選挙ドットコム

14,875選挙・285,139の候補者情報、日本最大級の選挙・政治家情報サイト

19歳には邪魔が入った!?なぜ19歳の投票率は18歳より低かったのか?



古野 香織
古野 香織

なぜ19歳の投票率は18歳よりも低いのか?


2016年7月10日に行われた参議院選挙は、日本の歴史上はじめて18歳以上が投票できる国政選挙ということもあり、10代の若者の投票率が注目されました。結果、18歳は51.17%、19歳は39.66%で、18歳と19歳を合わせた投票率は45.45%。参議院選挙における20代の投票率は平成4年以降40%に届いたことがなかった事を考えても、この投票率は比較的高いといえるでしょう。


ただ、今回注目していただきたいのは18歳と19歳の投票率11ポイントもの差。実はこの差にこそ、これからの若者の投票行動を左右しかねない重要な課題が隠れています。ズバリ「住民票」の問題です。
【関連】投票率向上の“ネック”と言われた、超めんどくさい「不在者投票」が変わる  >>

20160908

 

 

地元の成人式に出るため、めんどうだから・・・ 住民票を移さないのが普通に


住民票とは、住民ひとりひとりの氏名・住所等を記録した帳票で、各市区町村ごとに住民基本台帳にまとめられています。住民は原則、この住民票に登録されている住所地のみで選挙権を行使することができます。
この住民票は、「引っ越してから14日以内に届け出をしなくてはならない」という規定があります。また公職選挙法では、住んでいる自治体に住民票を移していないとその自治体の選挙で投票することができないというルールが定められています。

しかし実際は、高校を卒業し親元を離れて上京した学生の多くが、住民票を移していない現状があります。
明るい選挙推進協会が2015年6月に行った調査では、全国の一人暮らしの大学生のうち住民票を移していないのは63.3%。また私が所属している選挙啓発サークルVote at Chuo!!が今年7月に中大生1000名を対象に行った調査でも、76%の一人暮らしの学生が住民票を移していないことがわかりました。

さらに衝撃的なのは、同調査で住民票を移していない学生のうち、なんと64%(292人中187人)が投票を棄権していたという事実です。また中大生が今回の投票を棄権した理由のなかで圧倒的に多かったのも、「住民票を移していなかったから」という回答でした。
このように多くの大学生が住民票を移していない理由として、

・成人式に出られない懸念がある
・そもそも住民票を移さなければいけないことを知らない
・手続きが面倒
などが挙げられます。

 

 

もし日本全国の一人暮らしの学生が、全員住民票を移したら、選挙結果が変わる


ただこのような現状があっても、現行の制度下では、学生が現住所地に住民票を移すことが原則です。それではもし、日本全国の一人暮らしの学生が全員住民票を移すとどうなるのでしょうか。
例えば、私の通うキャンパスがある八王子市は“全国有数の学園都市”と謳っており、市内には21もの大学があり、そこへ通っている学生数も10万人以上にのぼります。ここで一人暮らしをしている学生を全体の約4割と仮定し(日本学生支援機構【平成26年度学生生活調査】参考)、さらに仮にその全員が住民票を現在の居住地に移したとすると、約4万人の新たな八王子市民が生まれることになります。これが何を意味するかわかるでしょうか。
今年1月に行われた八王子市長選挙では、当時現職の石森孝志氏が93641票、いがらし仁氏が51811票を獲得し、結果石森氏が当選。この票差は約4万票です。また昨年4月の八王子市議会議員選挙では、2847票で当選している市議会議員がいます。つまり学生だけの投票で、十分に選挙結果を動かしうるほどの影響力を持つということです。
この現象は、すでに国内で起こっています。北海道の長万部町という町には全寮制の東京理科大学の基幹工学部キャンパスがあり、そこに住む学生は全員住民票を移すことになっているそう。このような理由で、長万部町の総人口のうち理科大生だけで6%を占めており、町長選挙や町議会議員選挙の結果をひっくり返したり、新たな議員を当選させることができるほどの力を持っています。
また政治的影響力だけではなく、特に人口規模の小さな自治体では、若年層の人口流出や税収の減少などを懸念する声もあるようです。

