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無名な中年候補が、今井絵理子にすら肉迫?!29万票を獲得した山田太郎氏、そのネット選挙ブレーンに裏話を聞いてきた



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29万票- これは実世界ではほとんど「無名」と言っていい参院選全国比例候補者・山田太郎氏が獲得した票数である。比例代表の野党候補の中で堂々1位の得票数であり、あの元国民的アイドル「SPEED」の今井絵理子氏が獲得した31万票に迫る数字。この前代未聞の得票戦略の核にあったのは、まさに「ネット選挙」だった。

「表現の自由」を旗印に、どの陣営よりもネットを深く使いこなした山田太郎陣営のブレーン・坂井崇俊氏に、その具体的なノウハウを伺うことができた。確実に大きなウエイトを占めつつある「ネット選挙」を知る上で、全候補者・全陣営スタッフ必読のインタビューである。(インタビュアー・文責:おときた駿)

 

ネットで「発信力を高める」という発想はNG?!


- 29万票という数字には、「ネットに明るい」と言われている議員や業界関係者すら驚きました。(おときた駿)

坂井)ここまで来ると、負けた気がしないんですよね(笑)。出口調査で15万票って予想が出たときもびっくりしましたが、開票日には確認する度に票が伸びていって、30万票近くまで膨れ上がった。新聞の出口調査が、ここまで大きく数字を外すのも極めて珍しいことだそうです。

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坂井崇俊氏 Twitter: @takato1204
京都大学卒業後、大手都市銀行に入行。
その後、4社のコンサルティング会社を経て独立。
2013年より山田太郎参議院議員の公設第一秘書として3年半活動。
2016年夏の参院選比例では、選挙対策責任者として、野党最多得票で、今井絵理子氏にほぼ並ぶ、29万票を得るも落選。
株式会社ニューカルチャーラボ取締役

- その原動力になったのが、まさにネットだと言われています。ですが、単純にHPやSNSのフォロワー数だけを見ると、突出しているわけではありませんよね。

坂井)選挙期間中、ホームページのアクセス数は激増してサーバーダウンしましたが、それでもトータルのページビューは28万程度で、得票数よりも少ないんです。Twitterのフォロワー数も、増えたとはいえ3万人台しかいません。ここから我々がわかったことは、ネットで「発信力」を高めるだけでは意味がないんだな、と。

- 通常、Facebookであればどれだけ「いいね」を獲得してシェアしてもらうか、Twitterであればフォロワーを増やしてRTしてもらえるか。つまり「発信力」を高めるのがセオリーですよね。

坂井)それでは限界があるし、ネットの世界では「情報の押し付け」は嫌われます。それに気づいた重要な転機は、今年の2月に「表現の自由を守る党」の党員を募集した時なんです。党員登録をしてもらった後、ボタンを押すと「私は○◯番目の党員になりました、あなたも申し込んでください!」という趣旨のツイートが立ち上がる機能をつけたところ、これが非常に大きな役割を果たしました。

どういうことかというと、例えば山田さんが「党員募集」というツイートをしてどれだけRTされたところ、他の人のタイムラインに流れる回数は1回なんですよね。ところが同じ内容でも、違う人がつぶやいたものが拡散されれば、同じ人のタイムラインに何度も何度もその情報が流れてくる可能性がある。つまり、10RTは一人のタイムラインに1回しか出てこないけれど、10人の人が同じ内容をつぶやけば何度も同じ投稿が表示されるんです。

ここで、周りの人が自発的に発信する仕組みを作り上げる重要性に気がつきました。山田太郎さんのフォロワーは3万人でも、自分たちの言葉で山田さんのことを応援してくれる人たちのそれぞれのフォロワー数を足していけば、数万にも数十万にもなるかもしれない。

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おときた駿 東京都議会議員(北区選出)
1983年生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンで7年間のビジネス経験を経て、現在東京都議会議員一期目。ネットを中心に積極的な情報発信を行い、地方議員トップブロガーとして活動中。
おときた駿公式ブログはこちら http://otokitashun.com/blog/

- …なるほど!それは目からうろこの発想です。通常は自分のつぶやきを「拡散してください!」と広げるのですが、そうではなくて、むしろ自分の言葉でつぶやいてもらうことがさらなる広がり・奥行きを生むということですね。

