選挙ドットコム

白票は麻薬!?(小池みきの下から選挙入門⑦)

2015/8/22

小池みき

小池みき

senkyo_07

「白票は麻薬」。“選管の神様”こと小島勇人氏の口から飛び出した言葉である。選挙に無知な私にはなんのことやらさっぱりだが、一体どういう意味なのか。

小島氏「先ほどお話した最近執行されたある市の市議選での異議申し立ての件なんだけど、この選挙では実は、単なる票の数え間違えだけじゃなくて、選管による“白票操作”も発生していたんですよ」

「白票」とは文字通り、候補者名の名前の記載無しに投じられた票のことである。どの候補者にとっても得票とはならないが、有権者の「選ぶ相手がいない」という意思の表明でもあるため、無効票として集計には必ず入れられている。

小島氏「選管の事務局長含めた三人が、本来あった白票を8票少なく集計してたのね。その8票を加えると、投票者総数よりも、実際の票数の方が多くなっちゃうからという理由で」
小池「ぬ?? そんなことがあるんですか。おかしくないですか?」
小島氏「おかしい。多分、投票者総数や不在者投票数を数え間違えたとか、二重カウントしてしまったとか、何かミスがあったんでしょう。ともあれそれをごまかすために、候補者の得票には影響のない白票のうち8票を、“持ち帰り票”(投票所で提出されず、持ち帰られてしまった票)として集計したんですよ」

想像でしかないが、操作をした人たちは、「たった8票なら白票をちょっといじれば何の影響もなく終わるじゃん!」と思ってしまったのだろう。レジの集計が1円合わなかった時に、自分の財布から出した一円玉を入れて調整するような、そんな真理だ。誰も困らないんだからちょっとくらいいいじゃないかという……あ、これがつまり麻薬ということだろうか?

小島氏「そうです。使っちゃえばすごく便利、ってこと。だから僕はよく研修やなんかで『白票は麻薬だ』と教えるの。一度使ったらやめられない。一回それで場をしのいでしまうと、ちょっとやそっとのミスは白票で調整できるんだ、という意識につながってしまう。そこで感覚が麻痺すると、白票というのは“民意”ではなく、ただの便利なツールになってしまうわけ。そこは絶対に戒めなければいけないところです」

「白票を少し少なくカウントした」という言葉だけ聞くと、候補者の得票数には影響がないわけだしな、と一瞬思ってしまう。でも実際は、その白票だって、一人の人間のれっきとした“声”なのである。一票たりとも、無視することは許されないのだ。

小池「うーん、選管の人たちって、開票の時はさぞ緊張されるんでしょうね。想像するだけで胃が痛い」
小島氏「そりゃそうです。でも開票ってね、投票から始まってると思わなきゃいけないんですよ。開票の時だけきちんとしていたって、どこでミスがあったかわからないんだから。2013年7月の参院選の時も、四国のある市で大規模な“白票水増し”があって大問題(*)になったんですよ。この時は交付した投票用紙の数に対して実際の投票数が約300票足りないと勘違いして、その間違いをごまかすために、白票を含め大量の投票数操作をしたんです」

300票! そんな規模の事件もあったとは驚きだ。

小島氏「この時は、操作の結果ある有力候補者が0票ってことになってしまったんだけど、実際にその候補者に投票した人が『自分は入れたのにおかしい』と声を上げたんですね。それで地検が捜査して全部発覚して、結局関わった6名が逮捕されました。既に一人定年になっている人を除き5人が懲戒免職。全員執行猶予はついたけど有罪判決が出ています」
マツダ参謀長「懲戒免職っていったら、一番重い処罰ですよね」
小池「重罪なんだ……」
小島氏「そうです、重罪です。白票の操作は、『投票増減罪』というれっきとした犯罪なんですよ。でもこれらの事件で、“一票の重み”というものが改めて明らかになりました。投票におけるコンプライアンスの問題というのは、これからも大きな課題であり続けるでしょうね」

白票も含め、全ての票が国民の“民意”であるということ。その重みを1グラムたりともおろそかにせず、精密に扱い続けるのが選挙管理委員会の仕事なのだ。

小島氏「そもそも公職選挙法の投票増減罪の何が保護法益かと言うと、有権者の投票意志の尊重と、公正な選挙の担保なんです。投票数操作をした連中には、実は何の利益も発生しない。得なんかあるわけないでしょ。でもこういうトラブルが発生してしまうのが怖いところでね。全ての一票が国民の声。それを正確に数えてお届けするのが選挙管理委員会の使命であり、民主主義の根幹ですよね」

小島氏は穏やかな笑みで、しかしきっぱりとそう言いきるのだった。

(*)「公職選挙法違反:高松市選管白票水増し 選管ぐるみ票操作 6人起訴、「不足」と勘違い 昨夏参院選、検証担当者も関与」(2014年7月16日毎日)

 

≫小池みきの下から選挙入門 シリーズ一覧

 

この記事をシェアする

小池みき

小池みき

ラ イター・漫画家。1987年生まれ。郷土史本編集、金融会社勤めなどを経てフリー。書籍制作を中心に、文筆とマンガの両方で活動中。手がけた書籍に『百合 のリアル』(牧村朝子著)、『萌えを立体に!』(ミカタン著)など。著書としては、エッセイコミック『同居人の美少女がレズビアンだった件。』がある。名前の通りのラーメン好き。

選挙ドットコムの最新記事をお届けします

ホーム記事・コラム白票は麻薬!?(小池みきの下から選挙入門⑦)

icon_arrow_b_whiteicon_arrow_r_whiteicon_arrow_t_whiteicon_calender_grayicon_email_blueicon_fbicon_fb_whiteicon_googleicon_google_whiteicon_homeicon_homepageicon_lineicon_loginicon_login2icon_password_blueicon_posticon_rankingicon_searchicon_searchicon_searchicon_searchicon_staricon_twitter_whiteicon_youtube