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なんと約14億円!塩漬けになった東京都・尖閣諸島寄付金の「今」を追う。

2016/4/4

山本洋一

山本洋一

なんと約14億円!塩漬けになった東京都・尖閣諸島寄付金の「今」を追う。

防衛省は3月、沖縄県の与那国島に初めて沿岸監視隊を配備しました。尖閣諸島など南西諸島の防衛態勢を強化するのが狙いです。尖閣といえば2012年、当時の石原慎太郎都知事が東京都による購入を計画して話題となりました。あの当時、購入資金として集めた10数億円の寄付はその後、どうなったのでしょうか。気になったので調べてみました。

 

尖閣諸島のこれまでの流れ

南西諸島の西端に位置する尖閣諸島は魚釣島など5つの島と、いくつかの岩などで形成されています。政府は明治以降、現地調査を繰り返し、中国(清国)を含むいずれの国家にも属していないことを確認。1895年、閣議決定で沖縄県に編入しました。

当時、福岡県出身の実業家である古賀辰四郎氏が尖閣諸島の開拓に意欲を示していたことから、政府は1896年、同氏に主要4島を無償で貸与。古賀氏はアホウドリの羽毛採取事業を始めました。

海洋政策研究所の資料によると、古賀氏の事業は鰹漁や鰹節の製造などに広がり、最盛期には99戸248人の日本人が住んでいたといいます。しかし、古賀氏が亡くなると次第に事業は衰退。政府は1932年、事業を継いだ古賀氏の息子に4島を払い下げましたが、1940年ころには再び無人島になりました。古賀家はその後、埼玉県に住む別の民間人に島の所有権を譲渡しています。

第二次世界大戦の敗戦で日本は台湾など一部の領地を放棄しましたが、尖閣諸島は日本に残りました。サンフランシスコ平和条約で日本が独立を回復した後も尖閣を含む南西諸島は米国の統治下に置かれましたが、1972年に沖縄とともに日本に返還されています。

 

東シナ海海底の埋蔵資源の可能性。動き出す中国

このような経緯から尖閣諸島が日本の領土であることは疑いのないところですが、1971年に突然、中国と台湾が尖閣の領有権を主張し始めました。理由は東シナ海の海底に、石油資源が埋蔵されている可能性が指摘されたから。それまで何も主張してこなかった中国と台湾は、声高に領有権を主張するようになったのです。

中国と台湾は次第に行動をエスカレートさせ、海洋調査船や漁船による領海侵犯を頻繁に起こすようになりました。2002年からは島の所有者から国が賃借して管理していましたが、2010年に中国の漁船と海上保安庁の巡視艇の衝突事件が勃発。タカ派で知られる石原都知事は実効支配を強めるため、東京都が買い取る計画を立てました。

購入資金として寄付を呼び掛けたところ、約10万件、総額14億円超の寄付が集まりました。このうち約8000万円は現地調査や啓発活動に使ったものの、直後に野田政権が国有化してしまったため、大半は宙に浮いてしまいました。

 

約14億円の寄付金はどうなったのか

寄付者からは返還を求める声もありましたが、東京都は10万人に返却するのは現実的ではないと判断。「尖閣諸島活用基金」を設立して寄付金を積み立て、「国による尖閣諸島の活用に関する取組のための資金とする」こととしました。

実際にこの基金はどう活用しているのか。東京都総務局総務部の企画経理課に問い合わせたところ、今までの支出額はゼロ。担当者によると「国から活用したいという申し出があり、それが実効支配の強化につながるのであれば都議会の議決を経て支出するが、今のところそうした申し出はない」とのこと。

一方の国は基金を活用する予定があるのでしょうか。内閣官房の領土主権対策企画調整室に問い合わせたところ「国は毎年独自に1億円程度の予算を確保している」との回答。今後、都に基金からの支出を依頼するかどうか聞くと、「予定はない」と断言されました。

 

塩漬け、先送り、放置。寄付金の用途はどうなるのか

つまり、国と東京都の「縦割り」によって、このお金は実質的に「塩漬け」となっているのです。このままでは今後も一切、使われることなく、忘れ去られてしまいます。善意のお金をどう活用するか。都はもう一度、考え直す必要があるかもしれません。

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山本洋一

山本洋一

元日本経済新聞記者 1978年名古屋市出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、日本経済新聞社に入社。政治部、経済部の記者として首相官邸や自民党、外務省、日銀、金融機関などを取材した。2012年に退職し、衆議院議員公設秘書を経て会社役員。地方議会ニュース解説委員なども務める。

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