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無利子奨学金は18歳選挙権で変わったんだ!選挙で世の中動かせるんだ!



古井 康介
古井 康介

紙ひこうき

拝啓、すべての先生へ。


8月が終わり、秋が始まりました。中学校や高校では2学期が始まり運動会や文化祭に向けて授業が始まります。同時に、夏休み前に盛り上がっていた「18歳選挙権」や「主権者教育」はなりを潜めました。筆者は全国の中高で主権者教育に関する出前授業をさせていただいている学生団体NPO法人のメンバーなのですが、89月は授業のご依頼もピタッと止み、気ままに東北地方をローカル線で回りながらこの記事を書いております。
さて、そんな「ブームが去った」主権者教育、18歳選挙権ですが、いわずもがなこれからも18歳が投票をするという事実は変わらず続き、そのための教育も継続して必要になってきます。そこで今回は先の18歳の有権者たちが社会に与えたインパクトについて一度おさらいしてみたいと思います。地方での選挙や補欠選挙を含めると、選挙は年がら年中続きます。2学期の始まりに際し、今学期も主権者教育に取り組んでいただける先生方が一人でも増えることを目論み願い、筆を執ります。


 

 

18歳選挙に関するおさらい―18歳の投票率はとても高い


さて、ではまず先の参院選について基本的な情報をまとめていきましょう。
18歳の投票率は全国平均で51.17%。全体の投票率が54%でしたから、特段低いということはなさそうです。では、この18歳の投票率を都道府県別でみてみましょう。東京(60.53%)、神奈川(64.88%)、京都(62.40%)、富山(60.58%)、群馬(62.7%)と5つの都府県では60%を超える投票率となりました。富山県や群馬県はそれぞれ、高校生向けの様々な取り組みをしていたようです。若者向けの施策に力を入れる東京都世田谷区では7割の投票率を超えたことから、主権者教育が投票率に与える効果はある程度保障されたと考えてよさそうです。

 

 

文部科学省が、無利子の奨学金を希望者全員に


さて、そんな18歳のみなさまの投票により政府はある大きな転換的な政策を打ち出しました。それは10年以上放置され続けた社会課題を解決する政策であり、約140万人が恩恵を受ける政策。10年と言えばWiiが発売され、ハンカチ王子が茶の間を風靡し、ケータイ小説「恋空」が発売され、映画「フラガール」が日本アカデミー賞最優秀上を受賞した年であり… 140万人と言えば沖縄県や川崎市の人口と同等、そして「フラガール」の舞台として震災後も驚異の主客力を誇る福島のリゾート地「スパリゾートハワイアンズ」の年間の集客数!かなり昔からたくさんの人が困っていたんですね。

ではその政策とは何か―「無利子の奨学金制度」の創設です。無利子の奨学金とは、大学に進学するときにかかる学費を、無利子で国から借りることができる制度です。日本は世界的にもお金を持っている国で、衣食住に困るひとはあまり多くはありませんが、大学に行くほどのお金を用意できない家庭は多く存在します。実際現段階で奨学金受給率は5割を超え、その背景には収入減に拠る仕送り額の減少などがあることを厚生労働省は発表しています。たしかに日本人の平均年収は409万円、それに対し大学の学費は国立大で54万、私立大文系でおよそ100万、理系ではおよそ200万円となっています。医学系はさらに高く4~500万円必要です。1年間の養育費はおよそ48万円であることを考えると、大学に行くだけで子供が1人~最大で10人増えるようなもの。そこを保証してもらえないとなるほど子供をたくさん産むこともはばかられるかもしれませんね。

さて、そんな無利子奨学金は10年以上前から必要とされていましたがなかなか実現していませんでした。それは、その政策を実現したところで政治家にとってメリットがなかったからです。最も選挙に行くのは60代と、政治家にとって「票」になるのは圧倒的に高齢者です。高齢者の投票により当選した政治家が、高齢者向けの政策を行い次も投票してもらえるように計らうというは良し悪しの議論は別に、非常に合理的な判断でしょう。

