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選挙に出馬するには世界最高額の費用がかかる日本。その制度が変わるかも?



兼子 草平
兼子 草平

東京地方裁判所前にて、原告団と傍聴希望者が集う

東京地方裁判所前にて、原告団と傍聴希望者が集う



供託金と言えば、選挙に出るためのエントリー料のようなものです。例えば、都知事選挙や衆議院選挙、参議院選挙であれば300万円が必要になります。投票の結果、ある程度の票が自分に入っていれば、その300万円は返ってきますが、そうでなければ300万円は戻ってきません。
例えば、今回の7月の都知事選では21名が立候補しましたが、その内、小池百合子氏・増田寛也氏・鳥越俊太郎氏の3人しか供託金は返ってきていません。18名×300万円=5,400万円が没収されています。

元は、「売名行為で出る人を排除するため」に設けられた供託金ですが、21名も立候補しており、もはやこの意図を果たしていません。さらに、格差が進む現在の日本において、貧困の現状を伝えたい候補は300万円もの金額を払えず、立候補することができません。

そこで、この供託金を引き下げようとする裁判が9月16日に行われました。
原告は埼玉県の学習塾経営者で、彼は2014年の衆議院選挙に立候補しようとしたものの、供託金300万円を支払えず、出馬できませんでした。憤りを感じて国を訴えようとしていたところ、今回の都知事選でもギリギリまで名前が上がっていた弁護士、宇都宮健児氏から弁護の申し出があり、今年5月に提訴しました。
そして9月16日に、東京地方裁判所第611号法廷にて、第一回口頭弁論が行われました。裁判の後には報告会が開かれ、集まった人たちと意見交換も行われました。

原告団長の宇都宮健児弁護士

原告団代表の宇都宮健児弁護士



 

 

世界と日本の供託金比較


日本の300万円(衆議院選小選挙区の場合)という供託金は、世界一高いと原告団より指摘されましたが、世界的に見てどうなのでしょう?
まず、世界で初めて供託金が導入されたイギリスでは、たったの約8万円。物価などの影響もありますので、1人当たりGDPとの比較で見てみましょう。イギリスの1人あたりGDPは約375万円で、供託金8万円はたった2.1%。オランダでは1政党あたり約150万円で、1人当たりGDP(約489万円)の30%です。
ヨーロッパ圏と比べると、アジア圏では比較的高額になる傾向がありますが、おおむね数十万円です。トルコでは返還されない上、約40万円とやや高めですが、それでも一人当たりGDP約193万円に対し20.1%で、さらに、政府公認政党は免除されます。
お隣、韓国では約135万円1人当たりGDP約385万円の35%です。
日本の供託金300万円は、1人当たりGDP約369万円の81.3%にもなります。
(1人当たりGDPは2014年、1ドル102円で計算)

裁判で原告団はG7参加国のうち、供託金制度があるのはイギリスとカナダ(約10万円)だけであり、やはり日本が際立って高額であると指摘しました。
ちなみに、韓国では高額な供託金に違憲判決が出ているとのことです。

 

 

そもそも、高すぎる供託金はどのように違憲なのか?何が問題か?


日本における供託金は、1925年の普通選挙法から導入され、それまでの納税額に応じ被選挙権が与えられていたものが変化したものでした。しかし、当時の供託金は公務員初年俸の2倍に当たる2000円と高額でした。これは貧しい人々の声を代弁する無産政党の台頭を防ぐ目的だったと言われています。

日本国憲法下においても、供託金は高い水準を維持し今日に至ります。これは立候補の自由を保障する憲法15条1項や財産・収入で差別することを禁じる憲法44条に違反しているといわれ、すでに今回のような裁判も起こされています。
一方、憲法47条で「選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める」とあります。それに基づき候補者の乱立や売名行為を防ぐため、高額の供託金が公選法で定められており、これを根拠に合憲と判決が出ています。

しかし、衆議院小選挙区と同額の供託金が定められている今年の東京都知事選にて、21名も立候補した現状から見ても、候補者乱立に歯止めがかかっているとは言えず、さらに、増加するワーキング・プア層など貧しい人の政治参加へ遠ざけ、企業や大資本がバックにいないと立候補がままならず、世襲議員の増加につながっているのではないかと、原告団は違憲性の高さを指摘しました。

ちなみに、供託金制度のない国では、代わりに推薦人制度というものがあります。実は、日本でもこの制度の導入への働きかけがあります。
没収された供託金は、選挙管理委員会ではなく国の雑収入になるといい、その使途の不透明さも報告会で指摘されました。例えば、7月の都議会選挙の供託金18名×300万円=5,400万円は、国の雑収入となり、東京都のために使われてはいません。

 

 

裁判の模様、今後の展望


借金をしながらも、今年の東京都知事選挙に出馬した高橋尚吾氏「できる限りお手伝いしたい」

借金をしながらも、今年の東京都知事選挙に出馬した高橋尚吾氏「できる限り協力したい」 報告会にて



42席の法廷には満員の傍聴者が詰めかけ、その中には今年の東京都知事選挙に出馬した高橋尚吾氏の姿もありました。
今後は一橋大学・只野教授の協力や、OECD加盟諸国の大使館へ供託金制度についてアンケート調査を行い、次回に臨むとのことです。

 

 

供託金300万円の壁で、若者や才能が潰されている


原告の男性は、法廷で「供託金300万円で政治への声や才能が潰されている」と訴えました。
宇都宮弁護士は報告会で「傍聴席が満席になってよかった、市民の関心が集まっていることを裁判長に伝えることができた」と期待を語りました。今後も進捗があれば、選挙ドットコムでも取り上げていきます。

報告する原告団

報告する原告団


兼子 草平

兼子 草平

一応フリージャーナリスト・ライターを自称しております。 政治・選挙の分野は増山れな氏の参院選出馬にともない、強い興味を得ました。 書くよりも撮るのが得意らしい不器用者です。

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