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【自民党が大炎上】18歳選挙PR、それでいいんですか?

2016/6/3

寒川倫

寒川倫

今、「国に届け」なる漫画が炎上している。
「国に届け」とは、自民党が作った18歳選挙権をPRする漫画と座談会からなる冊子だ。冒頭の漫画「軽いノリじゃダメですか?」は、政治に対して無知な少女・アスカが憧れの生徒会長・朝倉に近づきたい一心で政治に触れ、一緒に投票に行くという物語である。ネット上では「若者が馬鹿にされている」「女性蔑視だ」など、多くの批判が寄せられていた。私も実際に目を通してみたが、正直に言って「ひどい」と感じる内容だった。
今回は、この冊子が「どう」ひどいのか検証しながら、18歳選挙権PRとも見比べのあり方について考えていきたいと思う。

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(「国に届け」表紙)

女性蔑視と思える内容

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まずひっかかるのは、物語が「馬鹿な女子高生と賢い男子高校生」の対比になっている点である。
制作サイドはおそらくこの漫画を通して、行くきっかけが(世の中を変えたい、政治参加に義務感を感じているなどというような)本質的な理由でなかったとしても、選挙はあなたの投票を必要としている、ということを伝えたいのだろう。その方向性自体は、一つの考え方であって存在を否定することはできない。しかし、「馬鹿な女子高生と賢い男子高校生」を並べたことで、「無知な女性を男性が導く」という典型的なジェンダーバイアスのかかった構図が出現しているのである。「女に政治は分からないだろう」と言っているのと同義に受け取られてもおかしくはない。
政治とは、国民全員に責任がある分非常にデリケートな話題だ。政治の話題をするためにフィクションの世界を構築する場合、その舞台設定は最大限ポリティカルコネクトレスに配慮されねばなるまい。

若者軽視とも思える

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(「国に届け」P4)

4ページの上半分に、主人公のアスカが、憧れの朝倉くんに向かって「さんいんナントカって私も行けるんだっけ!?」と尋ね、「親にでも聞いてみろ バーカ」と返されるシーンがある。さすがに高校生を舐めすぎではないだろうか? そもそも18歳選挙権が施行された後の話なのだから、高校では選挙権に関する授業を必ず行うだろう。前に取材をした青森県の場合では、選挙管理委員会が高校へ出前授業を行うのだそうだ。それなのにアスカの認識は「さんいんナントカ」止まり。高校生の知性を馬鹿にした内容である。

「ゆるふわ選挙」式広報ってどうなんだ? 

こういった「選挙自体をゆるふわした存在だと伝えて若者を投票に行くよう仕向ける」という方向性は、果たして「正しい」のだろうか。
私個人としては、こうしたやり方はあまり好ましく思わない。
選挙を病院で例えるとしよう。明らかに病気なのに病院に行くのをいやがっている18歳の若者がいたとする。若者が病院に行きたがらない理由はいろいろだ。めんどうくさい、なんだか怖い、どの病院に行っていいかわからない、痛そうだから嫌だ、などが考えられよう。さて、どう説得すれば若者は病院に行くだろうか?

(1)「かっこいいお医者さんがいるから会いに行く感覚でいいんだよ」「君の好きな子が病院についてきてくれるって」「待合室にスマブラがあるよ」などと、病院は気軽にどんどん行ける場所なのだと宣伝したり、個別の問題に関する不安を打ち消す話をする。
(2)「今あなたの体にはこういう症状が出ていて、こういう病気の恐れがある。これを放置して悪化してしまった場合、あなたは長期の入院を迫られたり、最悪歩けなくなってしまうかもしれない」「あなたが病気を放置して悪化させ、学校や仕事を必要以上に休まなければならなくなるのは、結局あなたの損になる」と、病院へ行かないことのリスクや体調管理の必要性を説く。

この2通りがあった時、もし3歳児が相手だとすれば(1)を選んだほうが説得しやすいだろう。そう、(1)はあまりにも幼稚なのだ。説得の方法として一理あるとは思うが、本質的に「そういう問題じゃない」のである。
若者の政治離れの話で頻繁に取りざたされるのは、「自分が選挙に行ったところで何も変わらない」という政治に対する無力感が蔓延している、という話題だ。必要なのは「選挙には自分の未来を変えてしまう力がある」という自覚を高校生に持ってもらうことだろう。

18歳は子どもではなく、大人

18歳選挙権の施行は、決して「18歳の子供の意見も聞いてみよう」という意味で始まったのではなく、「18歳はもう大人だから、政治のことも考えられるよね」という意味で行われたものだ。18歳を子供扱いして選挙を子供も喜ぶものとして紹介するのではなく、18歳はもう大人なのだから、真剣に自分にとって良い選択肢を取るべく選挙に行かないといけないのだ、と当事者の若者に思わせるようPRを進めるべきである。政治に真剣に向き合うチャンスを潰してしまうことのないよう、広報はもっと真面目に丁寧に行われてほしい。そのためには、若者を馬鹿にしたような漫画などより、選挙の仕組みや行かないことで発生するリスク、有権者の責任について、分かりやすく解説する内容の冊子を作るべきだろう。18歳選挙権に関して、当事者にとってのハードルを下げることは必要だが、到達点である「投票」の地位を下げるのではなく、当事者にこそ自分の力で大人の階段を上ってもらいたいと思う。

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寒川倫

寒川倫

1995年生まれの大学3年生。イラク戦争の頃にデモに初参加し、現在も一人でデモに出ている。「正しい倫理子」名義でねとらぼなどで執筆中。

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