選挙ドットコム

14,875選挙・285,139の候補者情報、日本最大級の選挙・政治家情報サイト

炎上加害者は子持ちの男性エリート。「ネット炎上の研究」から読み解く炎上の深い闇



若林良
若林良

20160911

いまの若い世代で、「炎上」という言葉に聞き覚えのない人はもはやほとんどいないでしょう。ここ10年ほどで広まった言葉ではありますが、意味としては何かの不祥事をきっかけに、特定の発言や行動が、爆発的に注目を集めるようになることを指します。Twitterや2ちゃんねるなどで、差別的な発言、明らかな法律違反、特定の人物に対する誹謗中傷などが、あっという間にインターネット上で広まり、本来軽い気持ちでの発言が、その人にとって取り返しのつかない事態になることは、現在決して少なくはありません。

これはネット上での発言に慎重になるという、リテラシーの向上としてはいい面もありますが、鬼の首をとったように、ひとつの発言に対してねちねちと批判を続ける人間が多いことも同時に示しています。

 

 

初となる「ネット炎上」の専門書


たとえば、タレントの春名風花さん(通称:はるかぜちゃん)が声優・大塚周夫氏が亡くなった際、自身のtwitter上で「去年会ったばかりなのに…」とつぶやいたところ炎上し、自身のアカウントを一時的に停止した、という事件が一例として挙げられます。
これは春名さんが同じく声優である息子・大塚明夫氏のことと勘違いしていたことが原因で、「声優志望なのにそんなことも知らないなんて」「他人に失礼だ」と批判が続きました。春風さんは逐次謝罪を行いましたが、やがて「声優の名前に詳しくない人は、お芝居が好きで、何かを演じてみたいって思ってはいけませんか?」と発言し、さらに批判をあびてしまいます。
この結果一時的とはいえ、春風さんはtwitterのアカウントを停止することにもなりました。実生活であれば、おそらく当事者である明夫氏に一度謝ればそれですむ話。
しかし、ネットにおける「炎上」は一回の謝罪ではすまず、顔の見えない「第三者」がえんえんと攻撃を続けます。それでは、誰が炎上を起こし、そしてインターネットユーザーのなかで、その割合はどれくらいなのか?ソーシャルメディアの特色や情報発信力の問題も含め、多角的な観点から「炎上」に迫るのが、本著『ネット炎上の研究』です。

 

 

SNSが普及した結果、炎上しやすくなった


まず「炎上」のそもそもの発生件数ですが、2006年から2010年までは41件から98件と、緩やかな上昇であったのですが、2011年には333件と爆発的に上昇します。
この原因については本著では詳細に触れられていませんが、恐らくはtwitterを中心とした、SNSの急速な普及が挙げられるでしょう。当時大学生であった私の実感としても、ちょうどそのころを境にして、twitterやfacebookなどが周りに広まっていっていました。facebookは実名登録が原則であるため、迂闊なつぶやきはあまりできませんが、twitterや2ちゃんねるは匿名であるため、ネット上の発言に対して、良くも悪くも「責任を負わなくていい」という特性があります。あらたなツールが現れれば、あらたな扱い方の発生・定着もまた自然なことで、いわば「炎上」が生まれたことは、歴史的な必然であるとも言えるかもしれません。

 

 

炎上させているのは、わずか0.5%


では、その「炎上」に加担している人間はどのくらいいるのか?
結論から言えば、インターネットユーザーの0.5%程度です。人数でいえば2000人。さらには、そのうち大半はひとりでつぶやくだけであって、直接当事者を攻撃、前述のようなアカウント閉鎖に追い込むユーザーはせいぜい数十人です。著者は炎上について、「ネット社会に不可避の悪であり、受け入れるしかないという見解がある」と述べる一方で、自分自身の立場としては、「炎上参加者が数%といったようにごく一部であるなら、炎上の抑止対策をとることに意味が出てくる」と力強く言います。そのためには、具体的に炎上に参加している人間像を知る必要がありますが、具体的にはどのような人が、炎上の当事者となっているのでしょうか?
本著では具体的なデータに基づき、炎上参加者について統計的な分析を加えていきます。これまでの「炎上」について扱った書籍は、いずれも事例研究や社会学的な理論考察に留まっており、本著はその点で「一歩踏み込む」分析を行っています。そこで浮かび上がる中心的な人物像は、年収が高く、ラジオやソーシャルメディアをよく利用する、若い子持ちの男性というものでした。意外なことに、結婚の有無、学歴、インターネット利用時間などは結果にあまり関係がなく、“知的水準が低く、働いていない独身男性”というような、一般的な「2ちゃんねらー」のイメージとはだいぶ異なる結果となったのです。

 

 

必要以上に心配する必要はない


これは裏を返せば、炎上に加担する人物は「堕落した元からダメなやつ」というよりも、いっぽ間違えれば自分たちもそうなる可能性がある、ということ。それだけに、その対策が求められると、筆者は強く主張します。そのために筆者が具体策として提示するのは、サロン型SNSの開発や、炎上に対する法律規制の強化、また高校などでの炎上リテラシーの教育などです。これだけだとありきたりなようですが、その詳細な案についても著者は鋭く言及し、それだけこの問題に対する熱意の深さが読み取れます。

全体的に見れば少数派の「炎上参加者」。しかしだからこそ、政治家、教育者、そして私たち一人ひとりが当事者意識を持って、「炎上」に向き合う必要性がある。『ネット炎上の研究』は、私たちにそうしたことを問いかけてくれる一冊です。
ネット炎上の研究  勁草書房  田中 辰雄・山口 真一 2016
 
【お知らせ】選挙ドットコムのサロンでは、選挙や政治の裏側・政治家の本音・分かりやすい時事ネタの解説など、ざっくばらんにお伝えしています。
»オンラインサロンの詳細はこちら「政治・選挙のぶっちゃけサロン 」

item_salon-banner_senkyocom--ptn02_topphoto
若林良

若林良

1990年神奈川県生まれ。映画批評・現代日本文学批評。 ドキュメンタリーマガジン「neoneo」編集委員。雑誌『週刊朝日』『NOBODY』『映画芸術』、映画サイト『IndieTokyo』(http://indietokyo.com/)などに執筆。専門は太平洋戦争を題材とした日本映画、またジャンルを問わず「社会派」作品全般。

記事一覧を見る

  • Facebook
  • Twitter
  • Google

選挙ドットコムでは”選挙をオモシロク”を合言葉に、より多くの選挙報道・政治家情報を集めています。あなたも選挙ドットコムのサポーターになって協力してくれませんか?

Copyright © 2016 選挙ドットコム All Rights Reserved.