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日本の政治は漂流を始めた~統一地方選の解析



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竹内謙
2011年4月13日


都道府県と政令市を対象とする統一地方選前半戦が終わった。その夜、NHKテレビが伝える開票速報を見ながら、何とも情けない気分になった。いったいこの選挙は何だったのか。大震災後の針路を定めなければならないというのに、政党は有権者に選択肢を用意できなかった。国民に明日を語り掛ける言葉もなかった。日本はどこを目指すのか、皆目見当も付かない。2011年、日本の政治は漂流を始めた。

選挙結果を簡単にまとめてみよう(▼はデータ)。

  • (1)民主党は惨敗した。というより、候補者擁立が消極的で戦う前から負けていた。▼12知事選は3県で不戦敗、6県で自民と相乗り、自民と戦いになった3都道県(東京、北海道、三重)はすべて敗北した。▼政令市長選のうち自民と争った2市は1勝(札幌)1敗(広島)。▼41道府県議選は目標の半分以下の571人しか擁立できず、獲得議席数は前回(国政野党時代)の335をわずかに上回る346にとどまった。▼15政令市議選の獲得議席数は147で、選挙前の議席より20減、自民党(222)ばかりでなく公明党(157)をも下回った。

  • (2)自民党は一見圧勝したように見えるが、民主党の敵失による面が強く、党勢が回復したとはいえない。▼12知事選すべてに勝った。▼道府県議選は大阪府を除いて40道府県で第1党になったが、獲得議席数は1119で前回を21下回った。▼政令市議選の獲得議席数は222で、改選前議席を4下回った。

  • (3)公明党も不調。いつも余裕を持って確実に当選する人数しか立てないのに、全員当選に失敗した。▼道府県議選で前回を2下回る171議席、政令市議選では改選前を4減らす157議席。▼大阪府議選と横浜市議選でそれぞれ1人が落選した。地方選挙での落選は6年ぶり。

  • (4)共産党も敗北。▼道府県議選で前回を14下回る80議席、政令市議選で改選前を15減らす99議席。

  • (5)社民党も敗北。▼道府県議選で前回を14下回る30議席、政令市議選は7議席。

  • (6)初めての統一地方選挙となったみんなの党はそこそこ健闘した。▼道府県議選で41議席、政令市議選で40議席。

  • (7)橋下徹大阪府知事が代表を務める地域政党「大阪維新の会」は躍進した。▼大阪府議選(定数109)で改選前の29から57議席まで伸ばして過半数を制した。大阪市議選(定数86)では13から33議席、堺市議選(定数52)でも7から13議席とそれぞれ倍増、いずれも第1党となった。

  • (8)河村たかし名古屋市長の地域政党「減税日本」と大村秀章・愛知県知事の地域政党「日本一愛知の会」の健闘はいまひとつ。▼愛知県議選(定数103)で、減税日本が1から13議席、愛知の会が0から5議席と躍進したが、愛知の会が推薦した公明、自民などの公認候補27人を合わせても過半数には届かなかった。

  • (9)国民の関心は極めて低かった。▼12都道県知事選の投票率は5県で戦後最低を更新、平均投票率は52.77%で戦後下位から2番目。41道府県議選の投票率は34道府県で戦後最低を更新、平均投票率は48.15%で戦後最低。▼大震災の影響もあるが、知事選では民主党の候補者擁立放棄が大きい。道府県議選は有権者の「議会不信」の現れであろう。


選挙結果を一言で言えば、既成政党は軒並み振るわず、議席を伸ばしたのはみんなの党と大阪、愛知の地域政党だった。みんなの党が健闘したのは渡辺喜美代表の地元の栃木県議選と江田憲司幹事長、浅尾慶一郎政策調査会長の神奈川県議選、横浜市議選など地域が限定されており、かつて河野洋平氏が企てた新自由クラブや細川護煕氏の日本新党のような全国的な広がりはなかった。

