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【コラム】若者の投票率を上げる方法は若者に聞いちゃえ



高橋 茂
高橋 茂

■民主党はMS-DOSで自民党はWindowsXP?


来年から18歳への選挙権年齢引き下げがスタートするが、200万人以上の新たな有権者が誕生することを期待する意見がある一方、「どうせ投票率は低いんだし、結果として全体の投票率が下がるだけさ」という冷めた意見もあり、実は私もそれは一理あると思っている。

しかし、全体の投票率が下がったとしても確実に有権者は増えるわけで、20歳前後の若者が投票結果に影響を及ぼすケースが出てくる可能性は高まる。可能性を潰しているのは、現在の選挙制度、公選法、そして選挙をつまらなくしている高年齢層の「大人たち」だ。

候補者の中には「若者にアピールするために」ホームページを作成したり、SNSをを始める人も多い。しかしほとんどの場合、効果はゼロとは言わないが、思ったほど若い世代にアピールできていない。そして多くの政治家はそれを実感しているのだ。

10年ほど前、ある民主党の国会議員と話をしたとき、私が「なぜ民主党は自民党よりもネット利用に積極的なイメージがあるのに、実際はダメなんでしょう?」と聞いたところ、その議員は「おそらく、民主党はMS-DOSを一番最初に使い出して、いまだにそれを後生大事に使っているんだよ。自民党は、やっとパソコンを使い出したけど、いきなりWindowsXPの最新版を使っているんだ」と説明してくれた。わかりやすい例え話だと思った。

OSで例えるのであれば、すでにそのときはMacOSもLinuxもあったわけだし、今はiOSやAndroidだってある。10年前はまだiPhoneが発売されていなかったが、今はスマホもタブレットもあるし、IoT(Internet of Things)というキーワードに表されるように、モノにもインターネットがどんどん入っている。今年はApple Watchが発売されて、スマートウォッチも一般的になりつつある。

そのような多様化されていく情報発信環境の中では、「若者にアピールするためにインターネットを使う」という10年前と変わらないセリフは虚しくさえ思える。今の時代にFAX専用機を買ってきて、「さあ、これでどんどん情報のやりとりが出来るぞ」と喜んでいるようなものだ。

では、いったい候補者はどんな方法で若者にアピールしたら良いのだろうか。

生まれた時から情報機器に囲まれている世代

生まれた時から情報機器に囲まれている世代


■コンサルが得意なのは現状分析からの戦略的活用法


おそらく政治コンサルに聞いても選挙コンサルに聞いても、若者向けの効果的な戦略指南は得られないだろう。なぜかというと、多くの政治・選挙コンサルは現状の分析はできても、次に来る情報発信方法を把握して、それが若者にどのようにアプローチできるかの十分な考察ができないと思われるからだ。これは別に政治・選挙コンサルがアレということではなく、ITの専門家であっても先のことや現在のIT機器がどのように広がっていくか、もしくは広がらないか正確に予測できる人はほとんどいないといって良い。

たとえば、40代後半の候補者がインターネットを使うばあい、同世代に対してはおそらく効果的な方法を使うことができるだろう。それは同年代と自分が同じようなネットの使い方をしているからだ。これが、20歳前後の有権者に向けて十分な情報発信ができるかというと、それは難しいのではないか。たとえ1年後の話であってもだ。テレビも新聞もほとんど見ず、雑誌もせいぜい中吊り広告程度。情報のほとんどをスマホから取り込んでいる若者に向けて、一体何を発信したら良いのか。

私は仕事柄、20代から70歳以上の政治家にインターネットの戦略的利用方法を教えることが多いが、自分と同年代(50代)の政治家の多くは、ホームページ更新がやっとで、SNSはおっかなびっくりといった人が多い。私が、かろうじて政治家の情報発信を業務として続けていられるのは、電子楽器のエンジニアとしての経験と、現在非常勤講師として大学で教えていることで、20歳前後の若者との接触があるからだと思う。学生にインターネットでの情報発信を教えなくてはならないのに、その学生たちよりもネットスキルやリテラシーが低いわけにはいかない。変に新しもの好きという性格もあるかもしれない。

大学の講師をしていて面白いのは、5年前は携帯メールを登録したメーリングリストがゼミの連絡網として機能していたが、その後プラットフォームはTwitterに移り、今はLINEのグループ機能となっていることだ。この5年間でもグループの情報共有ツールがめまぐるしく変わっている。

しかし、政治家の周りを見てみると、まだまだメーリングリストがスタッフ間で情報共有を行うメインツールであるという例が非常に多い。Facebookのグループ機能を使っている例は多々見かけるが、さすがにチャットワークを使っている例は1例しか知らない。

■高校生が普通に起業する時代


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iPhone用アプリ「ATHENA」



先日、高校生二人と会った。彼らはiPhone用の『ATHENA』というアプリを開発・公開している。それは項目別に表示される政策を見て、自分が支持する政策に投票する事ができるというiOS用アプリだ。無料で公開されているので、ぜひダウンロードして確認してみてほしい。

若干荒削りなのは否めないが、アプリをダウンロードしてまず思ったのは「カッコイイ」ということだ。デザインセンスが良い。更に584KBというサイズのコンパクトさ。十分今後の可能性を感じさせてくれる。

制作者の緑川涼君と山崎有喜君は現役の高校生。生まれた時からインターネットが普通に存在し、物心ついたときは個人が携帯電話を持つ時代になっていた。私が自己紹介で話す長野県知事選挙は彼が生まれた直後の話だ。

『ザ選挙』のデータ入力スタッフとして昨年の衆院選と今年の統一地方選挙を手伝ってくれた高校生のY君は、現在イギリス人の友人と会社を設立してアプリ開発を行っているという。まったく「最近の若い奴は・・・」である。

彼らを前にして私ができることは、彼らが進めるプロジェクトがくだらない公選法の制約にひっかからないようにアドバイスるするか、プロジェクトが成功するための側面支援として人を紹介したり相談相手になることぐらいだろう。

現在、いくつかの政党は若者に受け入れられるような政策を検討し、広告代理店に大金を払って若者にウケる企画を立てようとしている。それはそれで無駄なことだとは言わないが、若者の投票率を上げるためにはイノベーションが必要であり、それを作れるのはおそらく若者自身ではないかと思えるのだ。

現在、安保法案に関する国会前での抗議活動に若者が積極的に参加して話題となっているが、今までのデモ活動とは異なるスタイルに大人たちが引っ張られて更に盛り上がるような状況となっている。大人が企画し指導したものではこのようなスタイルにはならない。ファッションや流行のように、仕掛けに乗って消費されるだけのものも当然あるが、大人たちが主体となって若者を呼びこむのではなく、若者のスタイルを容認し、その場を設けるだけで良いのではないか。頼むぞ、わかもの。
とはいえ、枯れかけた「人生の先輩」としては「君たちはまだまだだな」と言いたいんだな。

 
高橋 茂

高橋 茂 : ネット選挙アナリスト

2000年、電子楽器のエンジニアから政治とインターネットの世界へ。政治家のネット活用をサポートするVoiceJapan社を経営する傍ら、講演、執筆も行う。武蔵大学非常勤講師。選挙ドットコム顧問

Twitter : https://twitter.com/vjtaka

Webサイト : http://blog.voicejapan.jp/

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