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東京を絶望都市と呼び、100万円以上も借金してまで都民に訴えたかった選挙秘話



宮原ジェフリー
宮原ジェフリー

7月末に行われた東京都知事選挙に出馬し、無名・無所属の新人ながら市長経験者や大臣経験者を上回る票を獲得した候補者がいます。
それは、高橋尚吾氏。都知事選と言えば、マスコミで大きく取り上げられる政党公認・推薦の候補以外は、マック赤坂氏に代表されるように「キャラが強い」人ばかり。そんな中、高橋尚吾氏は実直な外見で、主張している内容も奇抜に飛んでいない現実的なものでした。選挙戦が後半になるにつれて支持が広がり、最終的には16,664票を集めました。

そんな高橋尚吾氏は、実はお金が足りず借金をして出馬していたことでも話題になりました。その背景にはどんな思いがあったのでしょうか?

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(来月の家賃も厳しい状態だという高橋氏)



 

残高35万円。選挙資金が足りず、借金


―まず聞きたいのが、選挙戦の資金です。選挙には、エントリー料の「供託金」も300万円もかかりますし、チラシやタスクなど宣伝のためにもお金がかかります。どう準備されたのですか?

―高橋氏:実は、告示の数日前まで手元に35万円しかありませんでした。その状態で出馬を表明してしまい…「お金もないのに出馬するなんて」といった批判を多く受けました。しかし、「話を聞いてみたい」という一本の電話がかかってきて会いに行った方に金銭的に支援してもらえることになりました。それでも300万円にはまだ120万円も足りませんでした。
最後は、携帯電話に残っていた遠い親戚に、ダメ元で支援をお願いしたら快諾してくれたのです。それが告示の二日前のことです。

―ハラハラする展開ですね(笑)

―高橋氏:「絶対に間に合うんだ」って信じて疑っていなかったのと、「命をかけてでも都知事として打って出て多くの人を救わなければならない」という使命感に支配されていましたね。

―今回の都知事選の立候補に行き着くまでに、どのような経歴を歩んでこられたのでしょうか?

―高橋氏:出身は福島県で、その後引っ越して一番長く住んだのは埼玉県。今も両親は埼玉にいるはずですが、連絡は取り合っていません。
高校卒業後、音楽短大で作曲を学びました。ピアノ教師として働きたい気持ちもありましたが、家を出なくてはいけない状況になりその道はあきらめ、収入につながりやすい介護の仕事を、資格を取って始めました。その仕事も体を壊して退職し、コールセンター、キャンディー工場、車の部品の工場、クレジットカードの勧誘、携帯電話ショップなど数多くの仕事を経験しています。

―今回の出馬以前に政治との関わりはあったんですか?

―高橋氏:投票には行っていましたが、直接誰かの応援をするようなことはしていませんでした。過去に匿名でブログを立ち上げて政治的な意見を表明したことが2度ほどあるのですが、嫌な絡まれ方をしてやめてしまいました。ブログでは職業差別に反対する意見や、氷河期世代はずっと辛い思いをしていることについて書いていました。

(選挙期間中の高橋氏。ボランティアも少なく、ほぼ1人で活動していた)

(選挙期間中の高橋氏。ボランティアも少なく、ほぼ1人で活動していた)



―金銭的にも苦しい中、今回は都知事選出馬にまで思い至って突き進んだ原動力は何だったのでしょうか?

―高橋氏:舛添さんが辞任した時に強い衝撃を直感的に受けて突き動かされました。その時は理由はよくわからなかったのですが、「都政は私たちの生活に奉仕するものとして、政争とは関わりなく存在するべきもの」なので、都知事という立場なら一気に変えてゆくことができると思ったからです。いろいろな問題が放置されてきているので、多くの人を救えるタイムリミットが迫ってるように感じました。

―「タイムリミットが近い」というのは?

―高橋氏:晩婚化が進む一方で、女性の高齢出産をバッシングするような風潮も高まり、男性も非正規雇用の割合が上がってますます少子化が進んでいます。自分より年上の氷河期世代から、自分より年下の世代に至るまでそういった不幸な状況にさらされていて、この状況を具体的に解決できるのは行政だと思いました。都政は多くの人を助けることができるし、日本全体に影響を与えることもできるでしょう?任期4年の都知事選をチャンスだと思ったんです。

(高橋氏の選挙ポスター)

(高橋氏の選挙ポスター)



 

 

選挙期間中にも悩み、今も悩み続けている


―都知事選期間中は、どんな活動をされていたのですか?

