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結局EU離脱しないのかよ!?  イギリス政治の迷走が民進党に似ている

2016/10/13

齋藤 貴

齋藤 貴

日本では年明けに衆議院が解散される噂が飛び交い、海外を見るとアメリカ大統領選挙が話題になっていたり、と忘れがちですが、今年最大の出来事の1つは、6月23日にイギリスで行われたEU離脱に関する国民投票でした。

そんなイギリスですが、国民投票でEU離脱を決定した後の政治が迷走が止まりません。6年間首相を務めた保守党デイヴィッド・キャメロン氏が首相を辞任し、同じく保守党テリーザ・メイが首相に就任しました。
しかし、EU離脱を決定したものの、メイ政権はEU離脱に踏み切る訳ではなく、EUと交渉を続けています。EU離脱、あるいはEU離脱後の経済について不透明な部分が多く、イギリスに拠点を設ける外国企業が撤退する見込みが一部で伝えられています。

このような混乱の元では、保守党政権への不信感が増しそうですが、現時点ではメイ政権は広く国民から支持されています。最近の調査では、「次回の総選挙ではメイ保守党が勝つだろう」と65%もの人々が考えているとの結果が出ています。とりわけ、労働者層を意識した庶民的な政策とEU離脱の交渉に代表される危機管理能力が広く支持される要因であると伝えられています。
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一方で、最大野党労働党は全く振るいません。上述の調査では、16%の人々しか労働党が選挙で勝つとは考えていません。EU離脱決定というイギリス史上最大の危機と言ってもいいタイミングで、政権交代に向けたアピールに失敗していると言って良いでしょう。
そんな振るわない労働党の党首がジェレミー・コービン氏です。政権交代の目処が立たない中、コービン氏の党運営に批判の声が出てもいいものですが、9月24日に行われた党首選では、再びコービン氏が圧勝して再選を決めました。

どうして、コービン氏が再選したのでしょうか。また労働党とイギリスは今後どうなるのでしょうか。今回の記事では、この点について考えたいと思います。
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「コービンが党首になったら労働党は消滅する」

コービン氏は、「民主社会主義者」を自称する67歳です。昨年選挙で圧勝し労働党の党首に就任しました。政策的には、鉄道会社の再国有化、非核化、大学の授業料無償化などイギリスの政治家全体で見てもかなりリベラルです。今年のアメリカ大統領選民主党予備選挙で躍進した、バーニー・サンダース氏のイギリス版と考えると分かりやすいかもしれません。

コービン氏は労働党議員の中では評判は良くありません。というのも、労働党の国会議員の多くは元首相のトニー・ブレア氏が党首を務めていた時代に議員に当選したためです。ブレア氏は、労働党の福祉削減を進め経済成長を重視する改革運動「ニュー・レイバー」を進めていました。。しかし、コービン氏は福祉拡大や大企業への規制強化を主張しており、労働党国会議員の考え方とは真逆です。そのため、現在の労働党国会議員からは人気がないのです。特に、ブレア氏は昨年「コービンが党首になったら労働党は消滅する」とまで言って物議を醸しました。今年の6月には労働党国会議員の4分の3の賛成で不信任が可決するなど、その対立は明らかでした。

一方で、コービン氏は労働党の一般党員(政治家ではなく一般の党員)からは人気があります。福祉削減を主張するニュー・レイバーを労働党の存在意義を否定するものだという批判が根強く存在します。そのムードの結果が先日の代表選でした。

 

 

コービン氏に有利な党首選と停滞の続く労働党

労働党の代表選は1人1票制で行われます。議員や一般の党員35万人のほか、25ポンドを払って投票権を得た登録サポーター13万人、労働組合員など関連機関の17万人の票で争われます。そのため、党首選に与える議員の影響力が小さく、また労働組合など福祉を重視するグループの影響力が強いのが特徴です。つまり、今回の党首選の結果は、福祉政策を重視するコービン氏が同じく福祉政策を重視する一般党員や労働組合の支持を得た結果圧勝したというわけです。

今回コービン氏が圧勝しましたが、それは労働党の躍進を意味しません。冒頭の調査の通り、現在は保守党のメイ政権が支持率において圧勝しています。そして、コービン氏は残念ながら労働党の支持率を高めるプランを持っているわけではありません。このように一般の有権者から支持されていないという状況では、メイ政権の暴走を止められないのではないでしょうか。

そうした懸念を、労働党議員や一部の支持者が指摘しています。それは、日本の民進党が置かれた状況と極めて類似しています。代表選で世論を盛り上げられず、蓮舫新代表は二重国籍「問題」でキズがついてしまいました。強い人気を誇る安倍政権とどう戦うかについても活路が見いだせていません。イギリス労働党もそうした状況にあるのです。

また、今回の党首選の結果によって、党内の亀裂が深刻化することが懸念されています。コービン氏を批判するグループからは、労働党全国党組織を統括する全国執行委員会を舞台にコービン氏の政策を修正しようとする動きが生まれています。
一方、コービン氏を支持するグループは、コービン氏に批判的な国会議員の再選を妨げようと画策しています。そのため、コービン氏はまず地方選挙で勝ち続けなければいけません。もし負ければ、再びニュー・レイバーを支持するグループからコービン下ろしが始まるでしょう。その時には、「コービンでは勝てない」として、一般の党員にもコービン批判が受け入れられてしまうかもしれません。

いずれにせよ次の国会議員の選挙は2020年。それまでにコービン氏が党内をまとめられるのでしょうか。あるいは、まとめられずに混乱が拡大するのでしょうか。世界最大のリベラル政党の真価が問われています。

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齋藤 貴

齋藤 貴

ペンネーム。23歳大学生。大学では政治学を専攻。テレビドラマ『相棒』が大好きです。

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