の有権者が増えたことです。投票参加における研究では加齢に伴う社会的経験を通して政治への興味・関心が育まれていくことが明らかにされています。今回、目に付く場所に期日前投票所が設けられたことが社会的経験を積むことと同じ役割を果たし、若者が政治を意識することができた可能性が考えられます。


2つ目の理由は、期日前投票所の設置を進めた団体の存在です。大学などの利便性が高い場所への期日前投票所の設置には、大学生やその関係者、選挙管理委員会、地方議会議員など、様々な主体が関わっています。これらの団体が他にも様々な活動を行った結果として、若者の投票参加に結びついた可能性も考えられます。確かに、大学構内で友人に投票を呼びかけられたりしたら、投票をしやすくなりそうです。


これらの理由に共通しているのは、若者と政治の接点が増加したことです。このことをポイントとして考えると、他にも学校内で模擬選挙や公開討論会を開くことなども効果的な手段として考えられそうです。特に、公開討論会は、投票のための「情報収集のコスト」についても貢献することができます。


今回取り上げた投票所の増設は特別な費用を要する一方で、若者の政治参加に貢献する可能性があることも示されました。もし、若者のような特定の世代だけが政治に参加しにくくなってしまう制度的な要因が存在するならば、その不公平は取り除かれていくことが望まれます。今夏の取組みを振り返ることで、それぞれの取組みの効果や要する費用について比較、検討をすることができるようになります。


今後、各地の取組みからノウハウが抽出され、投票所の増設も含んだ多様なメニューの中から地域にあった活動が選ばれ、展開されていくことが期待されます。


原口和徳

原口和徳 : 埼玉ローカル・マニフェスト推進ネットワーク事務局

1982年埼玉県熊谷市出身。中央大学大学院公共政策研究科修了。早稲田大学マニフェスト研究所 議会改革調査部会スタッフとして、全国の議会改革の動向調査などを経験したのち、現所属にて市民の立場からのマニフェストの活用、主権者教育などの活動を行っている。

Webサイト : http://blog.canpan.info/slm/

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