―高橋氏:期間中、自分が都知事だったら「都政のことを真剣に考えて立候補している他の候補者やその支援者を応援するのが筋だ」と思って、自分の宣伝ではなく、他の候補者の応援演説をしていました。小池候補や鳥越候補の応援に行きました。追い払われてしまうこともありましたが、支援者の方に「応援してるよ」と言ってもらえたことが印象に残っています。

―選挙結果としては下馬評通り、300万票たらずを集めた小池氏が当選でした。選挙結果を見てどう思いましたか?

―高橋氏:いろんな人から暖かい声をかけられますが、どうやってみんなを救えばいいのか、選挙期間中以上に悩みは深まったし、今もずっと苦しんでいます

―苦しんでいるというのは?

―高橋氏:主要3候補は金額に換算すると数億円分、メディアに露出しているんです。そんな不公正の中にいながら、自分たちでそれを正すことができない。そんな3人の中から選んでしまったことを(有権者には)振り返ってほしいと思っています。
小池氏も自民党の人だし、都民と連携して問題に取り組むというよりも、例えばオリンピックに出かけて、その間多くの問題があることをみんなに発信するわけでもなく、今までの都知事と変わりない振る舞いをしている。未来が変わっていない。そういう人を(都民が)選んでしまったことに絶望しています。選挙期間はいろんな情報を提示して問題を明確にするチャンスでした。それを過ぎてしまった今、どうやってみんなを救えばいいのか、未来を変えればいいのか、その難易度が跳ね上がってしまったように感じています。

―他にはどうでしたか?

―高橋氏:選挙が始まってから時間が経つにつれて感じたのは、絶望が深まっていくということです。ある日、掲示板にポスターを貼っていたところ、それを見ていたベビーカーを押していたお母さんが「絶望的だ」とつぶやいたんです。東京にいるとこれからの未来は絶望的に思わざるをえないということをお話ししてくださいました。
別のシングルマザーの方とも将来の見えなさを語ったし、選挙を始まる直前にあった演説を聞いてくれていた20代前半の男性は、「自分の周りの同世代はだんだん結婚してゆくが、みんな子供をもうけることができない」という。みんな将来に見通しが持てていないんです。その一方で、マスメディアが徹底して偏向報道をする。候補者の以外の情報が届かない。主要3候補と泡沫、という扱いをされているので、自分には奇異の視線が向けられてしまう。これによって、みんなのことを助けることができない、という焦りに繋がっていき、考えなければならないことがどんどん積み上がっていきました。

 

 

いろいろな言葉が使い尽くされ、奇抜な行動を取るしかない


―今後も政治活動は続けていく予定ですか?

―高橋氏:はい、その予定です。
選挙期間中はみんなが報道を見て、その中に取り込まれていって、いわば「小池劇場に巻き込まれた」と思うんです。
政党や政治家が、政局にだけ夢中になって、苦しんでいる人たちを無視してきたじゃないか、そしてメディアはそれを後押ししてきたじゃないか、ということをこれからも言っていきたいです。それは選挙と関係なく当然のことだと思うから訴えていきたいです。

―具体的にはどのような活動を考えているのですか?

メディアに「泡沫候補」扱いをされてしまった私が、どうすれば有権者に話しを聞いてもらえるか、それが難しいところです。
今回、都知事選挙に取り組むにあたって、いろいろな言葉が使い尽くされてしまっていたとても困りました。「都政を取り戻す」って言葉を鳥越さんも桜井さんも言っていたし、本質的に私が言っていたのも政争から都政を切り離して私たちの手に取り戻す、という意味では同じなんです。今までにそれぞれの候補が票を得るためにいろいろな言葉を使ってきたので、どの言葉を選んでもみんなハッとしない。

―そうなると、例えばマック赤坂さんのように奇抜な行動を、という発想になってしまいますよね。

―高橋氏:世代交代がなされるまで待っているわけにはいかないんです。偏向報道に怒る声は関西からも私の元に届きました。これからは東京というエリアにとどまることなく、いろんな地方を回って共感、知識の共有をして行きたいと思っています。連携・話し合いをしてゆくのがこれからしたいこと。東京は日本全体のおかげで発展しているのに、地方のことを考えないで選挙している。都民はそのことを反省しなくてはいけないと思います。
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宮原ジェフリー

宮原ジェフリー

選挙ウォッチャー、キュレーター(現代美術)。 1983年東京都出身。中学生時代から衆参の選挙の度に全選挙区の当落予想を続ける。ポスターデザイン、インディーズ候補、政見放送、選挙公報、街頭演説など選挙に関わること一切が関心領域。

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