坂井)なので、宣伝してくれたことに対してお礼を言うことなどを意識しました。山田太郎さん本人にRTされたり、引用RTでお礼などをされるとされる側は嬉しい。それで、もっと山田太郎さんのことを応援したくなる、色々な宣伝をつぶやいてくれる。

こうしたファンの「精鋭部隊」を作り上げていくと、ネガキャンに対して山田太郎本人が言い返さなくても、そうした「精鋭部隊」が反論してくれたりします。さらにそれを周りの人たちが拡散してくれるので、ポジティブなイメージが自動的に上書きされていく、と。

最終的には数ヶ月で、自分の言葉でつぶやいてくれる人が2000人くらいできました。これくらいの人たちがつぶやいて、さらに相互にその人たちがRTすると響きあうので、タイムラインが関連の発言で埋まる事象が発生するようになりますよ(笑)。

 

Twitterの使い方を初級編・中級編・上級編に分けて講義


- もう少し具体的に戦術について伺っていく前に、山田太郎陣営のネット選挙の主力は明確に「Twitter」でした。公式HPは選挙前にリニューアルなどされなかったし、他の候補者が熱心なFacebookにもそれほど力を入れていたイメージはありません。

坂井)ホームページは、できればリニューアルしたいという思いはありましたが、ほとんどの人がプロフィールと基本政策しか見ないんですよね。なので、そこだけ最低限しっかりしてれば良いかということで、これはリソースの問題で放置しました。

Facebookについては、実はほとんどTwitterと同じな内容を同時に投稿しているんです。細かな運用の違いはありましたけど。でも、Twitterと比べるとぜんぜん拡散されない(苦笑)

これは我々がメインターゲットにしていた「表現の自由」に関心がある、いわゆる「ヲタク」と呼ばれるクラスタ(階層)は、匿名を好むということが大きいと思います。Facebookのような実名が基本のSNSでは、効果を発揮しないんですよ。

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- 確かに、山田さんの投稿を拡散しているTwitterアカウントは、アニメアイコンで匿名の方々ばかりですね(笑)。そしてFacebookは友人や支援者たちを固める「守り」には有効かもしれませんが、手の届かなかった多くの人にリーチしていくという「攻め」には向いてない気もしますね。

坂井)なので、Facebookはあくまで抑えで、とにかくTwitterにこだわりました。また一方で、自分の発信力を高めるのではなくて、みんなの力を使っていこうと。本当にみんな勘違いしているんですけど、ネットって究極的には「聞く」ことに最大の強みを発揮するツールなんですよね。

なのでとにかく私は「山田太郎」などのキーワードでエゴサーチして、いま山田太郎がどんな風に思われているか、足りない部分やもっと発信した方が良い点はどこか、そういうことを分析して活動や発信内容を軌道修正していきました。分析結果から、HPのコンテンツの順序や選挙中毎晩やっていた番組のコンテンツを変えるなどは茶飯事でした。

- さらにホームページ上では、支援者の方向けにTwitterの使い方の指南もされていましたよね?

坂井)TwitterのTL上に流れる、山田太郎に関する情報の「総量」を増やすことをもっとも意識しました。それには繰り返しになりますが、山田太郎さんのつぶやきをRTするだけでは「プラス1」にしかならないんですよね。とはいえそれが基本中の基本ですから、まずは「初級編」として重要なつぶやきのRTを推奨しました。

山田太郎をネットで応援(初級編)
http://taroyamada.jp/?p=9134

- ここまでは、他の候補者でTwitterをやる方であれば誰でも意識している部分ですよね。というか、それ以上のことができてないとも言いますが(苦笑)。

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編集部注)対談の際に坂井氏に拝見させていただいた、山田太郎氏のTwitter Analytics によると、選挙期間を挟む約1か月間のインプレッションは、26,724,033件と驚愕の数字でした。

坂井)そこで次に、山田太郎さんを応援するツイートを自分の言葉で投稿してもらうことを「中級編」として案内しました。

山田太郎をネットで応援(中級編)
http://taroyamada.jp/?p=9084

とはいえ、ゼロから自分の言葉でつぶやける人ばかりではありませんから、画像をクリックすると例文とともに、画像を添付してそのままつぶやける仕組みを用意しました。15種類ありますから、すべてつぶやいてくれれば相当な量の情報がTwitter上に流れることになります。

- 2月の党員募集で気がついた、拡散戦略ですね。これは2014年都知事選挙で家入陣営が行なっていた「Twitterウグイス嬢」を彷彿とさせますが、ここまで洗練されたものになってはいませんでした。そして驚きが、次の上級編ですね?

