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模擬選挙が「ごっこ遊び」になりかねない2つの理由<後半:文字情報も制限だらけ?>



原口和徳
原口和徳

Little boy voting on democratic parliamentary election.

18歳選挙権に向けた取り組みが一時的なブームとなるのではなく、若者の政治的な意思表明の機会となっていくために必要な事柄は何なのでしょうか。前記事に引き続き模擬選挙を事例に、具体的な課題を検討してみたいと思います。



選挙公報にも課題がある


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政見放送と同じように「選挙公報」は多数の有権者に活用されています。同調査では、メディアによる報道が調査対象になっていないため、選挙公報以外の文字情報も対象として、模擬選挙での使用状況を検討します。



そもそも、選挙公報がない選挙も多い


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選挙公報を模擬選挙で使用しようとした場合には、速報性や確実性、情報量の課題が生じます。特に、都道府県議会議員選挙では37都道府県でしか選挙公報が発行されていない(2013年9月時点)ことが明らかになっているように、選挙公報は少なくない数の自治体の選挙で発行されていない可能性があることを強調しておきたいと思います。



政党のマニフェストは配布NG 新聞では記事がないこともある


 総務省・文部科学省による『私たちが拓く日本の未来』において、各党の政策をまとめた冊子状の公約集(いわゆるマニフェスト)について、生徒が自ら用意した場合を除き、授業で配布することができないことが明記されました。


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これまで、同資料は公職選挙法上のグレーゾーンにありつつも、模擬選挙に臨場感や質的な深みを持たすために活用されてきましたが、使用上の制約が明確にされました。
新聞記事は、副教材としての使用が推奨されています。しかし、紙面には限りがあります。泡沫候補も含めたすべての政党・候補者の情報が平等の分量で扱われるとは限りません。地方自治体、特に基礎自治体の選挙では報じられる情報量自体が、かなり限られることもあります。



民間事業者の取組みは、普及度に課題あり


マニフェストスイッチなど、有権者の立場から見やすい政策を求める取組みは、模擬選挙の授業で利用した先生方や生徒たちからは好意的に受け止められることが多いのですが、まだまだ利用者が限られ、公平性が課題となります。今後の発展に期待です。

 

積み重なる「公平性の壁」


ここまでに見てきたように、様々な資料で「公平性」が課題となっています。「公平性」をめぐる象徴的な事例として、2015年6月に山口県の県立高校で行われた安全保障関連法案に対する模擬投票があります。同授業では、使用した資料(新聞記事)の政治的中立性への配慮が不十分であったとして、県議会議員の質問に対して教育長が県議会で謝罪しています。
他にも、選挙期間前に模擬選挙を計画したところ、「授業日から立候補者届出締め切りまでの間に急遽出馬を決める人が出た場合、模擬選挙が公平性に欠けていたことになる。立候補者が決まるまで模擬選挙をすべきではない」と諫められた事例もあります。
模擬選挙が、生徒たちの政治的教養を育み、現実の政治への向き合い方を考える取組みとなるためには、このような「公平性」をめぐる事例が積み重なり、現場の先生方をがんじがらめにすることがないように、環境を整えていくことが求められます。


模擬選挙1つをとってみても、様々な改善点が考えられます。それでは、模擬選挙以外の取組みではどうでしょうか。次回の記事では、諸外国の事例も参考に、主権者教育全体について今後考えうる改善点を検討してみたいと思います。


原口和徳

原口和徳 : 埼玉ローカル・マニフェスト推進ネットワーク事務局

1982年埼玉県熊谷市出身。中央大学大学院公共政策研究科修了。早稲田大学マニフェスト研究所 議会改革調査部会スタッフとして、全国の議会改革の動向調査などを経験したのち、現所属にて市民の立場からのマニフェストの活用、主権者教育などの活動を行っている。

Webサイト : http://blog.canpan.info/slm/

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