 

 

18歳選挙権と住民票はセットで検討すべき


このように複雑に問題が絡み合い、なかなか一筋縄ではいかないのが住民票問題の難しいところです。ただやはり大切なのは、国としてこの「住民票」における課題を認識したうえではっきりと姿勢を示し、対応を考えるべきだということです。
60年前の最高裁判決や、現行の住民基本台帳法制度にのっとり、「大学生は現在の居住地に住民票を移さなければならない」というこれまで通りの見解で進めていくのであれば、6割~7割の大学生が住民票を移していないという状況を考えても、一定程度の拘束力が必要であると感じます。今年、各地の大学で総務省が発行した住民票移行を促すチラシを新入生へ配布したようですが、1年前と同様に一人暮らしの学生のうち7割以上が住民票を移していないという学内の結果を見ても(Vote at Chuo!!1000人アンケート参照)、啓発のみでどれほど効果があったのかは正直疑問です。他にも「成人式の案内が届かないのでは」と不安を感じている学生に対しての対応や、住民票移行に反対する各家庭への対応なども合わせて必要になると考えます。



逆に、「短期間のみ親元を離れている大学生は住民票を親元に置いていてもいい(現状を踏まえ法改正)」という方針に切り替えるのであれば、不在者投票の簡易化や不在者投票受付場所を増やすなどの工夫が必要です。また現在は病院や介護施設のみにある「不在者投票指定施設」(都道府県選挙管理委員会が指定した施設内にいる選挙人が、その施設内で不在者投票を行うことができる制度)に大学や専門学校、短期大学などを追加するという方法も、住民票を移していない学生の投票を促す一つの手段になるのではないでしょうか。

今回の参議院選挙では住民票を現居住地に移していなかった新有権者に対して、一票を捨ててしまうくらいなら……と不在者投票を勧める選挙管理委員会がある一方で、生活の実態が無いからと窓口で不在者投票を拒否したり、選挙人名簿に登録しなかった選挙管理員委員会もありました。選挙権を行使できるかどうかが、各自治体の判断の違いによって変わるというのは問題です。住民基本台帳法22条と民法22条には、生活の本拠地となる住所地で住民登録を行うことと定められています。この「生活の本拠地」を住民票のある自治体とするのか生活実態のある自治体とするのかで解釈が分かれているため、グレーゾーンな対応となってしまう現状があります。今回の18歳選挙権実現によって浮き彫りとなった「住民票と選挙」の問題。選挙が終わった後だからこそ、この課題の解決策を探っていくことが大切なのではないでしょうか。
 
【お知らせ】選挙ドットコムのサロンでは、選挙や政治の裏側・政治家の本音・分かりやすい時事ネタの解説など、ざっくばらんにお伝えしています。
»オンラインサロンの詳細はこちら「政治・選挙のぶっちゃけサロン 」

item_salon-banner_senkyocom--ptn02_topphoto

7月2日投票!東京都議会議員選挙の候補者を網羅した特設サイト公開中!


東京都議会議員選挙

古野 香織

古野 香織

選挙ドットコム インターン。中央大学法学部政治学科に在学中。20歳。大学2年生の時に選挙啓発サークルVote at Chuo!!を立ち上げ、現在メンバーと一緒に「中央大学を日本一選挙がアツい大学にする」という目標を掲げて奮闘。これまでには付属高校での主権者教育授業や、大学ミスコンとコラボして選挙啓発を行うなど、大学生だからこそできる独自の企画を実施。若者の投票行動や選挙制度、シティズンシップ教育などを広く勉強中。

記事一覧を見る

選挙ドットコムでは”選挙をオモシロク”を合言葉に、より多くの選挙報道・政治家情報を集めています。あなたも選挙ドットコムのサポーターになって協力してくれませんか?

Copyright © 2016 選挙ドットコム All Rights Reserved.