坂井)はい、これは「精鋭部隊」ではないとなかなか難しいと思いますけど(笑)。Twitter上で山田太郎さんの評判をエゴサーチで各自に探してもらい、それを拡散したり、あるいは誤った情報があれば訂正してもらいます。この精鋭部隊はおそらく100~200人程度だと思います。

山田太郎をネットで応援(上級編)
http://taroyamada.jp/?p=9177

さらにそれを、精鋭部隊同士、に拡散してもらう。これで山田太郎さんがつぶやかなくても、Twitter上に勝手に情報の総量が加速度的に増していくわけですね。

- エゴサーチをして情報を拾うなんて、ちょっとネットに詳しい議員ですらやりませんよね。それを支援者にまでやらせるという…

坂井)それが非常にもったいないと思っていて、ネットやTwitterは「みんなが何を考えているか知る」ツール、聞くツールでもあるんですよね。街頭演説の感想なんかをフィードバックもできますし、実際に演説現場にいない僕がTwitterを見て、「騒音のクレームがきてるから、マイクの音量ちょっと下げて!」なんて指示を出したこともありますよ(笑)。

支援者にしても、応援している議員がよく言われていれば嬉しくて拡散したくなるし、悪く言われていれば反論したくなる。そういう気持ちを一つにして、Twitter上で山田太郎の大応援団を増やしていきました。

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ネットからリアルへ、リアルからネットへ


- ここまでネットの特性を理解して、活用できている候補は山田太郎陣営だけだったと断言していいと思います。とはいえ、「リアル」での活動がその土台にあったことも見過ごせませんね。

坂井)やはり、コミケ会場で3年間、ずっと演説をやってきた実績は大きかったと思いますね。最初は「ヲタクにこびてる」「こんなところで政治の話をするな」という批判も非常に大きかったけど、継続していくうちに応援してくれる人が増えてきた。そうした「実績・実体」があったからこそ、ネットで爆発的な拡散につながったのだと思います。

また、毎週水曜日に1時間番組を3年間続けてきたことも大きかったと思います。1時間番組ですので政策についてきちんと裏をとりコンテンツとして積みあげてきたこと、そして何よりも有権者とのリアルタイムのコミュニケーションで政治家本人が鍛えられ、ネットの本質である双方向性についての重要性を理解することができたというところでしょうか。

- 逆に、これはできなかった、もっとやりたかったことなどはありますか?

坂井)2月に気がついた「周りの人が自発的に発信する仕組み」を、もっと早くから立ち上げておけば良かったなと。選挙戦では最終的に「上級編」まで展開できましたけど、これをもっと組織的にできる訓練をしておけば、結果はもっと良かったかもしれません。

- それはぜひ、私が次の自分の選挙で試してみたいと思います(笑)。今後、このネット選挙の結果を受けて、どのような活動をしていきますか?

坂井)29万票という民意を受けたら、引くに引けませんよね(笑)。表現の自由を守る活動はなんらかの形で続けていきますし、ネット選挙のノウハウについて問い合わせも非常に多い。この分野のパイオニアとして積極的にイベントなどには登壇していきたいと思いますし、このやり方が全国比例以外で通用するかどうかはわかりませんけど、もっともっと深化していく未来を見たいと思いますね。

- 期待しています!本日はありがとうございました!

以下、参院選ネット選挙関連記事も合わせてお読みください。

当選者の9割がホームページとFacebookを活用|第24回参議院選挙のネット選挙動向レポート(1)
スマホ化率はまだまだ低い!?候補者のホームページ事情|第24回参議院選挙のネット選挙動向レポート(2)

※本記事は「勝つ政治家.cm」の8月26日の記事の転載となります。オリジナル記事をご覧になりたい方はこちらからご確認ください。

 

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