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世論とかけ離れた派閥抗争のバランスゲームに愕然!!自民党漫画「大宰相」第6巻



寒川倫
寒川倫

チキンレース


スクリーンショット 2015-12-13 1.35.46前回からやや時間が空いてしまったが、「大宰相」レビューも第6回目になった。

読めば読むほど政治の現場が恐ろしくなっていくのだが、めげずに立ち向かっていこうと思う。

相変わらずページは隅から隅までおじさんだらけ、今回は今までの作中で唯一の潤いであった、議員の妻すら出てこないので、もはや私のテンションとさいとう・たかを先生のチキンレースであった。おっしゃいくぞ!

 

角栄去りし後……


前回のラストにて、田中角栄政権はついに退陣を余儀なくされた。問題はその後任である。自民党の新しい総裁について、誰にするか以前にそもそも公選にするか話し合いで決めるかという問題が立ちはだかってくる。同時に各派閥が擁立できそうな目ぼしい候補を求めて動き始めた。

この時、党内には田中が推す大平正芳一派と、同規模の福田派とがあり、どちらかを選んでしまえばもう一方は反主流派となって党の分裂を招く可能性もあったわけである。つまり自民党内のパワーバランスは非常にデリケートな状態で、順番を間違えればぐらっと崩れるジェンガのようなものだった。

そのジェンガに最終的に手を伸ばしたのが田中内閣で副総裁を務めていた椎名悦三郎である。総裁決めは話し合いで行われることになり、顧問らによる会議が続いたが、最後は椎名が党内では弱小派閥だった三木武夫を指名した。

……政権の安定って何だろうなあ、と思う。そりゃないと困るんだろうけど、それだけを至上とするほど価値のあるものなのだろうか?国をこうしたいという美しい理想があって、それがどんなに正しかったとしても、「党の分裂を防ぐ」とか「◯◯派だから」とかそういう問題とぶつかったら理想はきっと負けてしまう。中世日本の諍いの調停は「その場を丸く収める」ためにあったが、今でも真実とか善とかより今まであった形を保つことが優先される場面は無限にあって、なんか人間って本当に進化してんのかな、と思った。

ジェンガと倫理


三木政権発足後、椎名は人事や政策について意見を聞き入れない三木に失望し、田中・大平・福田らに声をかけて「三木おろし」工作を画策する。そんな中でついにロッキード事件が発覚。田中が逮捕されたことで彼の一派は混乱に陥り、三木は事件の真相解明を宣言した。世論は三木を支持するものの党内は三木おろしの風潮に流れ始め、三木ら主流派と反主流派の対立が深まっていく。

議員は国民の代弁者なのに、世論の支持と政局とが相反するのは、今更ながら不思議なところだ。まっすぐじゃない。

歴史劇画 大宰相 第六巻 三木おろし P.262-263

歴史劇画 大宰相 第六巻 三木おろし P.262-263



両議院総会の場で、反主流派は三木退陣による党の刷新を宣言するが、不信任案は党の分裂を恐れて出さずに終わる。しかし多くの議員がこの宣言に同意している事実は三木を退かせるかと思いきや、彼は大平と福田にこう言うのだ。

「感心できんよ…… 国民は、政権をめぐる派閥抗争としか…… 受けとめないのではないか……?」「1日も早く、臨時国会を開いて、財特法その他を成立させるべき時に…… 党一新を優先させるという感覚が、わからない!」

真っ当だ〜!

そう、私もその考え方には同意できるよ……と思うけれど政治がそんなに甘くないのは重々承知である。あの狭い議員世界で、二大派閥の長が協力してくれない答えを選ぶのは、ジェンガ的には「間違っている」。良い悪いより前に折衷案を探す、それがゲームじゃなくて何なんだろうか。政治って何なんだろう。

さらば三木


結局、内閣改造や臨時国会を挟みつつ、三木政権は昭和52年の総選挙で自民党の議席が減ったことの責任を取り、福田を総裁に指名して退陣した。彼は去り際に党改革のための提言を残していく。
「党内の、いわゆる”保守本流”といった意識は、”長老政治”と結びついて、党の動脈硬化をきたし、国民から遊離させている。この、党体質の改善なしに、再生はあり得ない。」
国民と政治の遊離! 三木が問題視していたことは今も改善されているとは言い難い。私は「大宰相」でしか三木を知らないけれど、この意見は深く頷けるし、なんなら今の自民党にも突きつけてやってほしいと思う。

これから18歳選挙権が始まる。若い国民が絶望する前に、どうか政治に希望を持てるよう、仕組みの側が少しずつ変わっていくことを切に望む。

今回の一言まとめ


折衷案を探し続けることを政治と呼ぶな。

 

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寒川倫

寒川倫

1995年生まれの大学3年生。イラク戦争の頃にデモに初参加し、現在も一人でデモに出ている。「正しい倫理子」名義でねとらぼなどで執筆中。

Twitter : https://twitter.com/rinsura_com

Webサイト : https://note.mu/rinriko

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