いったい、この選挙の勝者は「誰?」だったのか。大阪、愛知の地域政党、栃木、神奈川のみんなの党が元気だったことはわかるとしても、「大阪維新の会」のほかは勝者とまでは言えまい。有権者はそっぽを向く、勝者はいない、こんなわけのわからない選挙をやっていていいのか、私が情けない気分になった1つは、そのことだ。

過去を問わない慎太郎節


その夜のテレビにもっとも颯爽と登場したのは4選を果たした石原慎太郎・東京都知事だった。防災服姿で、支持者の待つ選挙事務所に早々と現れ、得意の慎太郎節を炸裂させた。まずは、投票終了の午後8時になった瞬間に当選確実を報じるテレビに「開票も始まってないのに当選確実って、民主主義の選挙のあり方として好ましくないよ」と、ひと理屈捏ねながら挨拶を切り出した。

「4選して何をやるかと言ったら、同じ事をやるしかない。プラスアルファで災害対策だ。東京は日本のダイナモ。東京が止まれば日本も止まる。日本はこれから大変だ。『我欲』を抑えて、生活をつましくしないと日本はもたない。微力ですが私もがんばる。日本人全体がスクラムを組みながら肩を組んでやろう」

「日本の電力消費は世界的に見たら奇形だよ。パチンコと自動販売機で合わせて1千万KW近い量が使われている。ちょうど福島原発の発電量ぐらいだ。自動販売機は便利かもしれないが自分の家で冷やせばよい」

「(民主政権は)無知で未熟な連中が集まって、『政治家で、政治家で』と役人を使わない。この事態になぜ一番ノウハウ持っている事務次官会議をやらないのか。役人をいかに使うかが政治家の力量。こんな政府は前代未聞だ」

「福田バカ内閣のときに、バカ財務省が法人事業税の分割基準を変更して、東京の財布から4000億円かっぱらった。それを取り返して、東京をさらにしっかりしたい」

乱暴な言葉を織り交ぜながらの慎太郎節の全開だった。この場の言葉だけを素直に聞けばごもっともな話なのだが、この人の過去と照らし合わせると、些か辟易する。自らの欲望をほしいままに贅を尽くした人から「我欲を抑えて」「生活をつましく」と言われても、こちらの胸にはすとんと落ちない。選挙期間中にも「私は原発推進論者」と明言したが、かつての東京湾原発建設論はまだ生きているのか疑問も残る。

言葉を忘れた政治家


石原氏は1968年から参院議員1期、衆院議員8期、東京都知事4期と長い政治生活を続けきた。それを可能にしたカギは、作家との兼業にある。石原慎太郎研究のもっとも優れた著作であるノンフィクション作家佐野眞一氏の『てっぺん野郎-本人も知らなかった石原慎太郎』(講談社、2003年発行)から石原政治の本質を要約すれば、虚実をとりまぜて理想と現実を確信犯的に錯誤させて語る物書きと政治家の発言を綯い交ぜにしながら、人びとの耳目を集めることに優先的な重きをおいた彼独得のポピュリズム的政治手法が、毒舌や暴言というかたちで日本人の隠されたホンネをあぶりだしてきた。世間は彼の発言をあえて暴言、妄言と問題にせず、笑い飛ばして済ますことが、あたかも世の中をうまく渡っていくマナーのようなものだと考えている人が、異をとなえる人をはるかに凌駕しており、いつも最初の掛け声は勇ましいが、結果は尻すぼみに終わるパターンを繰り返してきた。

いま、日本中が心配し始めたことは「政治家がいない」という現実である。民主党にも自民党にも、この国難を背負える人物が見当たらない。それが最大の国難である。既成政党への不信に対し、石原慎太郎東京都知事、橋下徹大阪府知事、河村たかし名古屋市長といった首長が支持を集めるのは、中身の善し悪しは別にして、自分の言葉で自分の考えを語り掛けているせいだろう。裏返して言えば、中央の政治家は政治家の命たる言葉を失ってしまったといえる。石原氏のような作家政治も危うい。日本の明日をしっかりと語ることのできる本物の政治家がいない責任は有権者の側にもある。日本人全体がスクラムを組んで考えるべきは、そのことだと思う。
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