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本日が60歳の誕生日!還暦を迎えてなお衰えない、最強政党「自民党」の強さの秘密がわかる『メディアと自民党』

2015/11/15

松田馨

松田馨

 政治は国民のもの、即ちその使命と任務は、内に民生を安定せしめ、公共の福祉を増進し、外に自主独立の権威を回復し、平和の諸条件を調整確立するにある。われらは、この使命と任務に鑑み、ここに民主政治の本義に立脚して、自由民主党を結成し、広く国民大衆とともにその責務を全うせんことを誓う。

(中略)

われら立党の政治理念は、第一に、ひたすら議会民主政治の大道を歩むにある。従ってわれらは、暴力と破壊、革命と独裁を政治手段とするすべての勢力又は思想をあくまで排撃する。第二に、個人の自由と人格の尊厳を社会秩序の基本的条件となす。故に、権力による専制と階級主義に反対する。

1955年(昭和30年)11月15日に結党された立党宣言において、「政治は国民のもの」と高らかに宣言し誕生した自由民主党。今日は結党60年の節目となるわけですが、この60年間で、自民党が与党ではなく野党だった期間は4年ほどしかありません。2012年の政権復帰後は、安保法制で内閣支持率が下がった8月も高い政党支持率を維持し、NHKによる今月の政治意識月例調査でも支持率37.1%と、民主党の8.4%に大きく差をつけ、支持政党なしの36.3%を上回る非常に安定した支持を獲得しています。

危機感から誕生した自民党

そもそも自由民主党は、吉田茂氏が総裁を務めた自由党と、当時の首相であった鳩山一郎氏が総裁を務めた日本民主党との「保守合同」によって誕生しました。その背景には、結党前の10月に左右に分裂していた社会党が統一したことへの危機感がありました(詳しくは自民党公式webサイトの「党のあゆみ 保守合同前史」にまとめられています)。

81BKClcqF3L._SL1500_60年といえば、人間でいえば還暦という大きな節目にあたる年。新しい暦を歩み始める自民党のこれからを考える上でふさわしい書籍としてご紹介したいのが、角川新書『メディアと自民党』(西田亮介著)です。『ネット選挙解禁がもたらす日本社会の変容』の著作もある著者が、主に2000年台に入ってからの自民党のメディア戦略や政治とメディアの関係性の変化を分析し、最新最強を誇る現在の自民党の強さの秘密を明らかにしています。

本書はこれまでの政治とメディア、自民党や安倍政権に関する文献の集約はもちろん、著者の入念な取材によって、内容に臨場感をもたせています。著者は多くの政治関係者、メディア関係者、選挙運動の関係者、そして企業関係者らに対する取材を行い、自民党広報本部からも公式回答を引き出しています。また、自民党と契約関係にあった企業や選挙関係者からは、これまで明らかにされていなかった資料や知らなかったエピソードを入手しており、私自身も大変勉強になりました。

 そして改革は続く…党改革の歩みを止めない自民党

本書を読み進めるなかで、一番強く印象に残ったのは、特に2005年以降の自民党による党改革の歩みです。

当時の背景として、民主党が2003年の衆院選で177議席と躍進し、2004年の参院選でも50議席獲得という過去最多議席を獲得し、民主党に勢いがあった中で、「党改革実行本部」という総裁直属の組織が設立され、本部長には当時幹事長代理だった安倍晋三氏が就任。メディア戦略を中心にネット選挙への対応など数々の改革を実行してきた党改革実行本部は、現在も存在しています。

危機感から誕生した自民党は、政権を担当するなかで権力の持つ「社会を変える力」をどの政党よりも熟知しているが故に、権力を失うことへの危機感もまた強いのでしょう。そこから政権や支持率を維持する現実主義的な対応=改革が生まれているのだと思います。

上記したように、内閣支持率も政党支持率も安定しているなかで出された、立党60年にあたって幹事長談話のタイトルは「地域の声に耳を傾け 未来を見据えた大胆な改革を進める」と、ここでも「改革」の2文字が。

政策についても党についても、常に「改革」を忘れない自民党の姿勢は、まるで常勝を義務付けられた海南高校(元ネタ:スラムダンク)のようです。野党が再び政権交代を実現するためには、自民党を超える危機感と改革への姿勢、それこそ「断固たる決意」がなければ困難だろうと痛感しました。

「政治の伝え方への新たな試行錯誤」

選挙プランナーである私の視点から、特に自民党の強さを明らかにしている点について紹介しましたが、本書はメディアやジャーナリズムについても、安易な批判やあるべき論ではなく、テクノロジーの進化による変容から、オールドメディアとネットメディアについての考察など示唆に富む良書です。

本書のあとがきにて、「情と理」という言葉が登場します。名官房長官として名を馳せた故・後藤田正晴氏の回顧録のタイトルですが、西田氏はこれを「政治の本質をよく表現している」言葉として引用し、このような考察を添えています。

「情」が先行する現在の世の中において、いかに「理」の政治を取り戻すか。そして「理」の政治情報のプラットフォームとなるのは、マスメディアなのか、それともネットメディアなのか。いずれにせよ、政治の伝え方への新たな試行錯誤が求められている。

選挙ドットコムも、「政治の伝え方への新たな試行錯誤」を試みる一メディアです。有権者と政治家をつなぎ、少しでも選挙や政治を「面白い」と感じていただくこと、興味関心を持っていただくことを方針として掲げ、2015年7月より前サイト(ザ選挙)を引き継ぐ形で運営を続けて参りました。西田氏の指摘する数々の論点は、当サイトにとっても非常に示唆に満ちています。18歳選挙権の導入を前に政治のリテラシーをいかに育むのか、データ・ジャーナリズムの可能性を探るとともに、「理」の政治の奪還に挑戦し続けていかなければならない。本書を読んで、そうした決意を新たにしました。

 

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松田馨

松田馨

選挙プランナー。株式会社ダイアログ代表取締役。1980年生まれ。2006年以降、地方選挙から国政選挙まで100を超える選挙に携わる。新聞や週刊誌上において国政選挙(衆議院・参議院)の当落予想を担当するなど、選挙区分析には定評がある。ネット選挙運動の解禁や投票率向上の活動にも長年取り組んできた。著書に『残念な政治家を選ばない技術 「選挙リテラシー」入門』(光文社新書)

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