しかし先の参院選で18歳選挙権が導入されることで、その空気はほんの少し変わりました。新たに増える242万人の若者票を取り込むべく、政治家はこぞって若者向けの政策を提唱し始めます。若者との意見交換イベントを開き、マニフェストにもこの奨学金に関する政策を書きたてました。そして選挙が終わり、ふたを開けてみれば18歳は投票に行きました。政治家に対し、若者が「票」になることを18歳はメッセージとして贈ることに成功したのです。その結果、各党がこぞってマニフェストに書き記した奨学金問題は実現に向けて加速し、ついに文科省が希望者全員に奨学金を無利子で貸与する方針を固めるに至りました。

 

まだまだ予算の壁は高い


今回の政策では、希望者は成績要件と家庭の収入要件を満たせば「希望者は誰でも」奨学金をうけとることができるとされています。しかし、低所得の家庭では塾に行けなかったり、家計を支えるためにアルバイトの必要があったりと十分な勉強時間を確保できないことも。そのような状況も鑑み、さらに所得が低い家庭の場合成績要件は適用されないといいます。これならば、学びたい若者がお金を理由に進学をあきらめることはかなり少なくなるでしょう。今すぐにでも実施してほしいものです。
しかし、まだ十分な施策とは言えません。あくまで借りたお金は返さなくてはならず、現代のように雇用が流動化し、将来の社会が不透明な時代ではどうしても「借金」を抱えることに二の足を踏んでしまうのも納得がいきます。多くの先進国が導入しており、参院選でも各党が実現に意欲を見せた「給付型奨学金」…いわゆる「もらえる」奨学金の創設が一刻も早く求められているのではないでしょうか。

 

 

投票に行ったという事実が社会を変えることもある


多くの若者は言います。選挙に行っても何も変わらないじゃないか、と。それは何万票を巡って組織の利害とお金が渦巻く選挙の現実から見ても、否定できない事実であり、若者はその意味で「賢く」とても「合理的」です。投票に行くのは、近くのコンビニに行くことさえめんどくさいと感じ、Amazonで買い物を済ませる若者にとっては、とってもハードルが高いもの。しかし、投票に行けば政治家が相手にしてくれるようになります。そうすることで自分たちの暮らしやすい社会に一歩ずつ近づくことができるのです。現実、若者の中でも最も投票率が高かった18歳―これから大学受験を考えている年代向けの政策として今回の無利子の奨学金が、まずは最初に実現したではないですか。

選挙管理委員会などが行う選挙啓発活動は、やれ闇雲に選挙は大切なことだから投票に行けと説法します。しかしそれは、大事なことだから校則は守れ。靴下は白だ、上は眉の上だ!社会に出たらルールがあるんだからとにかくそれを守るのが大事なんだ!と暴論を吐くのとまったく同じことです。意味不明です。若者は、中高生といえども、それが普段勉強をあまり好まない、テストの点数が低い彼ら彼女らも、大人が思う以上に合理的です。そんな僕らを納得させる、合理的な説明が、先の参院選と今回の文科省の発表で可能になったのです。どうか、先生方は、教育現場でこの事実を、できるだけ平易な言葉で語っていただきたいです。誰しもが経済的な理由をもって進学の夢をあきらめないで良い社会が、123万人の投票に行った18歳によって実現された。「君たちの一票は、日本を変える」んだ、と。
古井 康介

古井 康介

選挙ドットコム インターン。 1995年富山県生まれ。慶應義塾大学経済学部在学中。専攻は社会政策、新しい公共、安全保障・外交政策。 NPO法人「僕らの一歩が日本を変える。」ディレクターとして、全国で「票育授業」のプロデュースやハード面の設計から、当日の司会進行までを担当。

Twitter : https://twitter.com/KOSUKEFURUI

Webサイト : https://boku1.org

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